更新日: 2021.07.13 その他年金

公的年金の繰り上げ、最大で何歳から受給できる? 受給額は?

執筆者 : 廣重啓二郎

公的年金の繰り上げ、最大で何歳から受給できる? 受給額は?
みなさんは公的年金を何歳から受け取りますか?
 
公的年金は原則、65歳から受け取れることになっていますが、60歳から70歳までの間で受給の開始時期を変更することができます。今回は、繰り上げ受給した場合の減額率の変更と注意点について解説します。
廣重啓二郎

執筆者:廣重啓二郎(ひろしげ けいじろう)

佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー

立命館大学卒業後、13年間大手小売業の販売業務に従事した後、保険会社に転職。1 年間保険会社に勤務後、保険代理店に6 年間勤務。
その後、コンサルティング料だけで活動している独立系ファイナンシャルプランナーと出会い「本当の意味で顧客本位の仕事ができ、大きな価値が提供できる仕事はこれだ」と思い、独立する。

現在は、日本FP協会佐賀支部の副支部長として、消費者向けのイベントや個別相談などで活動している。また、佐賀県金融広報アドバイザーとして消費者トラブルや金融教育など啓発活動にも従事している。

繰り上げ受給の減額率の改正について

公的年金を繰り上げして受給開始した場合、本来受け取ることができる年金額は減額されます。現行の制度では、1月繰り上げると0.5%の減額となりますが、この減額率が2022年4月分より0.5%から0.4%へ変更されることになっています。
 
つまり、繰り上げを検討している方にとっては、若干ですがメリットが増えるといえるでしょう。
 

繰り上げ受給の注意点

2022年4月以降、公的年金を60歳から繰り上げ受給すると、減額率は24%(0.4%×60月)になります。繰り上げ受給を選択した場合、一生涯減額された年金額を受給することになり、途中で変更はできません。
また、繰り上げ受給に関しては減額率だけでなく、以下の点にも注意が必要です。
 

(1)国民年金の任意加入ができなくなる。

通常、60歳時点で国民年金の保険料を納めた期間が40年に満たない場合、60歳を過ぎても保険料を追納することができます(任意加入)。しかし、公的年金の繰り上げ受給を申請すると、それ以降は任意加入できなくなります。
 

(2)原則、老齢基礎年金と老齢厚生年金は同時に繰り上げが必要

公的年金の繰り上げ受給は、繰り下げ受給と異なり、老齢基礎年金と老齢厚生年金を同時に繰り上げる必要があります(特別支給の老齢厚生年金が受給できる方は例外規定あり)。
 

(3)障害基礎年金の受給ができなくなる

60歳から65歳までに障害年金が受給できるようになった場合でも、公的年金を繰り上げ受給している場合は障害年金を受け取ることはできません。
 

(4)繰り上げ受給した老齢年金と遺族年金は、65歳まで一緒にもらえない

65歳前に遺族年金を受給できるようになった場合、老齢年金と遺族年金のどちらかを選択しなければなりません。通常、額が大きい遺族年金を選ぶと、65歳まで老齢年金は支給停止となります。その後、65歳から受け取る老齢年金は繰り上げで減額された金額になります。
 

(5)寡婦年金がもらえなくなる

寡婦年金とは、国民年金の第1号被保険者(自営業者など)独自の給付制度で、夫が死亡したときに妻に支給されます。以下、全ての条件を満たす妻に寡婦年金が支給されます。
 

●国民年金の保険料納付期間(免除期間含む)が10年以上ある夫が死亡
●夫の死亡当時、夫によって生計を維持されていた
●夫との婚姻関係(事実婚含む)が継続して10年以上あった
●夫が障害基礎年金や老齢基礎年金を受けたことがない
●65歳未満

 

繰り上げするかどうか迷ったら

公的年金は、老後の生活を支える大きな役割があるといっても過言ではないでしょう。何といっても、一生涯受け取ることができる制度です。いつから受給するか、しっかりと前もって判断することをお勧めします。
 
もし、繰り上げ受給するかどうか迷ったら以下の点を確認しましょう。
 

●いつまで仕事を続けるか? 65歳? 70歳?
●60歳からの収入(世帯収入)はどのくらい見込めるか?
●60歳からの基本生活費は、現在と比較してどのくらい減らせるか?
●60歳からの資産残高はどのように推移するか?
●60歳からの大きな支出(家のリフォームや車の買い替えなど)は、いつ、どのくらいか?
●病気や介護などの費用は準備できているか?

 
60歳から65歳までの間で、どうしても年金の受け取りが必要になった場合は、申請することで繰り上げ受給することができます。ただし、公的年金の繰り上げ受給を開始した場合、後で変更はできません。
 
公的年金をいつから受給したらいいかについては、損得勘定ではなく、年金は必要になったときの保障の役割と捉えると答えが見つかるかもしれません。
 
出典
日本年金機構 老齢基礎年金の繰上げ受給
 
執筆者:廣重啓二郎
佐賀FPオフィス 代表、ファイナンシャルプランナー、一般社団法人日本相続支援士会理事、佐賀県金融広報アドバイザー、DCアドバイザー

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