更新日: 2021.07.30 国民年金

学生のときに免除されていた年金保険料。追納しないと年金額はどれくらい少なくなる?

執筆者 : 柘植輝

学生のときに免除されていた年金保険料。追納しないと年金額はどれくらい少なくなる?
社会人となって働き始め、将来を考えるようになったとき、頭をよぎることの1つが老後の年金についてでしょう。
 
学生時代、「学生納付特例制度」によって年金保険料の支払いを猶予されていた方は、特に気になっているのではないでしょうか。
 
学生納付特例制度で猶予されていた保険料を後から支払わないと、どれくらい年金額が少なくなっていくのか検証していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

学生でも20歳以上なら年金保険料の支払い義務がある

そもそもですが、学生であっても20歳を迎えると国民年金に加入することになり、国民年金保険料の支払い義務が生じます。
 
ただし、学生の方は「学生納付特例制度」の申請をすることで、収入など一定の要件を満たす場合、その期間の年金保険料の支払いが猶予されます。現在、多くの学生がこの制度によって年金保険料の納付猶予を受けています。
 
学生納付特例が適用されていた期間は、年金を受け取るのに必要な受給資格期間には含まれるものの、年金額には反映されません。将来、満額の年金を受け取るためには追納という制度を用い、納付猶予を受けてから10年以内に保険料を支払う必要があります。
 
なお、学生納付特例の承認から3年度目以前の分について追納する際には、保険料に追納加算額が付加されます。
 

出典:日本年金機構 「国民年金保険料の追納制度」
 

国民年金保険料の決まり方

将来、自分が受け取れる国民年金の金額(令和3年度)は以下のように計算されます。
 

出典:日本年金機構 「老齢基礎年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)」
 
見慣れない方にとっては非常に分かりづらい計算式になっていますが、要は最大480月加入できる期間に対し、保険料をどのように支払ってきたかによって年金の金額が変化するということです。
 
なお、将来受け取れる国民年金の受給額は満額で年78万900円(令和3年度)です。
 

追納しないと将来の年金はどれくらい減るの?

では、学生時代に学生納付特例で保険料の支払いが猶予された期間について、追納をしないことがどれほど将来の年金額に影響を与えるか検証していきます。
 
ここでは大学生と大学院生(修士課程)を例に、20歳からの2年間と4年間で納付猶予を受けた場合を比較していきます。また、学生時代の納付猶予期間の影響を調べるため、その他に未納や猶予期間などはないものとして簡略化した下記の計算式で検証します。
 
78万900円×480-学生納付特例制度で猶予された期間÷480
 

2年間猶予された場合

猶予期間が2年間(24ヶ月)の場合、将来受け取れる年金額は年間で74万1855円となり、満額の場合と比較して3万9045円少なくなります。
 
78万900円×456÷480=74万1855円
 
年間で考えると、そう大きな差ではないと感じるかもしれませんが、仮に65歳から85歳までの20年間、年金を受け取ると仮定した場合、満額との差額は78万900円です。
 

4年間猶予された場合

猶予期間が4年間(48ヶ月)の場合、将来受け取れる年金額は年間で70万2810円となり、満額の場合と比較して7万8090円少なくなります。
 
78万900円×432÷480=70万2810円
 
仮に85歳までの20年間、年金を受け取ると仮定した場合、満額との差額は156万1800円にもなります。
 

学生時代に猶予された年金保険料は追納しないと確実に将来に影響する

学生時代、学生納付特例制度によって年金保険料の支払いを猶予されていた方は、後から追納しなければ将来年金を満額受け取ることができません。2年の猶予では年間で約4万円、4年の猶予では年間で8万円近く年金額が少なくなり、個人の状況によっては老後、この差が大きく影響することもあり得ます。
 
猶予された分について追納できるのは10年間と決まっているため、将来、満額の年金を受け取りたいという場合は、早めに追納について検討するようにしてください。
 
出典
日本年金機構 国民年金保険料の学生納付特例制度
厚生労働省年金局 令和2年度の国民年金の加入・保険料納付状況について
日本年金機構 国民年金保険料の追納制度
日本年金機構 老齢基礎年金(昭和16年4月2日以後に生まれた方)
 
執筆者:柘植輝
行政書士

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