しかし、社会経験が少ないために「こんな時どうすればいいんだろう」と疑問に思うことも色々ありますよね。
例えば、喫茶店でアルバイトとして働いている時に、お客さんの100万円の着物にコーヒーをこぼしてしまったら賠償の責任はあるのでしょうか。今回は、仕事でミスをした際の個人の賠償責任について調べてみました。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部(ふぁいなんしゃるふぃーるど へんしゅうぶ)
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弁護士
開成高校卒、東京大学法学部卒。弁護士登録後、大手渉外法律事務所、外資系法律事務所での勤務を経て独立。現在は弁護士16名を擁する東京桜橋法律事務所の所長として、多数の企業や個人の法務顧問として活動。どんな相談に対しても「わからない」とは言わないことをスタンスに、日々クライアントのために奮闘中。
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目次
アルバイト個人でも賠償の責任はあり!ただし100%ではない
結論から言うと、アルバイト個人にも賠償の責任は発生します。損害賠償は「過失行為をした人が賠償する」という大原則があります。ただし、過失の内容によって個人が賠償する責任は変わります。
この例のように、よく起こりえるケースの場合は、アルバイトの責任はせいぜい2割程度でしょう。残りの8割程度はお店や会社の責任となります。会社がお客さんに賠償したからといって、アルバイトに100%の賠償を請求するのは不当です。
ただし、アルバイトがお客さんの態度に腹を立てて嫌がらせでコーヒーをこぼしたというような場合は、100%アルバイト個人の責任になることもあります。なお、被害者であるお客さんはアルバイトにもお店にも請求することができます。あまりないとは思いますがアルバイトが全額を賠償した場合は、8割程度をお店に請求することが可能です。
飲み物をこぼしたのが100万円の着物であっても今はクリーニングの技術が進んでいるので、ほとんどの汚れを落とすことができます。ですので、実際に賠償する金額は、クリーニング代プラス若干の慰謝料くらいのそれほど大きくはない額であるようです。
会社がかばっても株主が黙っていない?
会社に勤める従業員がミスによって他人に損害を与えた場合はどうなるのでしょうか。その場合もカフェのケースと同じように、従業員個人にも賠償の責任があります。
ただし、こちらも従業員に故意や重過失がなければ、100%の責任まではありません。現実には会社が全額を負担する場合が多いです。
ひとつ注意しなければいけないのは、上場会社などで株主がモノをいう場合。会社が従業員をかばい全額負担したとしても、株主が、株主の利益を重視して「過失のある従業員に責任を取らせろ」と指摘するケースもあります。その場合は会社としても従業員に負担を求めざるをえないことになりそうです。
学生アルバイトの60.5%が労働条件上のトラブル
最近ではアルバイトがトラブルに巻き込まれる事例も少なくありません。特に学生のアルバイトは社会経験が無いことに付け込まれてしまうことも。アルバイト経験のある大学生、大学院生、短大生、専門学校生1000人にアンケートを採ったところ、対象者1000人が経験したアルバイト延べ1,961件の内、労働条件を示した書面を交付してもらっていないものが58.7%、そのうち働く前に口頭ですら具体的な説明がなかったものが全体の19.1%を占めました。
労働基準法第15条において、使用者は労働契約の締結の際に、労働者に対して賃金や労働時間、その他労働条件を書面で明示しなければいけないと定められています。
また、対象者1000人が経験したアルバイト延べ1,961件の内48.2%(人ベースでは60.5%)が何らかの労働条件上のトラブルがあったとしています。その内容として労働基準関係法令違反の恐れがあるものは「準備や片付けの時間に賃金が支払われなかった(13.6%)」、「1日に労働時間が6時間を超えても休憩時間がなかった(8.8%)」、「実際に働いた時間の管理がされていない(例えばタイムカードに打刻した後に働かされたなど)(7.6%)」などが挙げられます。
出典:厚生労働省 大学生等に対するアルバイトに関する意識等調査結果について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000103577.html
働く前に労働条件を確認。不当な扱いから身を守ろう
アルバイトで不当な扱いを受けないためには、「知識」を持つことが重要です。それが自分を守ることになります。今回のお客さんにコーヒーをこぼした例でも、会社がアルバイトに100%の責任を負わせることは不当とされています。これを知っていれば、もし会社から「全額支払え」と言われても「それはおかしい」と気づくことが出来るのです。
アルバイトをしている中でこれはおかしいんじゃないか?と疑問に思うことがあれば、周りの人に聞いてみたり、自分で調べてみたりしましょう。
そして、働く前に賃金や労働時間などの労働条件をしっかりと確認することが大事です。
著:ファイナンシャル フィールド 編集部
監修:東京桜橋法律事務所 豊田賢治 弁護士