更新日: 2019.01.10 その他年金

年金未納は要注意!もしかしたら財産を差し押さえられる可能性も。

執筆者 : 橋本直樹

年金未納は要注意!もしかしたら財産を差し押さえられる可能性も。
2018年2月支給分の年金が受給者130万人以上に過少支給されていたことがテレビやネットニュースを通じて報道されました。

原因は申告書の様式や記入方法に変更があったためで過少支給による不足分は申告手続きが完了した人には4月分に上乗せして払われるようです。

このような報道を見聞きすると年金制度に対して不安を抱かれる人もいらっしゃるのではないでしょうか。なかには年金保険料は払わないという人もいらっしゃるかもしれません。

この記事では年金保険料を未納した場合の注意点について記載いたします。
橋本直樹

Text:橋本直樹(はしもとなおき)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、宅地建物取引士
橋本1級FP事務所 代表
総合保険代理店、証券会社勤務後、独立。独立後は保険や投資信託等の金融商品は取り扱わず、保険の見直しやライフプラン実現のための効率的ポートフォリオの提案等の相談業務のみのコンサルティングに特化。生活していくうえで付きまとうお金の問題をわかりやすく丁寧に説明するよう心がけています。

国民年金の納付状況

日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の人で厚生年金として給与から天引きされていない第1号被保険者である自営業やフリーランス、フリーターの人はご自身で保険料を納める必要があります。
 
年金未納問題でフォーカスされるのは主に第1号被保険者の人で、保険料を払い忘れてしまったり、経済的な事情で支払い困難であったり、将来支給される年金に不安がある等の理由で未納にしていたりとさまざまな理由で納付されていない実態があります。
 
平成8年度までは80%を超えていた国民年金保険料の納付率ですが平成28年度は65%でした。
 
経済的な事情や病気などで払えない場合でも免除や猶予等の手続きをせず未納にしておくと将来の年金額が減少しますし、各種の保障が受けられない事態にも陥りかねません。
 
また年金保険料の徴収も制度が強化されてきており財産が差し押さえられてしまう可能性も考えられます。
 

年金未納による財産差し押さえまでのフロー

年金を未納したからといってすぐに財産が差し押さえられることはありませんし、差し押さえの対象とならない人もいます。これから差し押さえまでのフローを記載していきます。
 
1.保険料を滞納すると、催告状が送られてきます。国は年金保険料の未納者に対する催告を民間に委託しているので保険料支払いの督促の電話もかかってくるかもしれません。
 
2.催告状の段階で何らかの手続きをとらないと最終催告状が送られてきます。これは自主的な納付を促す最後の告知となり書面には納期限と期日までに納めない場合は法的な処置をとると記載されています。この段階で未納分を納めれば延滞金は発生しません。
 
3.最終催告状を放置しておくと、次は督促状が送られてきます。督促状は催告状とは違い法的な通知となり、納期限の翌日から未納分を納めた日の前日までの日数に応じて延滞金も発生します。しかも年金の時効(2年)も中断しますので滞納状態が継続します。
 
4.督促状が送られてきて未納分の支払い等の手続きをしない場合、財産差し押さえの可能性がでてきます。まずは未納者に対して国は年金保険料を納める能力があるかの調査を行います。この調査は保険料未納の本人はもちろんのこと配偶者や世帯主にも及びます。
 
5.調査の結果、支払い能力ありと判断されれば差し押さえ予告が送られてきます。そして予告を無視していると現金や預金、自動車等が差し押さえられます。
 

財産差し押さえの対象となる人

強制徴収の対象になる人の範囲がここ数年で拡大しており平成30年度からは年間所得300万円以上ありながら保険料を7カ月以上未納している人となっています。
 
ちなみに平成25年度は年間所得400万円以上ありながら保険料を13カ月以上未納している人が対象でしたので、より多くの人から徴収できるよう変更されています。
 
ここで注意点ですが年間所得とは年収のことではなく、収入から自営業やフリーランスの人なら必要経費を差し引いた金額、アルバイト等で給与をもらっている人なら給与から給与所得控除を差し引いた金額です。
 
ですから平成30年度から強制徴収の対象とされる年間所得300万円とは年収に換算すると、おおよそ440万円ほどになります。
 

さいごに

この記事では年金を未納した場合の財産の差し押さえについて記載しましたが、10年程前に表面化した消えた年金問題などで年金制度に対して不信感をお持ちの人もいらっしゃるでしょう。
 
ただ、年金保険料の支払いは国民の義務であることや支払われる保険料によって賄われる世代間扶養の仕組み等も理解して年金制度について向き合っていく必要があるように思います。
 
何らかの事情で保険料の支払いが困難な場合は保険料の免除や猶予の制度がございますので、未納のままにはせず、できるだけ早期に役所や年金事務所に相談されるほうがいいと思います。
 
Text:橋本直樹(はしもとなおき)
1級ファイナンシャルプランニング技能士 宅地建物取引士
橋本1級FP事務所 代表

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