更新日: 2023.03.10 子育て

「養育費」は所得になる? もしかして贈与? 養育費と税金の関係について解説

執筆者 : 佐々木咲

「養育費」は所得になる? もしかして贈与? 養育費と税金の関係について解説
離婚に伴って支払われる養育費は、毎月一定額が振り込まれるのが一般的です。給与と同様に毎月の収入の一部となっていることから、「税金の対象になる? 」、「確定申告が必要? 」と戸惑う人もいるのではないでしょうか。
 
本記事では、養育費は課税の対象になるのか否かについて解説します。
佐々木咲

執筆者:佐々木咲(ささき さき)

2級FP技能士

養育費は原則として非課税

養育費は子どもの生活費、教育費、学費などの分担金として子どもと生活を共にしていない方の親から支払われるお金であり、扶養義務に基づいて設けられています。離婚したとはいえ、子どもの親であることには変わりなく、子どもが健やかに成長していくために必要なお金は両親が当然に負担すべきものだからです。
 
よって、養育費は所得には当たりますが、原則として非課税となっています。確定申告する必要もありません。
 

贈与税も非課税

人から人へ現金が動いていることから、「贈与になるのでは? 」と考える人もいるでしょう。結論からいうと、養育費は「夫婦や親子、兄弟姉妹などの扶養義務者から生活費や教育費に充てるために取得した財産で、通常必要と認められるもの」に該当するため、贈与税もかかりません。
 
ただし、「通常必要と認められるもの」を超える金額を支払った場合には、養育費は名目だけであり、実質は贈与であるとみなされて贈与税の課税対象になるため注意しましょう。例えば極端な話ですが、養育費として月10万円が妥当なところを月100万円受け取っている場合などが該当します。
 

養育費を支払う親は扶養控除が受けられる

養育費を払う側の親にも、税金に関するメリットがあります。所得税や住民税を軽減できる扶養控除には、「生計を一にしている」という要件がありますが、子どもと別居している親であっても養育費を支払っているのであれば適用を受けることができます。
 
ただし、子どもと同居している方の親と、扶養控除を二重に受けることはできない点に注意しましょう。子ども1人につき扶養控除の枠は1つです。養育費を支払っているからといって、同居親に無断で子どもを扶養に入れるような行為はくれぐれもしないようにしてください。
 

養育費は児童扶養手当では所得扱い

「税金がかからない=収入ではない」と安心しがちですが、養育費は児童扶養手当の算定においては関係してきます。
 
児童扶養手当とは、離婚などによるひとり親家庭に支給される手当です。支給額には所得制限が設けられており、図表1の限度額を超える家庭に対しては、手当の全額または一部が「支給停止」となる仕組みとなっています。
 
【図表1】児童扶養手当の所得制限


 
東京都福祉保健局 児童扶養手当
 
そして、図表1の所得金額には、養育費の8割相当額を含めなければなりません。例えば、母子3人家庭で、母の所得は200万円、養育費として年100万円受け取っている場合には、受給資格者本人の所得は280万円(200万円+100万円×80%)となり、全部支給の125万円はもちろんのこと、一部支給の268万円も超えているため児童扶養手当は全額支給停止となります。
 
また、母が働いておらず所得0円の場合であっても養育費が過大な場合には、全額支給停止もあり得ます。
 

まとめ

養育費は扶養義務によって支払われるものであり、原則とし て所得税や贈与税はかかりません。
 
ただし、児童扶養手当の算定に当たっては所得に含められます。養育費の金額によっては、働いていなくても児童扶養手当がもらえないケースも考えられるため注意しましょう。
 

出典

国税庁 No.2011 課税される所得と非課税所得
東京弁護士会 養育費
国税庁 No.4405 贈与税がかからない場合
国税庁 生計を一にするかどうかの判定(養育費の負担)
東京都福祉保健局 児童扶養手当
 
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士

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