更新日: 2023.03.03 その他年金

2023年4月から施行される「5年前みなし繰下げ」とは? 年金額が増えるって本当?

2023年4月から施行される「5年前みなし繰下げ」とは? 年金額が増えるって本当?
2023年4月以降に、老齢年金の「5年前みなし繰下げ」の制度がスタートすることを知り、いったいどのような制度なのか、どのようなメリットがあるのかと疑問を抱いている人もいるでしょう。
 
「5年前みなし繰下げ」は、繰下げ受給の上限年齢引き上げにともない、71歳以降も繰下げ待機する人が大きな不利益を被らないために設けられた制度です。
 
本記事では、「5年前みなし繰下げ」制度の概要や適用された場合の年金額の計算方法、注意点をまとめました。

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公的老齢年金の「5年前みなし繰下げ」とは?

公的老齢年金の「5年前みなし繰下げ」は、繰下げ受給の上限年齢が75歳に引き上げられたことにともなって設けられた、特例的な制度です。
 
70~79歳で繰下げの申出をせずに年金を請求した場合に、5年前の時点で繰下げの申出があったとみなして、増額された5年間分の年金が一括で支給されます。また、受給開始後はずっと、繰下げにより増額された年金額を受け取れます。
 
年金を受給する権利は、通常5年間で時効がきて消滅する決まりです。そのため従来の制度では、70歳を超えてから65歳以降の年金をさかのぼって受給する選択をした場合、5年以上前の年金は時効により受け取れませんでした。
 
しかし、「5年前みなし繰下げ」の特例では、70~79歳で繰下げの申出をせずに年金を請求すると、5年以上前の期間を繰下げ待機期間とみなして計算した金額を、年金額に上乗せして受け取れます。
 
本特例ができたことで、繰下げ待機期間中に事情が変わって繰下げ受給を取り留めたとしても受け取れる年金額が大きく減ることがなくなり、70歳以降も安心して繰下げ待機ができるようになりました。
 

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「5年前みなし繰下げ」の対象者

「5年前みなし繰下げ」の対象者は、次のいずれかに当てはまる人です。

・昭和27年4月2日以降生まれ(令和5年3月31日時点で71歳未満)
 
・老齢基礎年金・老齢厚生年金の受給権取得日が平成29年4月1日以降(令和5年3月31日時点で老齢基礎年金・老齢厚生年金の受給権取得日から6年未満)

ただし、次の場合は「5年前みなし繰下げ」の対象にはなりません。

・80歳以降に請求する場合
・請求の5年前以前から障害年金や遺族年金の受給権がある場合

 

「5年前みなし繰下げ」は得? 年金額の計算方法

「5年前みなし繰下げ」の適用時に受け取れる年金額は、次のように計算します。

一括受取額=(本来の年金額+本来の年金額×【65歳0ヶ月から請求時点の5年前までの経過月数】×0.7%)×5年間
 
請求以降の年金額=本来の年金額×【65歳0ヶ月から請求時点の5年前までの経過月数】×0.7%

「5年前みなし繰下げ」の適用によって年金額はどう変わるのか、本来の年金額(年額)が200万円の人が71歳で年金を請求するケースを例に計算してみましょう。
 

計算例

■従来制度の場合
受け取れるのは、66歳以降の本来の年金額のみです。65歳からの1年間分は時効により受け取れません。200万円×5年間分=1000万円が一括で支給され、以降は年額200万円の年金が受け取れます。
 
20年間年金を受給した場合の合計額は次のとおりです。

一括支給分1000万円+200万円×20年間=5000万円

 
■繰下げ申出をしない場合
65歳から66歳まで1年間(12月)の繰下げ受給を申請したとみなされ、年金額が0.7%×12月=8.4%増額となります。請求時に一括で受け取れる金額は(200万円+200万円×8.4%)×5年間=1084万円です。以降は8.4%増額された年額216万8000円の年金を受け取れます。
 
20年間年金を受給すると合計額は次のとおりです。

一括支給分1084万円+216万8000円×20年間=5420万円

 
■繰下げ申出をする場合
65歳から71歳まで6年間(72月)の繰下げとなり、0.7%×72月=50.4%の増額率を上乗せした年金が毎年支給されます。受け取れる年金額(年額)は200万円+200万円×50.4%=300万8000円です。
 
20年間年金を受給した場合の合計額は次のようになります。

300万8000円×20年間=6016万円

「5年前みなし繰下げ」特例が設けられたことで、71歳以降の請求で繰下げ申出をしない場合も、従来制度と比べると受け取れる年金額は大きく増額することになります。ただし、繰下げ申出をする場合と比べると年金額は下がるため注意しましょう。
 

「5年前みなし繰下げ」の適用を受ける場合の注意点

「5年前みなし繰下げ」の適用を受けると、過去分の年金を一括して受給することになります。そのため、過去に支払ってきた医療保険・介護保険の保険料や自己負担、税金などに関して、過去にさかのぼって金額の変更などの影響が生じることがあります。
 
どのような影響があるのか心配な場合は、制度を利用する前に年金事務所などの専門機関に相談するとよいでしょう。
 

「5年前みなし繰下げ」のスタートで安心して繰下げ待機できる

「5年前みなし繰下げ」は、老齢年金の繰下げ受給の上限年齢変更にともない、71歳以降も安心して繰下げ待機ができるように設けられた制度です。
 
本制度の活用も視野に入れておくことで「71歳以降に年金を繰下げたいけれど、健康不安などで取り留めることになると大損するかも……」といった悩みが軽くなるでしょう。制度についてよく知ったうえで、年金をどのように受給するかを検討しましょう。
 

出典

厚生労働省 [年金制度の仕組みと考え方]第11 老齢年金の繰下げ受給と繰上げ受給
日本年金機構 令和5年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されます
日本年金機構 年金の繰下げ受給
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部