更新日: 2021.07.09 その他年金

65歳未満に年金を繰り上げるとやっぱり損……? 年金の繰り上げをFPが解説

執筆者 : 杉浦詔子

65歳未満に年金を繰り上げるとやっぱり損……? 年金の繰り上げをFPが解説
令和4(2022)年4月より、公的年金の繰り上げ受給の減額率が変わります。年金の受給を繰り上げると結果的に受取総額が減ることになり、損をするといわれていますが、今回の改正内容を知り、公的年金の繰り上げ受給について再度考えてみましょう。
杉浦詔子

執筆者:杉浦詔子(すぎうらのりこ)

ファイナンシャルプランナー/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント

「働く人たちを応援するファイナンシャルプランナー/カウンセラー」として、働くことを考えている方からリタイアされた方を含めた働く人たちとその家族のためのファイナンシャルプランニングやカウンセリングを行っております。
 
2005年にCFP(R)資格を取得し、家計相談やセミナーなどのFP活動を開始しました。2012年に「みはまライフプランニング」を設立、2013年よりファイナンシャルカウンセラーとして活動しています。
 

年金の繰り上げ受給とは

老齢基礎年金、老齢厚生年金(以下、公的年金)は、原則として65歳から受け取りが開始となりますが、希望により60歳から65歳になるまでの間で受給開始時期を早めることができます。このように65歳になる前から公的年金を受け取ることを年金の繰り上げ受給といいます。
 
繰り上げ受給を行う場合、申請時点から65歳になるまでの月数に応じた減額率が定められているので、受給開始を早めれば早めるほど、毎月受け取れる金額が少なくなります。この減額率は公的年金を受け取っている間、一生変わりません。
 
なお、年金の受給開始を65歳以降とすることを繰り下げ受給といい、開始時期を遅らせるほど毎月受け取れる公的年金の額が大きくなります。
 

年金制度の機能強化のため、国民年金法等が一部改正

年金制度の機能強化のため、国民年金法等の一部を改正する法律が令和2年6月5日に公布されました。原則65歳である公的年金の受給開始時期は、現在、60歳から70歳の間で選択することができますが、令和4年(2022年)4月より、70歳である繰り下げ受給の上限年齢が75歳に引き上げられ、60歳から75歳の間で選択可能となります。
 
また、65歳より後に繰り下げ受給をした場合、1ヶ月当たり0.7%の増額率で受取額が増えることに変わりはありませんが、65歳より早く受け取りを開始する繰り上げ受給の場合、1ヶ月当たり0.5%の減額率から、1ヶ月当たり0.4%の減額率に変わります。
 
これにより、5年間(60ヶ月)繰り下げて60歳から年金の受け取りを開始すると、現行では最大30%の減額でしたが、令和4年4月以降は最大24%の減額となります。
 
例えば、65歳から年額約78万円(月額約6万5000円)を受け取れる人が、受給開始を5年間繰り上げると、現行の減額率30%では毎月受け取れる額は約4万5000円ですが、改正後は減額率24%となり約4万9000円となります。
 
60歳から65歳までの5年間の総額にすると、現行では約273万円、改正後は約296万円と約23万円増えますので、年金を繰り上げ受給したい人にとってはうれしい改正となるでしょう。
 

年金を繰り上げるとやっぱり損?

今回の改正で年金を繰り上げ受給した場合の減額率が緩和されますが、改正後も減額率は一生変わらないため、長生きをして受取期間が長くなると、受給できる総額が少なくなります。
 
例えば、65歳から年額約78万円の年金を受け取れる人は、65歳から80歳の16年間で約1248万円、85歳までの21年間で約1638万円となりますが、受給開始を5年間繰り上げて60歳から年額約59万円を受け取れる人は、80歳までの21年間で約1239万円、85歳までの26年間で約1534万円を受け取れる計算になります。
 
自分が何歳まで生きるか予測はできないため、損得で判断するより、いつから公的年金を受け取れば老後の生活がより豊かになるか考えた上で、繰り上げ受給について検討してみましょう。
 
出典
厚生労働省 年金制度改正法(令和2年法律第40号)が成立しました
 
執筆者:杉浦詔子
ファイナンシャルプランナー/産業カウンセラー/キャリアコンサルタント

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