更新日: 2023.03.14 その他暮らし

客「5年前のツケはもう時効だよね」は成立する?「残業代」「慰謝料」いろいろな時効について解説

客「5年前のツケはもう時効だよね」は成立する?「残業代」「慰謝料」いろいろな時効について解説
「そういえば、あのお客さんもう5年は来てないな。そろそろ“つけ”を払ってもらわないと……」などと考えている店のご主人、ちょっと待ってください!そのつけは「時効」を迎えている可能性があります。
 
本記事では身近にあるさまざまな「時効」について解説していきます。
FINANCIAL FIELD編集部

執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)

ファイナンシャルプランナー

FinancialField編集部は、金融、経済に関する記事を、日々の暮らしにどのような影響を与えるかという視点で、お金の知識がない方でも理解できるようわかりやすく発信しています。

編集部のメンバーは、ファイナンシャルプランナーの資格取得者を中心に「お金や暮らし」に関する書籍・雑誌の編集経験者で構成され、企画立案から記事掲載まですべての工程に関わることで、読者目線のコンテンツを追求しています。

FinancialFieldの特徴は、ファイナンシャルプランナー、弁護士、税理士、宅地建物取引士、相続診断士、住宅ローンアドバイザー、DCプランナー、公認会計士、社会保険労務士、行政書士、投資アナリスト、キャリアコンサルタントなど150名以上の有資格者を執筆者・監修者として迎え、むずかしく感じられる年金や税金、相続、保険、ローンなどの話をわかりやすく発信している点です。

このように編集経験豊富なメンバーと金融や経済に精通した執筆者・監修者による執筆体制を築くことで、内容のわかりやすさはもちろんのこと、読み応えのあるコンテンツと確かな情報発信を実現しています。

私たちは、快適でより良い生活のアイデアを提供するお金のコンシェルジュを目指します。

時効とは

時効(消滅時効)とは一定期間に使われない状態が続いた権利が消滅するという民法上の制度です。例えば、借金などの請求を行わないまま返済もされず定められた期間を過ぎた場合、その債権が消滅し、請求権を失ってしまいます。
 
ただし、時効は「時効の援用」をした時に初めて成立します。冒頭の例の場合、債権者側(店の主人)が「時効だから返済義務はない」と主張すると、時効の効果が発生するとされています。
 

飲食代、宿泊代の時効は5年

つけ払い飲酒代については、客が最後につけで飲んでから5年以上経過していたなら、時効が成立する可能性があります。ただし、もし5年の間に客が支払いの意思を見せたり、少額でもつけの一部を返していたりする場合は、「最後の接触」から時効までに5年の猶予ができます。
 
ホテルなどの宿泊代も飲食代と同様に5年で時効が成立します。料金が後払いの旅館や民泊では、客が料金を支払わずに帰ってしまった、というトラブルが発生しがちです。そのまま5年間を超えて放置してしまうと、支払い義務が消滅してしまうので、旅館や民泊などを運営している人は注意しましょう。
 

離婚慰謝料の時効は3年

離婚慰謝料は3年で時効が成立します。もしこちらに慰謝料請求権があっても、請求を行わないまま3年を超えてしまった場合は、完全に請求権が消滅してしまうので注意が必要です。
 
時効の存在を知っていたとしても「3年もあるから大丈夫」とのんきに構えていると、あっという間に時効がやってきます。離婚慰謝料にむけた証拠集めなどは早めに始めた方がいいでしょう。
 

保険金受け取りの時効は3年

けがや病気の際に支払われる保険金にも時効があります。複数の保険に入っている場合、うっかり請求し忘れている保険金があるかもしれません。そのまま3年以上経過すると請求権が消滅してしまいますので、病気や事故の際にはよく確認しましょう。
 
ただし、もし保険会社が保険金の時効を主張していなければ、3年を過ぎていても保険金を請求できるかもしれません。
 

未払い残業代の時効も3年

労働環境の改善が叫ばれている現代においても、残業代の未払いに悩んでいる人はまだまだ多いようです。中には退職前にまとめて請求しようと考えている人もいるでしょう。しかし、残業代にも時効があり、3年を超えるとさかのぼって請求できないので注意してください。
 
ただし、雇用側に違法行為があった場合は時効を過ぎた残業代についても請求できる可能性があります。意図的なタイムカードの改ざん、残業代の支払い拒否があったなど、心当たりがある場合は一度行政機関や弁護士に相談してみましょう。
 

交通違反の罰金にも時効がある

実は交通違反の罰金にも時効があります。時効の長さは刑罰の重さによって異なります。
 
例えば、スピード違反の刑罰は6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金ですので、刑事訴訟法第250条第6号により、時効が成立するまでの期間は3年となります。つまり、交通違反の切符を切られた日から3年を過ぎれば罰金を払う必要がなくなるということです。
 
もっとも、この時効に関しては警察側も当然承知していますので、時効が近づくと交通裁判所への呼び出しや、場合によっては自宅まで直接警告にくるケースもあるので、3年間も逃げ切ることは難しいでしょう。警告を無視して罰金を納めないことで逮捕される事例もあります。
 
交通違反が無実であることを法廷で争うのであれば別ですが、自分に過失がある場合は速やかに罰金を払い、円滑に済ませることをおすすめします。
 

交通事故の時効

交通事故による損害、慰謝料の時効は事故の被害や状況によって異なります。単独での物損事故の場合は3年、人身事故の場合は事故の翌日から5年で時効が成立します。言葉巧みに話し合いを引き延ばし、時効の成立を狙ってくる加害者もいるかもしれないので、損害賠償の請求は早めに行いましょう。
 
また、加害者不明の事故の場合は時効の成立まで20年です。その間に加害者が判明した場合は、その日の翌日から5年経過後に時効が成立します。
 

まとめ

身近にある金銭のやりとりには、たいてい時効が定められています。うっかり保険金や慰謝料の請求を忘れていて時効を援用されてしまわないように注意しましょう。つけや支払いの請求を忘れていた時も時効が成立する前に急いで請求することをおすすめします。
 
また、つけや賠償金などの時効が過ぎてしまったとしても、相手が時効を援用していなければまだ時効は成立していません。相手が忘れていただけなら支払ってくれる可能性もあるので、あきらめずにもう一度請求してみましょう。
 

出典

厚生労働省 事業主の皆さま、労働者の皆さま未払賃金が請求できる期間などが延長されています
e-Gov法令検索刑事訴訟法
e-Gov法令検索 保険法
e-Gov法令検索 労働基準法
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部