更新日: 2021.09.10 その他暮らし

みんな、買ったことがあるかもしれない宝くじ。その「期待値」って、いくら?

執筆者 : 上野慎一

みんな、買ったことがあるかもしれない宝くじ。その「期待値」って、いくら?
「宝くじ」を一度でも買った経験、18歳以上の4人に3人はあるといわれています(※1)。
 
年に5回発売される「ジャンボ宝くじ」だと1枚300円ですが、300円や3000円ならば当せんしたことのある方も珍しくないでしょう。
 
しかし、1000万円を超えるような高額当せんになると別です。当せんの経験もないし、周囲で当せんした人を聞いたことがない方が大半だと推測されます。
 
ではこうした宝くじ、「期待値」という視点ではどんなものなのでしょうか。
上野慎一

執筆者:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

宝くじの「期待値」とは

期待値とは、起こりえるすべてのパターンの確率を積み重ねていったトータルでの平均値のようなものです。
 
例えば、サイコロの目でいえば3.5になります。1・2・3・4・5・6が出る確率はそれぞれ6分の1なので、[1×1/6 + 2×1/6 + 3×1/6 + 4×1/6 + 5×1/6 + 6×1/6]という計算式の結果です。実際に3.5という目はありませんが、期待値はこうなるのです。
 
では、宝くじではどうなのか。今年7月13日から8月13日までに販売された「サマージャンボ宝くじ」を例にとって見てみましょう。その概要は、次のとおりです。

[価格]
1枚300円
 
[発売予定額]
690億円(23ユニット) 1ユニット=1000万枚
 
[当せん金・本数]
 1等           5億円      23本(1ユニット当たり 1本)
 1等の前後賞        1億円      46本(同  2本)
 1等の組違い賞       10万円    2277本(同  99本)
 2等         1000万円     46本(同  2本)
 3等          100万円     230本(同  10本)
 4等            5万円    2300本(同  100本)
 5等            1万円    23万本(同  1万本)
 6等           3000円    230万本(同 10万本)
 7等           300円    2300万本(同 100万本)

1ユニット(1000万枚)当たりで簡略に計算してみましょう。各当せん金に1ユニット当たりの当せん本数を掛け算した合計金額は、14億4490万円となります。発売枚数で割り算した金額は144.49円。
 
これが、この宝くじ1枚当たりの期待値です。発売価格300円の半分足らず、約48%でしかありません。
 
1ユニットの当せん金総額を、同発売総額30億円で割り算しても同じ数値ですし、23ユニット 全体でも同じ結果となります。つまり、[300円払っても、取り戻せる期待額は145円足らず]というギャンブルだともいえるのです。
 

払い戻されないおカネの使い道は

では、払い戻されない(300円当たりで)155円あまりはどうなっているのか。「宝くじ公式サイト」で宝くじの売上金額全体の配分が【図表1】のように図示されています(※2)。
 


 
個別の宝くじごとに、また全体額も年度によって、それぞれ変動はあるでしょうが、当せん金として還元される割合(払戻率)は、やはり半分足らずの水準なのです。
 
ちなみに、いわゆる「公営ギャンブル」の競馬・競輪・オートレース・ボートレースでは、払戻率は70から75%くらいといわれています。
 
これらを含めた5つで比べると、レース(抽せん)の場に出向くかどうか、投票券の買いやすさなどそれぞれ違いがありますが、一番身近で、手軽で、敷居も高くないイメージのある宝くじが、実は払戻率では頭抜けて低いのです。
 
これら「公営」の賭け事には、それぞれ根拠となる法律があります。宝くじの場合は「当せん金付証票法」ですが、同法第5条には、払戻金は発売総額の5割を超えてはならないと規定されています。
 
4つのレースにもそれぞれ根拠法があり、各払戻率のガイドラインも条文で具体的に定められています。5つともまさに「公営」で、払戻率も法律で管理されているわけなのです。
 
宝くじは“夢を買う”ものだとよくいわれます。もしも高額の当せん金を手にしたら「何に使おう」、「人生が変わるかも」などと夢は広がります。抽選結果を知った瞬間に現実へ戻るのでしょうが、それまでの間はいろいろ夢想や高揚感を楽しめるわけです。
 
期待値だけで見れば先述のように、300円払っても145円足らずしか取り戻せない。引き算すると、300円のうち155円あまりは“夢の対価”ということかもしれません。
 
この取り戻し(払い戻し)の対象にならないおカネですが、このうち運営経費や広報費を除いた収益金は、高齢化少子化対策、防災対策、公園整備、教育および社会福祉施設の建設改修などの公共事業に使われています。
 

まとめ

“夢を買う”ものだし、“夢の対価”の多くの部分が、それぞれの地元の役に立っている。そう考えて、発売金額と期待値の差を割り切るかどうか。そこは、人それぞれでしょう。
 
「公営」とはいえ、宝くじも一種のギャンブルです。のめり込んで買いすぎると、心身にもおサイフにも優しくありません。あくまでも自己責任で楽しみましょう。
 
出典
(※1)全国都道府県及び全指定都市「宝くじ公式サイト」~「宝くじ人口」
(※2)全国都道府県及び全指定都市「宝くじ公式サイト」~「収益金の使い道と社会貢献広報」
 
執筆者:上野慎一
AFP認定者,宅地建物取引士

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