更新日: 2023.05.09 その他年金

令和5年度の老齢基礎年金額、「新規裁定者(67歳以下の方)」と「既裁定者(68歳以上の方)」の違いって何?

執筆者 : 伊達寿和

令和5年度の老齢基礎年金額、「新規裁定者(67歳以下の方)」と「既裁定者(68歳以上の方)」の違いって何?
公的年金は老後の生活を支える大切な収入ですが、年金額は賃金や物価の影響を受ける形で、毎年見直しが行われています。
 
令和5年度の年金額は、前年度から新規裁定者は2.2%の引き上げ、既裁定者は1.9%の引き上げとなりましたが、この違いが気になる人もいるでしょう。そこで今回は、年金額改定のルールについて解説します。

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伊達寿和

執筆者:伊達寿和(だて ひさかず)

CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員

会社員時代に、充実した人生を生きるには個人がお金に関する知識を持つことが重要と思いFP資格を取得。FPとして独立後はライフプランの作成と実行サポートを中心にサービスを提供。

親身なアドバイスと分かりやすい説明を心掛けて、地域に根ざしたFPとして活動中。日本FP協会2017年「くらしとお金のFP相談室」相談員、2018年「FP広報センター」スタッフ。
https://mitaka-fp.jp

新規裁定者は賃金、既裁定者は物価にスライドが基本

まず、年金額の基本的な計算式は次のようになっています。
 

【老齢基礎年金】

78万900円(平成16年度額)×改定率×保険料納付月数/480月
 

【老齢厚生年金(報酬比例部分)】

平均標準報酬額×5.481/1000×被保険者の月数
 
※平均標準報酬額は、過去の標準報酬に再評価率を乗じて現在価値に置き換えた数値が使用されます。
 
年金額の計算に使用される改定率(再評価率)は、新規裁定者と既裁定者で計算方法が異なります。
 
年金額の改定では、その年度で到達する年齢が67歳以下の人を「新規裁定者」、68歳以上の人を「既裁定者」としますが、原則の年金受給開始年齢である65歳と年齢が異なるのは、改定率の計算に2年度前から4年度前までの3年度平均の賃金変動率を用いるためです。
 
年金額の改定率(再評価率)は次のように計算されます。
 

【新規裁定者】

前年度改定率×名目手取り賃金変動率×マクロ経済スライド調整率
 
名目手取り賃金変動率とは、2年度前から4年度前までの3年度平均の実質賃金変動率に、前年の物価変動率と3年度前の可処分所得割合変化率を乗じたものです。
 

【既裁定者】

前年度改定率(再評価率)×物価変動率×マクロ経済スライド調整率
 
新規裁定者は賃金、既裁定者は物価にスライドするのが基本的な考え方です。新規裁定者が賃金にスライドするのは、65歳に到達して新たに年金を受給するときに、直近の賃金の状況を反映させるためです。
 
また、マクロ経済スライド調整率は、社会情勢に合わせて年金の給付水準を調整するためのもので、公的年金全体の被保険者数の変動(3年平均)と平均余命の伸びを基にした一定率で決まります。
 

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年金額改定ルールの例外

年金額改定ルールの考え方では、例外のケースがあります。賃金の上昇が物価の上昇に追いつかず、実質賃金がマイナスになる次のケースでは、新規裁定者だけでなく既裁定者も年金額は賃金にスライドします。
 

●物価>賃金>0(物価よりも賃金の増加が小さい)
●物価>0>賃金(物価は上昇、賃金は減少)
●0>物価>賃金(物価よりも賃金の減少が大きい)

 
これは、年金の支え手である現役世代の負担能力に合わせた給付とするための対応で、平成28年の年金改革法によって、令和3年4月から適用されています。
 

令和5年度の年金額改定率を確認


 
令和5年度の年金額改定率を確認するに当たり、参考指標は次のようになっています。
 

●物価変動率:2.5%
●名目手取り賃金変動率:2.8%
●マクロ経済スライドによるスライド調整率:▲0.3%
●前年度までのマクロ経済スライドの未調整分:▲0.3%

 
新規裁定者の改定率は賃金変動率にスライドしますが、マクロ経済スライドを考慮すると、2.2%のプラスとなります。また、既裁定者の改定率は物価変動率にスライドし、マクロ経済スライドを考慮すると1.9%のプラスです。
 
令和5年度の老齢基礎年金(満額)は、新規裁定者で月額6万6250円(対前年度比でプラス1434円、年額では79万5000円)、既裁定者で月額6万6050円(対前年度比でプラス1234円、年額では79万2600円)となります。
 
ちなみに、令和4年度は物価変動率が▲0.2%、賃金変動率が▲0.4%、マクロ経済スライド調整率が▲0.3%でしたので、新規裁定者、既裁定者ともに下げ幅の大きい賃金変動率▲0.4%に合わせて改定率が計算されていました。
 
また、令和4年度は賃金変動率がマイナスであったため、マクロ経済スライドによる調整は行われませんでした。その結果、マクロ経済スライドの調整率▲0.3%は未調整分として繰り越され、令和5年度では本来のマクロ経済スライド調整率に加えて未調整分が考慮されています。
 

まとめ

年金額は毎年見直されますが、現在の年金制度では物価の変動率だけでなく、賃金変動率も年金額の改定に影響します。
 
老後の家計を考える際の参考として、改定の仕組みにより変更される年金額について毎年確認しておくといいでしょう。
 

出典

日本年金機構 年金額はどのようなルールで改定されるのですか。

厚生労働省 年金改革法(平成28年法律第114号)が成立しました

厚生労働省 令和5年度の年金額改定についてお知らせします

厚生労働省 令和4年度の年金額改定についてお知らせします

 
執筆者:伊達寿和
CFP(R)認定者、1級ファイナンシャルプランニング技能士、相続アドバイザー協議会認定会員