更新日: 2019.05.17 その他税金

離婚をしたときにもらえる課税対象となる項目はこの3つ

執筆者 : 新美昌也

離婚をしたときにもらえる課税対象となる項目はこの3つ
離婚したときにもらえるお金には、養育費、慰謝料、財産分与があります。特に、自宅などの不動産を分与するときは、財産価値も大きく、分与する側が譲渡所得の課税対象となる場合があるので注意が必要です。離婚と税金の関係についてまとめてみました。
新美昌也

Text:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
http://fp-trc.com/

離婚と税金のポイント

離婚する際に取り決めておくべき項目として、(1)親権者、(2)養育費、(3)財産分与、(4)慰謝料、(5)面会交流があります。このうち、養育費、財産分与、慰謝料については課税されるケースがありますので、それぞれの課税関係について確認しておくことが大切です。
 
●養育費について
養育費は子どものためのお金です。基本的に、子どもが社会人として必要になるまでのすべての費用を請求できます。
 
さて、養育費をもらった場合、所得税や贈与税は課税されるのでしょうか。
所得税に関しては「学資に充てるため給付される金品(給与その他対価の性質を有するものを除く。)及び扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付される金品」については所得税を課さない(所得税法9条第1項15号)、と規定されています。
 
贈与税に関しては、「扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」は非課税財産とされています(相続税法21条の3第1項2号)。
 
したがって、養育費は「扶養義務者相互間において扶養義務を履行するため給付されるもの」ですので、所得税はかかりません。また、贈与税に関しては、「通常必要と認められるもの」であれば非課税財産となります。
 
「通常必要と認められる」とは、「法第21条の3第1項の規定により生活費又は教育費に充てるためのものとして贈与税の課税価格に算入しない財産は、生活費又は教育費として必要な都度直接これらの用に充てるために贈与によって取得した財産をいうものとする。
 
したがって、生活費又は教育費の名義で取得した財産を預貯金した場合又は株式の買入代金若しくは家屋の買入代金に充当したような場合における当該預貯金又は買入代金等の金額は、通常必要と認められるもの以外のものとして取り扱うものとする。(平15課資2-1改正)」(相続税基本通達21-3の5)とされています。これによると、養育費を毎月ではなく、将来分まで含めて一括して受け取るような場合は、贈与税がかかる可能性があります。
 
厚生労働省「平成28年度 全国母子世帯等調査結果報告」によると、養育費の取り決めをしている人は42.9%、現在も受けている人は24.3%であることを考えると、一括してもらったほうが得策です。一括してもらっても、「相当な額」であれば、贈与税がかからないようです。一括してもらう場合は、いくらまでなら贈与税がかからないのか、事前に専門家に相談することをおすすめします。
 
●慰謝料について
慰謝料は、不倫などの違法行為によって離婚原因を作った相手方の行為により受けた精神的苦痛に対する損害賠償です。金額は平均200万円~300万円程度です。100万円以下も多く、金額的には期待できません。
 
さて、慰謝料をもらった場合、所得税や贈与税は課税されるのでしょうか。
所得税法では、心身に加えられた損害について支払いを受ける損害賠償金は非課税とされています(所得税法9条、所得税法施行令30条)。贈与は、何の義務もないのに、無償で財産を相手方に与えることですが、慰謝料はこれに当てはまりませんので、贈与税はかかりません。
 
したがって、慰謝料をもらっても、原則、所得税や贈与税がかかることはありません。ただし、もらった金額が「社会通念上相当の金額」を超えると、所得税がかかる場合があります。また、現金ではなく、不動産や株式で慰謝料を支払う場合は、財産分与と同じく、譲渡所得税がかかる場合があります。
 
●財産分与について
財産分与は、婚姻中に夫婦の協力で築いてきた財産を2人で分け合うことをいいます。このように、夫(妻)から財産を贈与するものではなく、もともと妻(夫)の財産であるものを法律上、正式に妻(夫)のものにしたのにすぎないので、原則、贈与税はかかりません。
 
ただし、分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多すぎる場合、その多すぎる部分に贈与税がかかることになります。また、離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合は、離婚によってもらった財産すべてに贈与税がかかります。
 

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不動産を分与するときは要注意

財産分与が自宅や株式などの有価証券で行われたときは、分与した人に譲渡益が発生していれば、譲渡所得税がかかります。これは、不動産や株式などを売却して、現金にしてから分与したと考えるからです。不動産の財産分与で、譲渡益が生じているかどうかは、次の計算式により判定します。
 
譲渡益=不動産の時価-(取得費用+譲渡費用)
 
なお、離婚後に自宅(居住用不動産)を分与するときには3000万円の特別控除の特例の適用が可能です。「離婚後」というのがポイントです。なぜなら、この特例は、譲渡相手が配偶者など親族の場合には適用できないからです。また、特別控除の適用には、確定申告が必要です。そのほかにも、特別控除の特例を受けるには、一定の要件がありますので、詳しくは専門家に相談してください。
 
次に、不動産を受け取ったときに、不動産取得税がかかるかどうかは、財産分与の性質によります。
 
財産分与には、清算的財産分与(婚姻中の共有財産の清算)、扶養的財産分与(離婚後に相手の生活を補うための分与)、慰謝料的財産分与(精神的な損害に対する分与)があります。このうち、清算的財産分与の場合は、不動産所得税はかかりません。しかし、扶養的財産分与、慰謝料的財産分与については課税されますので注意しましょう。離婚協議書を作成する際は財産分与の性質をわかるようにするとよいでしょう。
 
動産を受けとったときは不動産の名義を変更しますので、登録免許税がかかります。また、毎年、固定資産税がかかります。
 
なお、分与を受けた人は、分与を受けた日にそのときの時価で不動産を取得したことになります。将来、分与を受けた不動産を売った場合には、財産分与を受けた日を基に、長期譲渡になるか短期譲渡になるかが判定されます。
 
不動産や株式などの有価証券を財産分与するときは、専門家に、税金について確認しておきましょう。
 


 
Text:新美昌也(にいみ まさや)
ファイナンシャル・プランナー。ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。
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