更新日: 2023.01.04 子育て

男性育休は取得しやすくなるか! 「育児・介護休業法」の段階的施行について解説

執筆者 : 古田靖昭

男性育休は取得しやすくなるか! 「育児・介護休業法」の段階的施行について解説
男性の育休取得率が低水準であることから、政府は「育児・介護休業法」を改正し、2022年4月から段階的な施行を行っています。本記事では、男性育休の水準を高めるために改正された「育児・介護休業法」について解説します。
古田靖昭

執筆者:古田靖昭(ふるた やすあき)

二級ファイナンシャルプランニング技能士

育児・介護従業法の改正

2022年4月から施行された改正「育児・介護休業法」では、女性だけではなく男性も仕事と育児を両立できるように、子どもの出生直後の時期に育児休業を取得しやすい環境整備や、個別への周知などが企業において義務付けられることになりました。
 
2021年度の女性の育児休業取得率が85.1%に対して、男性が13.97%とかなり低い取得率です。また育児休業制度の利用を希望していたものの、実際には利用しなかった人が約4割います。育児休業制度を利用しなかった人の理由としては、「会社で制度が整備されていない」「社内の雰囲気として取得しづらい」「収入を減らしたくない」などが挙げられています。
 
以上のような背景から「育児・介護休業法」が改正され、政府目標として2025年までには男性の育児休業取得率を30%まで上げることを掲げています。
 
2022年10月からは、段階的な施行として男性の育児休暇取得について、育休制度の改正に加えて新制度である「産後パパ育休制度」の適用となりました。改正された育休制度とは別に産後パパ育休制度の取得も可能です。改正育休制度と産後パパ育休制度の内容は図表1のとおりです。
 
図表1

改正育休制度 産後パパ育休制度
対象期間・取得可能期間 原則子どもが1歳まで(最長2歳まで延長可能) 子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得が可能
申出期限 原則1ヶ月前まで 原則休業の2週間前まで
分割取得 分割して2回取得可能
(取得の際にそれぞれ申し出)
分割して2回取得可能
(最初にまとめて申し出が必要)
休業中の就業 原則就業不可 事前に調整した上で休業中に就業も可能(※1)
1歳以降の延長 育休開始日を柔軟化(※2) なし
1歳以降の再取得 特別な事情がある場合に限り再取得が可能(※3) なし

※1 労使協定を締結しており、雇用主と労働者が合意した範囲内
※2 1歳(1歳6ヶ月)時点に加えて配偶者が同様の育児休業を取得している場合、その配偶者の終了予定日の翌日以前の日を開始予定日で設定が可能
※3 1歳以降の育児休業が、他の子どもの産前産後休業や、産後パパ育休、介護休業、新たな育児休業の開始によって育児休業が終了した場合、産休などの対象だった子どもが死亡などしたときに育児休業の再取得が可能
厚生労働省 育児・介護休業法の改正について より筆者作成
 
産後パパ育休制度は、改正育休制度とは別の制度であり柔軟に取得できるようになりました。例えば会社において人手不足により、長期間育児休暇を取得できない場合があります。
 
しかし、最初にまとめて申し出ることで分割して2回まで取得できるようになりました。1回目は1週間の育児休暇を取得し、別の時期に2回目としてさらに1週間取得することも可能です。
 
また、休業中に就業することも労使協定を締結し、雇用主と労働者の合意があれば可能になりました。長期間、育児休暇を取りにくい会社でも、制度が柔軟になったことで取得できる可能性も高まるでしょう。
 

根深い「夫は仕事、妻は子育て」を変えられるか

日本では長らく「夫は仕事、妻は子育て」の意識があり、会社においても育児休暇の制度があって取得したいと思っても、上司や職場の雰囲気によって実際に取得できないこともあります。男性の育児休暇の取得率が低い現状を変えるため、また取りやすい環境にするために、「育児・介護休業法」が改正され段階的に施行されました。
 
しかし、上司や職場の雰囲気が変わらなければ、仮に育児休暇を取ったとしても、プロジェクトから左遷されたり転勤の辞令が下ったりするなどの不利益な取り扱いを受ける可能性もあるでしょう。
 
男性が育児休暇を取得しやすくなるためには、今回のように制度を変えることは大切です。しかし、日本の企業に蔓延する「夫は仕事、妻は子育て」の意識を変えていかなければ、制度があっても取得しない、取得できないという事態が起こる可能性があります。
 
その場合、男性の育児休暇取得の目標を達成することが難しくなるでしょう。そのため、社会全体の男性の育児参加に対する意識を変えていく必要があるのではないでしょうか。
 

出典

厚生労働省 育児・介護休業法の改正について
 
執筆者:古田靖昭
二級ファイナンシャルプランニング技能士

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