生活保護を受給する母から「エアコンが壊れた」と連絡が! エアコン代は「保護費」から出ないそうですが、代わりに払うべきでしょうか? 生活保護世帯の“エアコン事情”について解説
配信日: 2025.06.21

また、受給者の家族がエアコンの修理代を支払える場合は、代わりに支払うべきなのでしょうか。
本記事では、生活保護世帯のエアコン事情について解説していきます。

ファイナンシャルプランナー2級
生活保護の受給者に保障されている生活
生活保護を受けている世帯では、「最低限度の生活」を送ることができるよう、生活を営む上で生じる必要な費用の扶助がされます。
扶助の種類としては具体的に、食費や光熱費などの「生活扶助」、アパートの家賃の「住宅扶助」、学用品費となる「教育扶助」、医療を受けるための「医療扶助」、介護を受けるための「介護扶助」、出産時に必要な「出産扶助」、就労のための技術修得にかかる「生業扶助」、葬祭費用のための「葬祭扶助」があります。
ただし、これらの扶助は一律ではなく、受給者の資産や能力、家族構成によってどのくらい受けられるかが決まります。
生活保護で「エアコン」は買える?
厚生労働省によると、エアコンの購入に関して、基本的には生活保護費の範囲内で購入するというのが原則となっています。ただし、「特別な事情」があるときに限って、一時扶助(家具什器費)としてエアコン代が支給されることがあります。
・生活保護開始時にエアコンを持っていない
・災害でエアコンを失ったが、他の制度で補えない
・DVや犯罪被害などで避難・転居し、エアコンがない
・長期入院・入所後の退院・退所で居宅生活を始めるとき
・旧居にはエアコンが備え付けだったが、新居にはない場合
これらいずれかに該当し、さらに世帯の中に熱中症予防について特に配慮が必要と思われる子どもや高齢者、障害者などがいる場合に支給が認められることがあります。また、このエアコン購入費は6万7000円を上限として支払われ、設置費用も条件によっては別途支給されることがあります。
エアコンが壊れたらどうしたらいい?
原則として生活保護を受けている世帯のエアコン修理費は自費となります。これは、厚生労働省の通知で、エアコンの支給が認められるのは「生活保護開始時に持っていない」「災害等で失った」などの明確な理由がある場合の「新規購入」に限られているためです。
修理や買い替えは、基本的に「既に持っているものを維持する行為」であるため、生活保護制度の「一時扶助(家具什器費)」の対象にはならないというのが、厚生労働省の見解となっています。そのため、受給者本人が扶助費をやりくりして支払う、あるいは家族が支払うのが原則です。
基本的に生活保護には「扶養は保護に優先する」という原則があるため、扶養義務のある家族は、援助をする必要があります。しかし、扶養家族でも生活に余裕のない場合は必ずしもその限りではありません。今回のようなエアコンの修理費に関しても、もしも経済的に余裕がない場合は、本人の生活を圧迫してまで支払う必要はないのです。
また、扶助が受けられない場合でも、社会福祉協議会の貸付金を利用するという方法もあります。基本的に生活保護受給者は利用できない貸付ですが、生活必需品の購入に関しては利用が認められているので、この制度の利用を検討するのもいいでしょう。
ただし、「熱中症リスクが極めて高い」「世帯に高齢者・障害者・乳幼児などがいて命に関わる」といった事情があれば、自治体によっては特例的に支援を検討してくれることもあります。必ずしも扶助が受けられるとは限りませんが、まずは市役所やケースワーカーに相談してみましょう。
熱中症は危険! 命を守るために、制度の活用検討も
「エアコンの使用はぜいたくである」
このような考えを持つ人も多いかもしれませんが、昨今の夏の平均気温を鑑みると、エアコンの利用はもはや「ぜいたく」とは言い切れません。熱中症は、場合によっては命の危険もあるため、無理は禁物です。
すべての受給者が対象ではないものの、条件によってはエアコン購入のための扶助を受けることができたり、貸付制度を利用することもできます。まずは保護費の中から購入費や修理費を捻出したり、家族が援助をしたりすることが必要ですが、やむを得ない場合はこれらの制度を利用して、健康を守るようにしましょう。
出典
厚生労働省 生活保護制度
厚生労働省 2024年4月1日施行 生活保護実施要領等
東京都社会福祉協議会 生活福祉資金貸付制度 福祉資金のご案内
執筆者:渡辺あい
ファイナンシャルプランナー2級