更新日: 2023.06.08 その他年金

来年還暦を迎える父が「年金見込額10万円」と言っているのですが、多いほうですか…?

執筆者 : 柘植輝

来年還暦を迎える父が「年金見込額10万円」と言っているのですが、多いほうですか…?
来年還暦を迎える父親から突然「年金見込み額が10万円」と伝えられたら、どう思うでしょうか。「年金がたったの月10万円!?」と思う方がほとんどでしょう。そこで、本記事では、年金の平均受給額はどれくらいなのかを解説します。そして、年金が想定よりも少なかったときはどうすればよいのかも一緒に考えていきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

年金の見込み額は確定値ではない

年金の見込み額とは、これまでの加入実績を基に推測される年金額です。実際に年金を受け取る際にはその数値と多少の乖離が生じます。また、確定額ではない以上、今後の年金の加入状況の変化によっては、見込み額よりも多いことや少ないこともあります。あくまでも年金の見込み額は目安と考えることが大切です。
 

今受け取られている年金の平均額はどれくらい

年金の見込み額が10万円ということは、現在厚生年金に加入しているか、過去厚生年金に加入していたと想定されます。
 
令和3年度末時点での厚生年金受給者の平均的な受給金額(厚生年金と共に受けとる国民年金部分も含む)は14万5665円となっています。そこから考えると、年金の見込み額が10万円というのは少ないと言わざるを得ないでしょう。
 
ただし、国民年金の加入者のみに絞ると、平均受給額は5万6479円となっているため、国民年金受給者と比較するとかなり多いと言えます。
 
しかしながら、月10万円の年金だけで生活していくことは困難でしょう。持ち家があり家賃が発生しなくとも、厳しい生活になることが予想されます。
 
他に個人年金や資産収入、十分な預貯金などがあれば別ですが、そうでない場合は何らかの方法で収入を得て生活するか、就労している家族と同居する、仕送りを受けるといった方法を検討していくことになります。
 

60歳以降からでも年金受給額を増やす方法なら繰り下げ受給が有効

収入を有する現役世代の方と同居することや仕送りを受けるといった支援が難しいという場合、年金の繰下げ受給が有効です。年金の繰下げ受給とは、年金を65歳よりも遅く受け取る代わりにその分増額された年金を受け取れるという制度です。現状、繰り下げについては75歳まですることができるようになっています。
 
1ヶ月繰り下げるだけで受け取る年金が0.7%増額、最大でなんと84%も増額された年金を受け取ることができます。
 
例えば、75歳まで繰り下げすることで、年金見込み額10万円の年金が18万4000となります。繰下げ受給を最大まで実施することができれば、75歳以降は年金だけで生活していくことも不可能ではなさそうです。
 
なお、年金の繰り下げは1ヶ月単位で行うことができます。もし、月に15万円程度で生きていくことができるのであれば、75歳と言わず、71歳前後で年金の受け取りを開始するなど柔軟な調整も可能です。
 

年金が少なければ就労も検討すべき

来年還暦を迎えるという年齢であれば、可能な限り厚生年金に加入して就労するという方法も有効です。厚生年金には、最大70歳まで加入することができるので、将来の年金受給額を今からでも増やすことができます。
 
また、働いている間に貯蓄をすることで、より老後に備えることも可能になります。先の繰下げ受給の場合においては、それまでの生活費がネックとなりましたが、就労する年齢を延ばすことで、就労によって得る収入で生活費を賄うことができます。
 
70歳までの雇用を確保するよう国が企業に求めていることから、70歳ごろまで働くことも不可能ではなくなってきています。
 

年金見込み額10万円は決して多いとは言えない。早めに年金受給額を増やすための対策を

年金の見込み額が10万円という数字は決して多い数値ではなく、むしろ厚生年金受給者の平均よりも少ない金額です。
 
ただ、60歳手前であれば、年金の繰り下げ受給や厚生年金に加入して就労するなどによってカバーし、まだまだ将来の年金額を増やすことが可能です。ただし、年金をすでに受給しているなど時期が遅くなると、取れる選択が少なくなってしまいます。
 
親の年金額が少ないと不安になったときは、できるだけ早い段階で将来どうすべきか考えていくことをおすすめいたします。
 

出典

厚生労働省年金局 令和3年度厚生年金保険・国民年金事業の概況
 
執筆者:柘植輝
行政書士
 

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