更新日: 2023.06.08 国民年金

【社会保障の主な制度変更】 第4回「国民年金保険料」、「年金生活者支援給付金」、「老齢年金の繰下げ」の変更点を解説

執筆者 : 新美昌也

【社会保障の主な制度変更】 第4回「国民年金保険料」、「年金生活者支援給付金」、「老齢年金の繰下げ」の変更点を解説
令和5年4月より、さまざまな制度が変更になりました。本記事では、医療、年金、労災、子育てなどの社会保障のうち、国民生活に影響がある制度変更のポイントを5回に分けて解説します。
 
第4回目は、「国民年金保険料等の改定」「年金生活者支援給付金額の改定」「特例的な繰下げみなし増額の導入」「母子父子寡婦福祉資金貸付金の額の改定」「児童扶養手当の手当額引上げ」について取り上げます。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

国民年金保険料等の改定

国民年金は20歳~60歳の国民全員が加入します。自営業者、フリーランス、学生等は第1号被保険者、会社員・公務員などは第2号被保険者、第2号被保険者に扶養される20歳以上60歳未満の配偶者は、第3号被保険者です。
 
令和5年度の第1号被保険者の保険料額は月額1万6520円に改定されました。令和6年度の保険料額は月額1万6980円の予定です。
 
65 歳以降、国民年金から「老齢基礎年金」を終身にわたって受け取ることができます。また、厚生年金保険に加入したことがある方は「老齢厚生年金」が上乗せされます。年金額は、過去の報酬と加入期間に応じて決まります。
 
令和5年度の新規裁定者(67 歳以下の方)の年金額について、国民年金(1人分)の年金額は月額6万6250 円、厚生年金(夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額)は月額22万4482 円となりました。
 
60歳以降、厚生年金に加入しながら受け取る老齢厚生年金を在職老齢年金といいます。年金額と月給・賞与に応じて年金額は減額され、場合によっては全額支給停止になります。
 
在職老齢年金の令和5年度の支給停止調整額は48万円です。基本月額と総報酬月額相当額との合計が48万円以下の場合、全額支給となります。基本月額と総報酬月額相当額との合計が48万円を超える場合、基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-48万円)÷2を在職老齢年金として受け取ることができます。
 
(例)基本月額(年金月額)15万円、総報酬月額相当額36万円の場合
支給停止額=(15万円+36万円-48万円)×1/2=1.5万円
在職老齢年金として受け取れる年金額は、15万円-1.5万円=13.5万円

 

年金生活者支援給付金額の改定

年金生活者支援給付金とは、消費税率引き上げ分を活用し、公的年金等の収入や所得額が一定基準額以下の年金受給者の生活を支援するために、年金に上乗せして支給される給付です。老齢年金生活者支援給付金、障害年金生活者支援給付金、遺族年金生活者支援給付金があります。
 
令和4年の物価変動率(2.5%)に基づき、令和5年度は2.5%の引き上げとなります。
 
老齢年金生活者支援給付金は、以下の要件をすべて満たしている方に給付されます。
 

(1) 65歳以上で、老齢基礎年金を受けている
(2) 請求される方の世帯全員の市町村民税が非課税となっている
(3) 前年の年金収入額とその他の所得額の合計が88万1200円以下である

 
令和5年度の給付基準額は5140円(月額)です。例えば、国民年金保険料を40年(480月)納付した人の場合の月額6万6250円(67歳以下の人の場合)と合わせて7万1390円となります。
 
障害年金生活者支援給付金は、以下の要件をすべて満たしている方に給付されます。
 

●障害基礎年金を受けている
●前年の所得額が「472万1000円+扶養親族の数×38万円※」以下である

令和5年度の障害年金生活者支援給付金(月額)は、1級6425 円、2級5140 円です。
 
遺族年金生活者支援給付金は以下の要件をすべて満たしている方に給付されます。
 

●遺族基礎年金を受けている
●前年の所得額が「472万1000円+扶養親族の数×38万円※」以下である

遺族年金生活者支援給付金(月額)は5140 円です。
 
なお、2人以上の子が遺族基礎年金を受給している場合は、5140円を子の数で割った金額がそれぞれに支給されます。
 
※ 同一生計配偶者のうち70歳以上の者または老人扶養親族の場合は48万円、特定扶養親族または16歳以上19歳未満の扶養親族の場合は63万円です。
 

特例的な繰下げみなし増額の導入

令和4年4月から繰下げ可能年齢の上限が70歳から75歳に引き上げられ、年金を受け取る始める時期を75歳まで選べるようになりました。これにより、繰下げ増額率(1ヶ月あたり0.7%)が最大42%から84%になりました。
 
これを踏まえ、70歳到達後に繰下げ申出をせずにさかのぼって本来の年金を受給することを選択したケースであっても、請求の5年前の日に繰下げを申出したとみなし、増額された年金の5年間分を一括して受け取ることができる制度を開始しました。これを「特例的な繰下げみなし増額制度」といいます。
 
たとえば、71歳まで繰上げ待機して71歳で年金の請求をする場合(本来の年金額180万円)で考えてみましょう。71歳時に年金請求(繰下げ)をすると、年金の増加率は50.4%(71歳-65歳=72ヶ月×0.7%)となります。したがって、71歳からの年金額は年額271万円(180×1.504)です。
 
一方、繰下げ申出をせずにさかのぼって本来の年金を受け取ることを選択した場合、請求の5年前の日(66歳)に繰下げ申出したものとみなし(したがって増加率は12ヶ月×0.7%=8.4%)、増額された年金195万円(180万円×1.084%)の5年分(195万円×5=975万円)を一括して受け取ることができます。
 
なお、この制度の対象となるのは以下のいずれかに該当する方です。
 

●昭和27年4月2日以降生まれの方(令和5年3月31日時点で71歳未満の方)
●老齢基礎年金、老齢厚生年金の受給権を取得した日が、平成29年4月1日以降の方(令和5年3月31日時点で老齢基礎・老齢厚生年金の受給権を取得した日から起算して6年を経過していない方)

(出典:日本年金機構「令和5年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されました」)

 
今回は、「国民年金保険料等の改定」「年金生活者支援給付金額の改定」「特例的な繰下げみなし増額の導入」「母子父子寡婦福祉資金貸付金の額の改定」「児童扶養手当の手当額引上げ」について見てきました。要件が少々複雑な制度もありますので、不明点があれば担当窓口や専門家に相談してみましょう。
 

出典

厚生労働省 厚生労働省関係の主な制度変更(令和5年4月)について

厚生労働省 年金生活者支援給付金制度/「年金生活者支援給付金制度」について

日本年金機構 令和5年4月から老齢年金の繰下げ制度の一部改正が施行されました

日本年金機構 ホームページ

 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。

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