更新日: 2021.07.12 その他年金

ADHDと診断。障害年金は受給できる?

執筆者 : 柘植輝

ADHDと診断。障害年金は受給できる?
近頃、ADHD(注意欠如・多動症)という障害が広く認知されはじめています。そこで、今回はADHDと診断されたとき、障害年金を受給できるのか検討していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

障害年金とは

障害年金とは、けがや病気によって生活や仕事が制限されている場合に受け取れる年金です。
 
けがや病気と認定された際に加入していた年金が国民年金であれば障害基礎年金を、厚生年金に加入していれば障害厚生年金が支給されます。
 
年金とはいうものの、障害年金は60歳未満であっても受け取ることができるようになっており、20歳前で国民年金にしていない期間に症状があると診断されていた場合でも、一定の障害の状態にあるときは障害基礎年金を受けられます。
 
障害年金は、視力や聴力などの外部障害、心疾患といった内部障害のほか、統合失調症をはじめとする精神障害も支給の対象になります。ちなみに障害基礎年金は1級と2級、障害厚生年金は1級、2級、3級といった障害等級があります。
 

ADHDは障害年金の受給対象となり得るのか

ADHDは障害年金の受給対象となり得ます。しかし、単にADHDと診断されただけでは障害年金の受給要件を満たしているとは判断されず、受給できない可能性もあります。
 
ADHDについては場面ごとに適切な社会行動ができないことや、コミュニケーション能力の欠如により対人関係を円滑に進めたり、意思疎通が行えないため日常生活が著しく制限されることなどに着目し、医師の診察も加味した上で判断されるからです。
 
障害等級と判定基準(障害の状態)の振り分けとしては下記のようなものになります。

障害の等級 障害の状態
1級 社会性やコミュニケーション能力が欠如しており、かつ著しく不適応な行動が見られるため、日常生活への適応が困難で常時援助を必要とする状態
2級 社会性やコミュニケーション能力が乏しく、かつ不適応な行動が見られるため、日常生活への適応に当たって援助が必要な状態
3級 社会性やコミュニケーション能力が不十分で、かつ社会行動に問題が見られるため、労働が著しい制限を受けるもの

※日本年金機構 「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」(第1章 障害等級認定基準 第8節/精神の障害)より筆者作成
 

就労できていてもADHDを理由に障害年金を受け取れることもある

仮に就労できていたとしても、それだけを理由に直ちに障害年金を受け取れないわけではありません。受給資格については、仕事の内容や周囲との意思疎通の状況、配慮がなされているのであればその内容なども考慮して判断されます。
 
そのため現在、就労している方であってもADHDを理由に障害年金を受け取れる可能性は十分にあります。
 

障害者手帳と障害年金の等級はイコールではない

よく、「障害者手帳の等級が3級だから、障害年金も3級ですか?」といったような質問をされます。この点について、障害者手帳の等級と障害年金の等級はイコールではなく、基本的には連動していません。
 
障害者手帳を取得したから障害年金を受けられると確定するわけではありませんし、障害年金を受け取ったから障害者手帳を取得しなければならないというわけでもありません。
 
両者は独立した制度です。両方を申請しても認められるのは片方だけ、ということもあれば、あえて片方しか申請しないという方もいらっしゃいます。
 

障害年金の相談はどこにすればいい?

自分は障害年金を受給できるのかなど、障害年金についての相談は、加入している年金の区分に応じて次の窓口へ相談ください。


(1)国民年金に加入している方:住所地の市区町村役場または年金事務所、街角の年金相談センター
(2)厚生年金に加入している方:年金事務所、街角の年金相談センター

 

ADHDでも障害年金を受け取れることもあるので、まずは相談を

ADHDであっても、その症状が障害年金の判断基準に沿うものであれば、障害年金を受給することができます。また、状況次第では就労している方でも対象となる場合があります。
 
もし、ADHDで障害年金を受給できないかと考えている方は、前述した関連窓口に相談してみてください。
 
出典
日本年金機構 国民年金・厚生年金保険 障害認定基準(第1章 障害等級認定基準 第8節/精神の障害)
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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