更新日: 2023.01.11 その他年金

日本の年金制度は海外と比べて「評価が低い」? 諸外国と比較して分かることを解説

執筆者 : 谷口まり恵

日本の年金制度は海外と比べて「評価が低い」? 諸外国と比較して分かることを解説
将来もらえる年金で生活していけるのか、不安に感じている人は少なくないでしょう。日本の年金制度は諸外国と比較するとどのような状況なのでしょうか。
 
コンサルティング会社のマーサーとCFA協会が発表する「グローバル年金指数ランキング」では、世界各国の年金制度を評価しランキングにしています。
 
本記事では、日本の年金制度を諸外国と比較して分かることを解説します。
谷口まり恵

執筆者:谷口まり恵(たにぐち まりえ)

一級ファイナンシャルプランニング技能士

グローバル年金指数ランキングとは

グローバル年金指数とは、世界の年金制度をより充実したものにするために、各国の年金制度を数値化したものです。それぞれの国の年金制度を「十分性」「持続性」「健全性」の3つの観点から評価し、それぞれの数値を加重平均して算出した総合指数を順位づけしています。
 
2022年の10月に発表された最新のランキングでは、世界人口の65%を占める44ヶ国の退職所得制度を調査しています。
 

日本の年金制度の評価

日本は44ヶ国中35位で、総指数は54.5でした。評価項目ごとの数値を見ると、十分性が58.0、持続性が44.5、健全性が63.0であり、持続性が最も低いという結果が出ています。
 
指数評価だけでなく、指数に応じてAからEに判定され、80超はA、75超80以下はB+、65以上75以下はB、60超65以下はC+、50超60以下はC、35超50以下はD、35以下はEに分類されます。日本の総評価はCでした。
 
D評価だった昨年に比べるとどの数値も上昇しており、改善傾向にはありますが、ランキング上位の国と比べると相対的な評価は低いといえるでしょう。2022年のランキング上位にはアイスランド、オランダ、デンマークが並び、日本よりランキングが低い国には台湾、韓国、インドネシア、インド、フィリピンなどのアジア諸国などが位置しています。
 

日本の年金制度の評価が低い原因

次に、日本の年金制度の評価が低い原因を考えてみます。日本の年金制度は賦課方式を採用しており、現役世代が納めた保険料をその年金受給者が受け取る年金の支払いに充てています。
 
このような特徴から、賦課方式はインフレや給与水準の変化に対応できるメリットがある一方で、少子高齢化の影響を受けやすいというデメリットがあります。少子高齢化が進むと保険料を納める現役世代の割合が減ってしまい、1人あたりの負担が大きくなってしまうからです。
 
人口に占める割合を比較すると、基礎年金制度が導入された昭和60年には65歳以上1人に対して現役世代が6人いたのに対して、令和2年には2人にまで減っている状況です。今後も少子高齢化は進んでいくと予想されており、年金受給者1人に対する現役世代が少ないことが年金制度の持続性が低いと評価されてしまう原因の1つだといえます。
 
人口減少はすぐに改善できる問題ではないので、退職後に向けて今のうちから資産を増やす準備をする必要があります。
 

まとめ

グローバル年金指数ランキングでは、日本の年金制度は諸外国に比べると低評価であることが分かりました。その原因の1つとして、年金制度が賦課方式で運用されており、少子高齢化の影響を大きく受けていることが考えられます。
 
すぐに現状を変えるのは難しいので、老後の生活に備えるためにも現役で働いているうちから自助努力でお金を増やしていく必要があります。
 
令和5年の税制改正大綱において、NISA制度の拡充や恒久化の方針が示されており、今後さらに貯蓄から投資への流れが強まり、投資を始めやすくなることが期待できます。この機会に、長期分散投資を始めてみてはいかがでしょうか。
 

出典

マーサージャパン 「グローバル年金指数ランキング」(2022年度)を発表
マーサージャパン 「グローバル年金指数ランキング」(2021年度)を発表
厚生労働省 いっしょに検証!公的年金~年金の仕組みと将来~賦課方式と積立方式
厚生労働省 【年金制度の仕組みと考え方】第4 公的年金制度の歴史
内閣府 令和4年版高齢社会白書(全体版) 第1章 高齢化の状況 (第1節 1)
金融庁 新しいNISA
 
執筆者:谷口まり恵
一級ファイナンシャルプランニング技能士

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