更新日: 2020.12.28 その他年金

自営業者等のための年金制度

執筆者 : 高橋庸夫

自営業者等のための年金制度
わが国の年金制度は2階建て構造となっています。1階部分は、20歳以上60歳未満の全ての人が加入する国民年金であり、2階部分は、会社員や公務員(会社員等)などが加入する厚生年金となっています。
 
第2号被保険者である会社員等については、一定の要件を満たすことで、老齢基礎年金の受給に加えて老齢厚生年金を受け取ることができます。

今回は、よく「老後の年金受給額が十分でない」といわれる自営業者等の第1号被保険者について、自らその受給額を上乗せできる方法について確認してみたいと思います。
 
高橋庸夫

執筆者:高橋庸夫(たかはし つねお)

ファイナンシャル・プランナー

住宅ローンアドバイザー ,宅地建物取引士, マンション管理士, 防災士
サラリーマン生活24年、その間10回以上の転勤を経験し、全国各所に居住。早期退職後は、新たな知識習得に貪欲に努めるとともに、自らが経験した「サラリーマンの退職、住宅ローン、子育て教育、資産運用」などの実体験をベースとして、個別相談、セミナー講師など精力的に活動。また、マンション管理士として管理組合運営や役員やマンション居住者への支援を実施。妻と長女と犬1匹。

第1号被保険者の年金受給額

第1号被保険者である自営業者やフリーター、無職の方々が、もし何も対策をしなければ、たとえ40年間(480ヶ月)国民年金保険料を全て納付したとしても、65歳以降の老齢基礎年金は満額の78万1700円(2020年度)の受給にとどまります。
 
第2号被保険者である会社員等については、前述のとおり、一定の要件を満たすことで老齢基礎年金に加えて、平均月収(給与および賞与)や勤続月数(被保険者期間)に比例して算出される老齢厚生年金を受給することができます。
 

iDeCoによる年金の上乗せ

第1号被保険者が年金を上乗せする代表的な方法としては、まず個人型確定拠出年金制度(iDeCo)が挙げられます。もちろん、第1号被保険者だけが利用できる制度ではなく、第2号被保険者、第3号被保険者(専業主婦など)も利用できますが、第1号被保険者には、最も高い掛け金の拠出限度額が認められています。
 
月額で6万8000円、年額で81万6000円まで掛け金を拠出することができ、支払った掛け金は全額所得控除(小規模企業共済等掛け金控除)の対象となり、所得税などの節税につながります。さらには、運用による利益が非課税であることや60歳以降に老齢給付を受給する際にも税制優遇があるなどのメリットがあります。
 

第1号被保険者を対象とした3つの上乗せ方法

そのほかにも、第1号被保険者を対象とした年金制度が3つあります。
 
1.付加年金
第1号被保険者のみが利用できる、国民年金に上乗せして受給するための年金制度です。
 
付加年金として月額400円を国民年金保険料に上乗せして納付することで、「付加年金の納付月数×200円」が老齢基礎年金に加算される仕組みです。単純に考えると、付加年金400円を1年間支払うと4800円となり、4800円を月200円ずつ加算して受給すると24ヶ月(2年)となりますので、「2年間受給すれば元がとれる」ことになります。
 
注意点としては、国民年金の納税猶予や免除を受けている期間は利用できないことや後述の国民年金基金とは両方加入できない点などがあります。
 
2.国民年金基金
第1号被保険者のみを対象とした基金制度です。
 
掛け金の上限は月額6万8000円ですが、前述のiDeCoの掛け金と合算して合計6万8000円が限度額となります。また、掛け金は全額所得控除(社会保険料控除)の対象となります。
 
2019年4月1日以降は、都道府県などの地域型基金や職能型基金が合併され、全国国民年金基金となったため、住所移転や職業変更の際の手続きが大幅に簡略化されています。
 
3.小規模企業共済
従業員数が20人以下(サービス業などは5人以下)など小規模企業の役員や個人事業主を対象とした退職金制度です。
 
掛け金は月額1000円から7万円まで選択することができます。そして、その掛け金の全額が所得控除(小規模企業共済等掛け金控除)の対象となります。
 

まとめ

一般的に、自営業者の将来的な年金受給額は、それだけで生活を維持するには不十分な額であるといわれています。今回ご紹介した第1号被保険者を対象とした年金制度は、年金の上乗せとともに、所得税などの節税にもつながる制度です。また、これらのほかにも、個人年金保険やつみたてNISAなど年金の上乗せ方法はいくつもあります。
 
1ついえることは、たとえ掛け金が少額であっても、可能な限り長期間にわたって掛け金を拠出することで一定の恩恵を受けることができるということです。もし、老後の年金に不安を感じたり、もう少し年金額を上乗せして受給したいと思われた方は、計画的に早めに取り組みを始められることをお勧めいたします。
 
執筆者:高橋庸夫
ファイナンシャル・プランナー
 

ライターさん募集