80代で夫を亡くした妻は、「遺族年金」をいくら受け取れる? 夫の年金が月20万円だった場合で試算

配信日: 2025.10.03 更新日: 2025.10.21
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80代で夫を亡くした妻は、「遺族年金」をいくら受け取れる? 夫の年金が月20万円だった場合で試算
「夫の年金は月20万円だったが、夫が亡くなった後、妻は遺族年金としてどれくらい受け取れるのか?」――高齢の夫婦にとって遺族年金は非常に気になる問題でしょう。
 
特に今回のケースのように、80代という高齢の妻にとって、生活のために就労することは現実的でなく、生活の大きな支えが遺族年金となることが想定されます。
 
そこで本記事では、遺族年金の仕組みを分かりやすく整理し、亡くなった夫の年金額が月20万円だった場合の遺族年金の受給額もシミュレーションしていきます。なお、妻自身が受給している年金は老齢基礎年金のみとします。
柘植輝

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い

まず、遺族年金には大きく2種類あります。ひとつは遺族基礎年金(国民年金部分)で、もうひとつは遺族厚生年金(厚生年金部分)です。
 
そのうち、前者の遺族基礎年金は、国民年金に加入していた人が亡くなった場合に、亡くなった人に生計を維持されていた、18歳到達年度末までの子どものいる配偶者などが受給できるものになります。そのため、すでに子どもが成人しているであろう80代となると、まず対象外と考えてもよいものです。
 
では、もうひとつの遺族厚生年金はどうでしょうか。こちらは、厚生年金保険に加入していた人が亡くなった場合に、亡くなった人に生計を維持されていた配偶者などが受給できるものになります。基本的に、こちらが今回のケースにおける80代の妻に支給される遺族年金になると考えられます。
 

夫の年金20万円の内訳と妻が受け取れる額

遺族厚生年金の支給額は、厳密に計算するとかなり複雑となり、その額はケース・バイ・ケースとなります。それゆえ、一概に「夫の年金がいくらであるから」と、その夫が亡くなった際に妻が受け取れる遺族年金がいくらであると言い切ることはできません。
 
とはいえ、ある程度の額を試算することはできます。日本年金機構によれば、遺族厚生年金の額は、亡くなった人の老齢厚生年金における報酬比例部分の4分の3の額となります。報酬比例部分とは、老齢厚生年金などの計算の基礎となるものです。
 
また、老齢厚生年金を受け取っている人は国民年金(老齢基礎年金)も受け取っていることになります。仮に、老齢基礎年金を6万円と仮定すると、今回のケースでは、老齢厚生年金は14万円です。
 
夫の受け取っていた老齢厚生年金額が報酬比例部分と同額と仮定し、14万円の4分の3を妻の遺族年金の額とするならば、妻が受け取る遺族年金は10万5000円となるわけです。
 

遺族年金の支給額約10万円で生活できるのか

遺族年金の額が10万5000円とした場合に、それだけで残された妻が生活できるかという疑問が残ります。この点、自身の年金と合わせて生活できなくはないというのが結論になるでしょう。
 
もちろん、諸条件によるところが大きいため、一概にはいえないのですが、仮に、自身が老齢基礎年金で6万円を受け取れると仮定してみましょう。すると、合わせて合計16万円ほどの収入があります。
 
総務省統計局の「家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要」によれば、65歳以上の高齢単身無職世帯の平均消費支出は、月額約15万円となっています。そのため、自身の年金と合わせて生活ができないわけではありません。
 
とはいえ、年々物価高によって支出が増えていったり、大きな事故や病気など突発的な支出が増えたりすると、生活が立ち行かなくなる可能性もあります。
 
厳しい面もあるかもしれませんが、日々の節約による貯金や、万一の際は子どもや親族を頼るなどの対策の検討と、可能な範囲での実行が重要です。
 

まとめ

夫が現役時代に厚生年金保険に加入しており、月20万円の年金を受給していた場合でも、妻が夫の死後に受け取れる遺族年金は、月10万円程度にとどまる可能性があります。遺族厚生年金の額は、亡くなった人が受け取る老齢厚生年金における報酬比例部分の4分の3の額となるためです。
 
遺族年金は、生活の重要な柱となりますが、それだけで老後の生活費をまかなうのは難しいことも想定されます。
 
今後、遺族年金で生活することに不安があれば、万一の事態に備え、可能な限り早期に検討と対策を進めていくべきでしょう。
 

出典

日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
総務省統計局 家計調査報告[家計収支編]2024年(令和6年)平均結果の概要 II 総世帯及び単身世帯の家計収支 <参考4> 65歳以上の無職世帯の家計収支(二人以上の世帯・単身世帯) 図2 65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計収支-2024年- (18ページ)
 
執筆者 : 柘植輝
行政書士

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