更新日: 2023.03.06 その他年金

【0.4%になったらお得?】「年金の繰上げ」で失敗しないために知っておくべき5つのことを解説

執筆者 : 柳沢俊宏

【0.4%になったらお得?】「年金の繰上げ」で失敗しないために知っておくべき5つのことを解説
老齢年金(老齢基礎年金・老齢厚生年金)は、原則65歳からの受給となりますが、希望すれば60歳から繰り上げて受給することが可能です。ただし、年金の「繰上げ受給」を選択すると、年金が減額されます。この減額率が、2022年4月に緩和されました。
 
減額率が有利に変更されたので、「お得に利用できるのでは?」と考える人がいるかもしれません。しかし、年金の繰上げ受給には注意すべき点がいくつかあります。本記事では、年金の繰上げ受給で失敗しないために知っておくべき5つのことについて解説します。

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柳沢俊宏

執筆者:柳沢俊宏(やなぎざわ としひろ)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、ワイゼットFPオフィス代表

改正の内容

2022年4月1日より、年金の繰上げ受給の減額率が、1ヶ月当たり0.5%から0.4%に変更されました。例えば、60歳0ヶ月の時点で繰上げ受給した場合の減額率は、0.5%の当時は30%(0.5%×60月)、0.4%改定後は24%(0.4%×60月)と、6%分減額率がお得になります。なお、この変更の対象者は、2022年3月31日時点で60歳未満の人になります。
 

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年金の繰上げ受給のデメリット

減額率が改善されたので、「お得に年金の繰上げ受給ができる」と考えてしまいそうですが、そもそも年金の繰上げ受給には大きく5つのデメリットがあります。年金の繰上げ受給は、一度請求すると取り消すことができませんので、これらのデメリットをしっかり理解し、請求してから「失敗した!」と後悔することのないようにしましょう。
 

減額は一生続く

最大の減額率が24%に緩和されたとはいえ、減額は生涯続きます。本来の支給開始より最大5年早く年金を受給できる代わりに、65歳を過ぎて年金を受給する期間が長くなるほど、年金の「繰上げ受給をしなかった人との受給額の差は広がって」いきます。
 
このデメリットは、一生に受け取れる年金の総額に直結しますので、とても重要です。目先の資金繰りと将来の資金繰りをしっかり比較し、年金の繰上げ受給を行うかどうかを決定しましょう。
 

寡婦年金が受給できなくなる

年金の繰上げ受給を請求すると、寡婦年金を受給中の人は、「寡婦年金の権利がなくなり」ます。寡婦年金とは、夫によって扶養されていた妻がその夫の死亡によって一定の要件を満たす場合に、60歳から65歳になるまでの間支給されるものです。現在もらっている寡婦年金が受け取れなくなるので、注意が必要です。
 

一部の障害年金が受給できなくなる

年金の繰上げ受給を請求すると、「事後重症などによる障害基礎(厚生)年金を請求することができなくなり」ます。「事後重症」とは、障害認定日には障害の状態に該当しなかったものの、その後症状が悪化し、65歳までに障害の状態になったような場合です。現在、治療中の病気や持病がある人は、この点に十分注意しておく必要があります。
 

遺族厚生年金と両方受給できない

繰上げ受給した老齢年金は65歳になるまでの間、「遺族厚生年金と併せての受給ができない」ため、いずれかの年金を選択することになります。
 
一般的に、遺族厚生年金を選択することが多く、その場合繰上げ受給していた老齢年金は支給停止されます。支給停止されるにもかかわらず、65歳以降に受給する老齢年金は減額されたままになるので、とても損をした気持ちになるでしょう。このようなデメリットがあるということも、理解しておく必要があります。
 

任意加入や保険料の追納ができなくなる

年金の繰上げ受給を請求すると、65歳を待たずして年金受給者になるので、「任意加入」や保険料の「追納」など、年金を受給する前に年金額を増やす手続きができなくなります。年金の繰上げ受給を検討されている人は、一般的には目先の資金繰りが厳しい人が多いのかもしれません。
 
しかし、余剰資金ができる場合もあります。そんなとき、年金の繰上げ受給をしてしまっていると、もう年金額を増やす策がないということを覚えておきましょう。
 

デメリットを理解した上で利用しましょう

老後のお金事情は人それぞれです。「減額されてでもいち早く受給したい」と思う人がいるのも当然でしょう。年金の繰上げ受給は、個々のニーズに応じて柔軟な受給を選択できる制度です。ただし、利用に当たっては、年金の繰上げ受給のデメリットをよく理解した上で、慎重に判断するようにしましょう。
 

出典

日本年金機構 年金の繰上げ受給
 
執筆者:柳沢俊宏
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、ワイゼットFPオフィス代表