最終更新日: 2020.02.28 公開日: 2020.02.27
老後

老人ホームにも倒産危機!そのリスクにどう対処するか

執筆者 : 黒木達也

せっかく探し当てて入居できた民間の「介護付有料老人ホーム」、しかしその経営が行き詰まり、倒産の危機に見舞われたら……。
 
実際にこうした危険は存在しています。そのような事態に陥らないためには、やはり入居前に経営状態などをよく調べておく必要があります。
 
黒木達也

執筆者:

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

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黒木達也

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執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

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増え始めた介護事業者の倒産

「老人ホームへ入居できたので一安心!」と考える人は多いと思いますが、近年、老人ホームなどを運営する介護事業者の倒産が増えてきました。
 
帝国データバンクの資料によれば、介護事業者の倒産件数は、2010年には20件に満たない数でしたが、2019年には90件を超えていることが確認できます。
 
実際に倒産したのは小規模の会社が多く、業態でも「訪問介護」と「通所介護(デイサービス)」という2つの分野の会社が、全体の7割以上を占めています。しかし居室入居を前提とした介護サービスを提供する、いわゆる「老人ホーム」運営会社の倒産も2割程度はあります。
 
訪問介護や通所介護を利用していた人が、その会社が倒産したとしても、他の事業者を見つけることで対応は可能です。しかし、多額の入居金を払い入居した老人ホームが倒産した場合は、入居金の返還手続きを始め、他施設への転所を考える必要があり、大きな困難に直面します。

介護業界をめぐる環境は厳しい

10年ほど前では、介護事業者の数も少なく、業界自体が極端な競争構造にはなっていませんでした。しかしここ数年は市場規模の拡大が見込まれることが顕著になり、異業種参入が進みました。
 
とくに介護業界には強大なシェアをもつ寡占企業もないため、多くの事業者が乱立し、中には介護事業に関して「まったくの素人」といえる会社も出てきました。
 
とくに訪問介護や通所介護は、高額の設備投資をするも必要がなく、事業への参入が比較的容易です。行政の認可基準もそれほど厳しくなかったため、新規参入の事業者を含め競争が激しくなり、介護サービスに対するノウハウの蓄積が乏しい力の弱い会社ほど、倒産の危機に追い込まれています。
 
もう1つ、最近問題となってきているのが「人材の確保」です。施設の建設など事業を進めるハード面の整備はできたとしても、介護に携わる優秀な人材の確保というソフト面の整備が非常に困難になっています。
 
日本全体として経済が好転すれば、あらゆる業種で人材が必要になります。介護を必要とする高齢者は増える一方ですが、介護の担い手となる若い労働力がかなり不足しています。
 
事業を継続する上で不可欠な介護スタッフの確保が、最近では難しくなっているのです。人手不足が深刻なため職員を確保できず、それが原因で倒産に追い込まれるケースも目立っています。

施設の経営力を見抜いてから入居

介護事業者が倒産する原因は、利用者を十分に集めることができない営業力不足と、介護スタッフを十分に確保できない人手不足が、大きな比重を占めています。
 
中には理事長等が別の事業に手を出し失敗する放漫経営が、倒産の引き金となるケースも見られます。また新規事業者の中には、介護事業をあくまで「ビジネス=儲けの手段」として考え行動するため、介護スタッフとの軋轢が生じ、それが元で経営が行き詰まることも多いようです。
 
こうした欠陥を抱える施設へ入居してしまうと後悔します。人によっては自宅を処分して、老人ホームへ入居するわけですから、そのホームが経営破綻することは本当に死活問題です。
 
その意味では入居施設が、支払った入居金の保全制度にきちんと加入しているかを確認する必要があります。老人ホームへの入居も、一時ほど入居希望者が殺到する事態はなくなりつつあり、「入居可」=即入居の対応をとらなくてもよくなっています。
 
比較的安く入居できる公営の老人ホームは、簡単に入居ができない施設もありますが、多くの場合、他の施設との比較・検討が可能です。家族・親戚などともよく相談をしてから入居しましょう。

経営の安定性が担保されているか

入居をする前に当該施設の「経営の安定性」などを見ておく必要があります。その指標となるのが「自己資本比率」と「職員定着率」です。
 
自己資本比率は経営体力を測る有力な指標で、上場企業の場合は公表されており、企業情報に関するデータを調査している帝国データバンクなど、調査会社の資料にあたるとわかります。
 
小規模事業者が多いため、この自己資本比率の数値は低い業界ですが、できればこれが10%以上の会社を選ぶことをお勧めします。総資本額が大きい会社ほど、自己資本比率も高くなる傾向にあるため、この数値が高いほど、資本に裏付けられた経営が行われていることが理解できます。
 
もう1つの視点が「職員定着率」です。業態を拡大する際に人材募集をするのは当然としても、通常時でも「スタッフ募集」の広告を何度も見かける、職員が充足しないために空室があるようだ、といった情報に注意を払うべきです。
 
そうでなくても、業界全体でも人手不足は深刻です。例えば経済雑誌などでもランキングと称して、個別施設ごとの職員充足率を公表していますので、こうした情報も参考になります。
 
さらに施設の見学や入居体験をすれば、職員が充足率だけでなく、入居者に対するサービスの方法や職員同士の連携などは、かなりわかるはずです。とくに人の管理に問題があり、労使紛争があるなども透けて見えることもあります。
 
施設見学と体験入居は、入居を検討している際には、必ず実施して確認しましょう。また、施設の責任者や施設を経営する理事長などの交代が、頻繁にあるケースも危険なサインです。
 
経営方針をめぐる内部での対立や、経営が悪化しその責任を取った、といった事情が推測できるからです。とくに1年の間に2度も3度も理事長の交代があるようでは、その施設への入居は避けたほうが賢明です。
 
執筆者:黒木達也
経済ジャーナリスト

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