更新日: 2021.04.01 その他年金

もしも夫に先立たれたら…遺された妻と子に支払われるお金って?

執筆者 : 蟹山淳子

もしも夫に先立たれたら…遺された妻と子に支払われるお金って?
万が一夫に先立たれたら、悲しみもさることながら、これから子どもと一緒に暮らしていくのに必要なお金のことを考えなければなりません。遺された妻と子にはどのようなお金が支払われるのか解説します。
蟹山淳子

執筆者:蟹山淳子(かにやま・じゅんこ)

CFP(R)認定者

宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー
蟹山FPオフィス代表
大学卒業後、銀行勤務を経て専業主婦となり、二世帯住宅で夫の両親と同居、2人の子どもを育てる。1997年夫と死別、シングルマザーとなる。以後、自身の資産管理、義父の認知症介護、相続など、自分でプランを立てながら対応。2004年CFP取得。2011年慶應義塾大学経済学部(通信過程)卒業。2015年、日本FP協会「くらしとお金のFP相談室」相談員。2016年日本FP協会、広報センタースタッフ。子どもの受験は幼稚園から大学まですべて経験。3回の介護と3回の相続を経験。その他、宅地建物取引士、住宅ローンアドバイザー等の資格も保有。

夫がサラリーマンだったら

夫が会社員や公務員だった場合、勤務先から死亡退職金や弔慰金などが支払われます。死亡退職金は、一般に勤続年数や給与額などで金額が決められます。弔慰金は、個人の功労に報いるという意味が強く、業務上の原因で亡くなった場合は金額が多くなるようです。何を受け取れるか、どのくらいの金額かは勤務先によってまちまちです。割合としては多くないものの、遺族年金制度がある会社もあります。
 

遺族基礎年金

夫が国民年金、厚生年金の保険料を払っている期間に亡くなったとき、18歳未満の子を持つ妻に支給されるのが遺族基礎年金です。妊娠期間中に夫が死亡した場合でも、子どもが無事生まれれば、生まれたときから支給されます。ただし、850万円以上の年収がある場合は支給されません。また、再婚した場合も、それ以降は支給されなくなります。
 
支給期間は末子が18歳になった年の年度末(3月)まで。遺族基礎年金の基本額は収入や加入期間にかかわらず一定ですが、子の人数によって加算額が異なります。申請は年金事務所で行います。
 

 

遺族厚生年金

夫が厚生年金に加入していた場合は、遺族厚生年金も併せて支給されます。遺族厚生年金の額は、夫が厚生年金に加入していた期間の月数と、その期間に受け取った給与から計算される平均標準報酬額に応じて決まります。加入期間が25年未満の場合は25年とみなして計算されますが、それでも若いときに亡くなった場合は加入期間が短く、平均標準報酬額も低いため、定年後に亡くなった場合と比べて年金額が低くなってしまいます。
 
なお、子のいない30歳未満の妻は5年間の有期年金となりますが、子がいる場合には5年の期限はありません。遺族厚生年金は終身で受け取れます。また、子が高校を卒業して遺族基礎年金を受け取れなくなったときに妻が40歳以上なら、中高齢寡婦加算額として年58万5700円(令和3年度額)が64歳まで支給されます。
 

都道府県や市区町村から受けられる補助金

「児童扶養手当」は、ひとり親家庭を対象にした補助金ですが、所得制限が厳しいため、また遺族年金の金額が児童扶養手当額を上回っている場合は対象とならないため、実際に受け取れる可能性は低いかもしれません。
 
ただ、何かしらの事情で遺族年金が受け取れない、もしくは受け取れても金額が少なく収入も少ないという場合は、対象となるか市区町村の窓口に問い合わせてみましょう。所得制限は、子ども2人なら年間で125万円(一部支給は268万円)、手当額は全部支給が子ども1人の場合に月額4万3160円、2人の場合には5万3350円(令和3年度額)です。
 
自治体によっては、児童扶養手当以外にもひとり親家庭を対象とした補助金の制度を設けていることがあります。例えば、東京都には「児童育成手当」、愛知県には「愛知県遺児手当」があります。
 

ひとり親家庭医療費助成制度

「ひとり親家庭医療費助成制度」は病院や診療所で診察を受けたときに健康保険の自己負担分を助成してくれる制度(所得制限あり)です。補助金を受け取れるわけではありませんが、利用できれば医療費の支出が減るので助かります。
 
都道府県で自己負担額に差があります。例えば東京都では住民税非課税世帯は負担なし、住民税課税世帯は1割負担ですが、大阪府では1日につき500円までが自己負担です。親子とも、子どもが18歳になった年の年度末(3月)まで利用できます。申請は市区町村の窓口で行います。
 
夫が亡くなって、これまでより経済状態が厳しくなるなら、利用できる支援制度はできるだけ利用したいものです。遺族年金を除いて、ほとんどの補助金や支援制度はさかのぼって申請できません。ですから、早く制度を知って行動に移すことが大切です。まずは利用できる支援制度がないか、市区町村のホームページで調べてみましょう。
 
執筆者:蟹山淳子
CFP(R)認定者

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