更新日: 2021.01.25 その他年金

年金の繰上げ受給は本当にデメリットが多い?

執筆者 : 廣重啓二郎

年金の繰上げ受給は本当にデメリットが多い?
「老後に年金を受け取る場合、いつから受け取るのがいいのだろう?」
 
このように悩む方は多いのではないでしょうか。原則は65歳から受給開始となりますが、60歳に繰り上げして受け取ることや70歳まで繰り下げして受け取ることもできます。今回は、公的年金を受け取る時期について解説したいと思います。
廣重啓二郎

執筆者:廣重啓二郎(ひろしげ けいじろう)

佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー

立命館大学卒業後、13年間大手小売業の販売業務に従事した後、保険会社に転職。1 年間保険会社に勤務後、保険代理店に6 年間勤務。
その後、コンサルティング料だけで活動している独立系ファイナンシャルプランナーと出会い「本当の意味で顧客本位の仕事ができ、大きな価値が提供できる仕事はこれだ」と思い、独立する。

現在は、日本FP協会佐賀支部の副支部長として、消費者向けのイベントや個別相談などで活動している。また、佐賀県金融広報アドバイザーとして消費者トラブルや金融教育など啓発活動にも従事している。

制度趣旨を理解しよう

公的年金は原則、65歳からの受給ですが、60歳〜64歳に繰り上げして受給できます。ただ、繰り上げを決めた場合、年金額は最大で30%減額されます。一方、66歳〜70歳まで繰り下げて受給することもできますが、その場合の年金額は最大42%加算されます。
 
仮に70歳から公的年金の受給を開始した場合、現行制度では5年で42%確実に増えます。つまり、1年あたり8.4%の利回りになります。これだけの利回りを確実に見込める金融商品は、他にはないでしょう。
 
繰り下げ受給は、このように高い利回りを得られる点で大きなメリットといえます。一方で繰り上げ受給は、年金が減額されるためデメリットといえますが、果たしてこうした損得勘定だけで考えていいのでしょうか。
 

損得勘定の是非

公的年金の受給時期に関して、損得勘定(いつから受け取るのが、お得なのか?)で議論されることがあります。しかし、この損得勘定はあまり意味がないと思います。なぜならば、自分が何歳まで生きるかは誰も分からないからです。
 
では、そもそも年金について、どのような考えが必要なのでしょうか。
 
答えは、「年金」=「保険」と考えてみることだと思います。保険は将来の不幸に備えて準備するものですので、年金も同様に考えるということです。
 
万が一、60歳の時点で生活資金が確保されていない場合は、60歳から年金を繰り上げ受給して生活を維持させることに活用できます。よって、年金は生活を維持させることができる「保険」の役割も担っているといえます。年金額は減額されますが、生活を維持させるためには繰り上げ受給の検討が必要なケースもあるのではないでしょうか。
 

ライフプランニングの必要性

皆さんは、老後いつまで、どのように働くか考えたことはありますか。「再雇用」「転職」「起業」もしくは「働かない」など、いくつかの選択肢があります。老後の働き方で年間の収支が変わってくるだけでなく、年金を受け取る時期についても影響を及ぼします。
 
老後のライフプランニングを作成するためには、老後の年間収支、貯蓄額などの計画を立てることが重要ですが、将来の収支を確実に計画に反映させることは不可能です。なぜならば社会情勢の変化など、遠い将来であればあるほど不確実性について考慮しなければいけないためです。
 
ただし計画を立てることで、直前になって慌てる必要なく対応できるのも確かです。複数パターンのシミュレーションを事前に立てておけば、ライフプランニングの精度がさらに高まっていくかもしれません。
 

まとめ

公的年金を受け取る時期(繰り上げ・繰り下げ)について損得勘定をする前に、公的年金を保険として考えてみましょう。保険のように万が一の場合の保障ととらえると、自分にとっていつから年金を受け取ることが妥当か判断できるはずです。
 
また、できるだけ早い段階で定年後の働き方などのライフプランニングを立てることをお勧めします。直前になって、慌てて公的年金の受給時期を考える必要がなくなります。その際は将来の不確実性に備えて、プランBもしくはプランCなど、複数パターンのシミュレーションをすることが大切です。ライフプランニングをすることで、老後に必要なお金について新しい発見があるかもしれません。
 
出典 日本年金機構 年金の繰上げ・繰下げ受給
 
執筆者:廣重啓二郎
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー
 

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