更新日: 2023.03.22 その他年金

独身者が年金受給前に亡くなった。受け取るはずだった年金ってどうなるの?

執筆者 : 篠原まなみ

独身者が年金受給前に亡くなった。受け取るはずだった年金ってどうなるの?
独身の人が年金を受給する前に亡くなったとき、受け取るはずだった年金はどうなるのでしょうか?受給要件や手続方法などを解説します。

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篠原まなみ

執筆者:篠原まなみ(しのはら まなみ)

1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者

外資系証券会社、銀行で20年以上勤務。現在は、日本人、外国人を対象とした起業家支援。
自身の親の介護、相続の経験を生かして分かりやすくアドバイスをしていきたいと思っています。

生涯独身率

日本では、生涯を通じて結婚しない人が年々増加しています。50歳時の未婚割合をみると、1970年は男性1.7%、女性3.3%でした。
 
その後、男性は一貫して上昇する一方、女性 は1990年まで横ばいでしたが、以降上昇を続け、2015年国勢調査では男性24.8%、女 性14.9%、2020年は男性28.3%、女性17.8% と、それぞれ上昇していています(※1) 。
 

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受給要件

このように、独身が増加している中で、独身者が老齢年金(以降、年金)を受給する前に亡くなった場合、今まで掛けた年金はどうなってしまうのでしょうか?
 
遺族年金は2種類あります。遺族基礎年金と遺族厚生年金です。遺族基礎年金の受給要件として、次の1から4のいずれかの要件を満たしている人が死亡したときに、遺族に遺族基礎年金が支給されることになります。


1.国民年金の被保険者である間に死亡したとき(注1)
2.国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満の人で、日本国内に住所を有していた人が死亡したとき(注1)
3.老齢基礎年金の受給者であった人が死亡したとき(注2)
4.老齢基礎年金の受給資格を満たした人が死亡したとき(注2)

そして、遺族基礎年金を受け取ることができる人は、死亡した人に、生計を維持されていた次の遺族です。


1.子のある配偶者
2.子(注3)

したがって、独身者が受給要件を満たしていたとしても、受給対象者となる遺族はいません(※2)。
 
それでは、遺族厚生年金はどうなるのでしょうか。次の1から5のいずれかの受給要件を満たしている人が死亡したときに、遺族に対し遺族厚生年金が支給されることになっています。


1.厚生年金保険の被保険者である間に死亡したとき(注1)
2.厚生年金の被保険者期間に初診日がある病気や、けがが原因で初診日から5年以内に死亡をしたとき(注1)
3.1級・2級の障害厚生(共済)年金を受け取っている人が死亡したとき
4.老齢厚生年金の受給者であった人が死亡したとき(注2)
5.老齢厚生年金の受給資格を満たした人が死亡したとき(注2)

遺族厚生年金を受け取ることができる人は、死亡した人に生計を維持されていた次の遺族のうち、最も優先順位の高い人です。


1.妻(注4)
2.子(18歳になった年度の3月31日までにある人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人)
3.夫(死亡当時に55歳以上である人に限る)(注5)
4.父母(死亡当時に55歳以上である人に限る)(注6)
5.孫(18歳になった年度の3月31日までにある人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態にある人)
6.祖父母(死亡当時に55歳以上である人に限る)(注6)

したがって、独身の人が亡くなったときに、生計を維持されていた55歳以上の父母(父母がいないときは、祖父母)が存命なときには、60歳から遺族年金を受け取ることができます(※3)。
 
【図表1】


 
注1:死亡日の前日において、保険料の納付済期間(保険料を免除された期間を含む)が国民年金加入期間の3分の2以上であることが要件です。
 
ただし、死亡日が令和8年3月末日までのときは、死亡した人が65歳未満であれば、死亡日の前日において、死亡日が含まれる月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないことが要件です。
 
注2:保険料納付済期間、保険料免除期間および合算対象期間を合算した期間が25年以上ある人に限ります。
 
注3:子とは18歳になった年度の3月31日までの人、または20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の状態の人。子のある配偶者が遺族基礎年金を受け取っている間や、子に生計を同じくする父または母がいる間は、子には遺族基礎年金は支給されません。
 
注4:子のない30歳未満の妻は、5年間のみ受給できます。
 
注5:受給開始は60歳からとなります。ただし遺族基礎年金をあわせて受給できる場合に限り、55歳から60歳の間も遺族厚生年金を受給することが可能です。
 
注6:受給開始は60歳からとなります。
 

遺族厚生年金の計算方法

遺族厚生年金の年金額は、死亡した人の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3の額です。
 
なお、上記の受給要件のところで述べた1、2および3に基づいた遺族厚生年金のケースにおいて、報酬比例部分の計算で、厚生年金の被保険者であった期間が300月(25年)未満である場合、300月とみなし計算を行います。
 
遺族厚生年金・老齢厚生年金を受け取る権利を持つ65歳以上の人は、平成19年4月1日からは、老齢厚生年金は全額支給となります。遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額の支給が停止になります。
 
ちなみに、遺族厚生年金の受給権者が、老齢厚生年金、退職共済年金、もしくは遺族共済年金を受け取る権利がある場合は、遺族厚生年金の支給額の決定するために、これらの年金において裁定の請求をする必要があります。
 

まとめ

独身者が年金を受け取る前に亡くなったときに、生計を維持されていた55歳以上の父母(父母がいない場合は祖父母)がいれば、60歳から遺族年金を受給できる可能性があります。
 
また、生計を同じくしていた父母(父母がいない場合は祖父母)は、独身者が死亡日の前日において、第1号被保険者(任意加入者も含む)として保険料を36ヶ月以上納付していた場合は、死亡一時金を受給できる可能性があります。
 
遺族厚生年金と死亡一時金は、併せて受け取ることができますが、請求は年金事務所または年金相談センターにしなければなりませんので注意しましょう(※4)。
 

出典

(※1)内閣府 令和4年版 少子化社会対策白書 全体版(PDF版)より 3 婚姻・出産の状況
(※2)日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
(※3)日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
(※4)日本年金機構 遺族厚生年金を受けられるとき
 
執筆者:篠原まなみ
AFP認定者、宅地建物取引士、管理業務主任者、第一種証券外務員、内部管理責任者