更新日: 2023.05.15 その他老後

60代の5世帯に1世帯が「貯蓄ゼロ」! 年金の支給額も「実質マイナス」の今、老後の生活設計はどうすべき?

執筆者 : 川辺拓也

60代の5世帯に1世帯が「貯蓄ゼロ」! 年金の支給額も「実質マイナス」の今、老後の生活設計はどうすべき?
60歳は、老後生活のターニングポイントとされています。60歳を迎えても、変わらず仕事を続けていく人もいれば、退職して老後生活を始める人もいるでしょう。どちらにしても、老後を迎えるまでに安心して生活できるだけの貯蓄が必要になります。では、実際に60歳を迎えている人はいくら貯蓄しているのでしょうか。
 
本記事では、60代の貯蓄事情について解説します。
川辺拓也

執筆者:川辺拓也(かわべ たくや)

2級ファイナンシャルプランナー

60代の平均貯金額と金額別の割合

金融広報中央委員会の「家計の金融行動に関する世論調査」(令和4年)によると、60代の貯蓄額の平均は以下の通りです。
 

・単身世帯:1388万円
・二人以上世帯:1819万円

 
単身世帯と二人以上の世帯で約431万円の差がありました。金融資産の保有額にそれぞれ分けると、図表1に示した結果となります。
 
図表1


金融広報中央委員会 家計の金融行動に関する世論調査 [二人以上世帯調査][単身世帯調査](令和4年)より筆者作成
 
金融資産のない割合が、単身世帯で28.5%、二人以上の世帯でも20.8%となっています。単身世帯だと、およそ4世帯に1世帯が、二人以上の世帯でもおよそ5世帯に1世帯が貯蓄ゼロという結果になりました。
 
一方、金融資産が3000万円以上ある割合を見ると、単身世帯は16.9%、二人以上の世帯は20.3%となりました。貯蓄がない世帯に次いで多い項目となっており、60代は「貯蓄がない世帯」と「貯蓄がある世帯」に二極化しているといえます。
 

老後の生活設計で心得ておきたいポイント

貯蓄がない世帯もいる中で、老後の生活設計はどのようにするべきなのでしょうか。老後の生活設計で踏まえておきたいポイントについて解説します。押さえておきたいポイントは次の3つです。
 

理想的な貯蓄率を目指す

毎月の収入から、一定の割合を貯蓄に回しましょう。総務省統計局が発表した「家計調査(家計収支編)」によると、2022年の平均貯蓄率は勤労世帯で33.6%でした。平均的な指標ですが、手取りの約3割は貯蓄に回せるように収入と支出を管理しましょう。とはいえ、収入は一朝一夕で増えないので、まずは支出を減らせないか確認してください。
 

不要な支出を減らす

毎月の家計を振り返って、不要な支出がないかチェックしましょう。見直しできる余地がある項目は、一般的に以下の項目です。
 

・携帯代
・ネット通信代
・光熱費
・生命保険

 
また、利用していないジムなどの会員費や、クレジットカードの年会費等も見直して支出を減らせるか確認してください。
 

貯蓄分を資産運用に回す

貯蓄した分の一部は資産運用に回して、老後の生活を迎えるまで運用させておくのも1つの手段です。総務省統計局が発表した「2022年度の消費者物価指数」は、2021年度に比べて3.2%の上昇率となりました。
 
資産を運用せずに保有しているだけだと、実質の資産価値は目減りしてしまいます。そのため、物価上昇率を上回るくらいの資産運用が重要です。
 

年金頼みの老後生活にならない準備が大切

2023年4月から、国民年金の受給額は月額6万6250円と、原則2.2%の引き上げとなりました。しかし、先に述べた3.2%の物価上昇率を考えると、実質の年金額は目減りしているといえます。
 
貯蓄が全くないまま老後を迎えないように、計画的に準備をしましょう。また、長生きするにつれて、蓄えていた資産がなくなり年金のみで生活する「資産寿命ゼロ問題」もリスクとして存在しています。
 
多少の貯蓄があるからといって油断せず、理想の貯蓄率や支出の削減、資産運用といったポイントを踏まえて対策をしていきましょう。
 

出典

金融広報中央委員会 各種分類別データ(令和4年)家計の金融行動に関する世論調査[二人以上世帯調査](令和3年以降)
金融広報中央委員会 各種分類別データ(令和4年)家計の金融行動に関する世論調査[単身世帯調査](平成19年19以降)
総務省統計局 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯 詳細結果表 年次 2022年
 
執筆者:川辺拓也
2級ファイナンシャルプランナー