更新日: 2021.10.25 国民年金

大学4年間の年金を追納していない…将来の受給額はいくら減る?

執筆者 : 新井智美

大学4年間の年金を追納していない…将来の受給額はいくら減る?
国民年金保険料は、加入対象である20歳から60歳のすべての人が払わなければなりませんが、学生の場合、申請することで、在学中の保険料の納付を猶予してもらえる制度があります。しかし、あくまでも猶予制度であることから、払っていない期間については加入期間に算入されるものの、その期間分の保険料を追納しないかぎり、65歳の受け取り開始時点で満額を受け取ることはできません。
 
では、大学4年間の年金を追納しなかった場合の、65歳時点の受取額はいくらになるのでしょうか。
新井智美

執筆者:新井智美(あらい ともみ)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

聞くのは耳ではなく心です。
あなたの潜在意識を読み取り、問題解決へと導きます。
https://marron-financial.com

国民年金保険料の学生納付特例制度

前述の学生の納付猶予制度を学生納付特例制度といいます。20歳以上の学生に対して用意されている学生納付特例制度は、要件を満たした学生が利用できるものです。そしてその要件とは以下のとおりとなっています。
 

●学生納付特例対象校に在学している学生であること
●本人の所得が一定基準以下であること(令和3年の場合:128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等)

 

■申請手続き

学生納付特例制度を受けるためには、申請書および添付書類を住民票がある市区町村役場の窓口に提出し、承認を受ける必要があります。申請書は国民年金機構のサイトからダウンロードでき、添付書類としては、

1.年金手帳もしくは基礎年金番号通知書
2.学生であること(あったこと)を証明する書類

の2つを用意してください。
 

■学生納付特例制度の注意点

学生納付特例制度は原則として1年間の適用です。したがって、審査は申請日にかかわらず、4月から翌年3月までが対象となります。保険料の納付期限から2年を経過していない場合はさかのぼって申請することができますが、複数年度の申告を行う場合は申請書も複数枚必要になる点を覚えておきましょう。
(出典:日本年金機構「国民年金保険料の学生納付特例制度」(※1))
 

国民年金保険料の追納制度

学生納付特例制度の利用だけにかかわらず、国民年金保険料の免除や猶予制度の適用を受けた場合は、その後10年間の間に追納することで、将来受け取れる年金額を満額にできます。ただし、追納ができるのは、追納が承認された月の前10年以内の免除、もしくは猶予期間のみとなっており、原則として、古い期間のものから納付することになります。
 
また、保険料の免除もしくは納付猶予を受けた期間の翌年度から起算して、3年度目以降に保険料を追納する場合には、承認を受けた当時の保険料額に経過期間に応じた加算額が上乗せされる点に注意が必要です。
 
(引用・一部抜粋:日本年金機構「国民年金保険料の追納制度」(※2))
 

大学4年間の年金を追納していない場合の受給額は?

大学4年間といっても、大学入学時の年齢によって学生納付猶予制度の適用期間は異なります。浪人せずに大学に進学した場合、未納期間は20歳から22歳までの2年間となり、40年間(480ヶ月)のうちの24ヶ月となります。その際の65歳時点で受け取れる年金額は以下のとおりです。
 
令和3年度年金受給額:78万900円×((480-24)/480)=74万1855円
 
つまり、20歳から大学卒業までの年齢1年ごとに約2万円の減額となる換算です。もし、2年間浪人し20歳で大学に入学し、4年間学生納付猶予制度を受けて追納しなかった場合は、78万900円×((480-48)/480)=70万2810円が受給額となります。
 
ただし、制度を受けるのは月単位であるため、人によっては20歳になる大学2年生の3月と3年生の12ヶ月・4年生の12ヶ月で合計25か月となる可能性もあります。誕生月によっては、学生納付特例の対象月数も異なり、25ヶ月より多くなることもありますので、その際には上の金額と同額になりませんので注意が必要です。
 

追納したくても10年を過ぎてしまった場合

追納したくても10年を過ぎてしまった場合、任意加入制度を利用することで受給額を満額に近づけることができます。任意加入制度を利用できるのは以下のすべての条件を満たす人です。
 

1.日本に住む60歳から65歳までの人
2.老齢基礎年金の繰り上げ受給を行っていない人
3.20歳以上60歳未満の納付済み期間が480ヶ月を満たしていない人
4.厚生年金保険および共済組合などに加入していない人

 
また、年金の受給資格期間を満たしていない65歳から70歳までの人も任意加入制度を利用できます。
 

■任意加入制度を利用するには?

原則として60歳の誕生日の前日から手続きを行うことが可能です。申込窓口は住んでいる市区町村役場の年金窓口および年金事務所で、年金手帳と金融機関の届出印を持参し申し込むことになります。
(出典:日本年金機構「任意加入制度」(※3))
 

まとめ

大学生の間の年金については、学生納付猶予制度を利用できますが、追納せずにそのままにしている人もいらっしゃいます。追納期間は10年間となっていることから、その期間に追納できなかった場合満額受給できないと思われがちですが、任意加入制度を利用することで満額受給に近づけることができます。
 
現在の年金支給開始年齢は65歳ですが、今後年金繰り下げ受給については現在の70歳から75歳まで延長されることも決まっています。繰り下げ受給にかかわる増額率は満額の受給額ではなく、その人が65歳時点で受け取れる受給額に乗じて計算されることから、将来繰り下げ受給を考えているのであれば、なおさら65歳時点での受給額を満額に近づけておくことが望ましいといえます。
 
そのためにも、できるだけ早い期間での追納や、追納が間に合わなかった場合には任意加入制度を利用するなどの対応を取ることをおすすめします。
 
出典
(※1)日本年金機構「国民年金保険料の学生納付特例制度」
(※2)日本年金機構「国民年金保険料の追納制度」
(※3)日本年金機構「任意加入制度」
 
※2021/10/25 記事を一部修正いたしました。
 
執筆者:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

ライターさん募集