2018.02.17 税金

「2018年度税制改正案」でフリーランスが減税になるってホント?(後編)

フラーランスデザイナーのDさんは、あるニュース番組で、現在検討されている「2018年度税制改正案」が成立すれば、自営業者の所得税が減税される可能性があると知りました。詳しい話を聞くためにリリ先生をたずねてきたDさん。今回はリリ先生による説明の「後編」です。

現在の38万円から48万円に引き上げられるので、自営業者が減税になる可能性

Dさん:前編では、「2018年度税制改正案」が成立すれば、ぼくのようなフリーランスにも適用される「基礎控除(※1)」が、現在の38万円から48万円に引き上げられるので、自営業者が減税になる可能性があるとお聞きしました。これはとてもうれしいことです。でも、まだ半分しかご説明いただいていないとおっしゃっていましたよね?
 
リリ先生:はい。その残りの半分について、さっそく説明をはじめてもよいですか?
 
Dさん:ぜひお願いします!
 
リリ先生:前回Dさんには、今回の税制改正では基礎控除が変更されるとお伝えしたのですが、実はすべての納税者が一律に48万円に引き上げられるわけではありません。前回の最後にも少しお伝えしましが、高額所得者はむしろ基礎控除が引き下げられて税負担が増えることになります。
 
Dさん:…と、いいますと?
 
リリ先生:今回の税制改正案では、その人の合計所得(※2)によって基礎控除額が増減する可能性があるんですね。具体的には次のようになります。
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■改正後の基礎控除額
イ 合計所得金額が2,400万円以下である個人:48万円
ロ 合計所得金額が2,400万円を超え2,450万円以下である個人:32万円
ハ 合計所得金額が2,450万円を超え2,500万円以下である個人:16万円
(参照元:財務省「平成30年度税制改正の大綱」)
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ちなみに合計所得金額が2,500万円を超える個人の場合は、基礎控除は適用されなくなります。
 

基礎控除で税金の負担が減っても、青色申告特別控除で税金の負担が増えたら意味がない?

Dさん:そうすると、合計所得が2,400万円を超える高所得者は、基礎控除額がむしろ減るようになるわけですね。ただぼくの場合は、合計所得が2,400万円を超えるなんてことは全く起こりえないですから、基礎控除額はばっちり48万円にまで引き上げられます!
…って、喜んでいいのかわからないですが(笑)。

 
リリ先生:もうひとつお伝えしたいことがあります。
Dさんは自営業者ですから、確定申告をするときには青色申告でなさっていますよね?
 
Dさん:はい。収支の記録のやり方も、正規の簿記の記帳方法(複式簿記)に従っていますよ。えへん。
 
リリ先生:そうすると、今は「青色申告特別控除」という所得控除が適用されているはずです。
 
Dさん:えっと、はい、たぶん…そうだと思います。
 
リリ先生:その青色申告特別控除が、現在は一律65万円なのですが、これが55万円に引き下げられます。さてここで質問です。控除額が減ると、Dさんにはどういう影響が出るんでしたか?
 
Dさん:前編でも同じような質問を受けたな。えーと、控除額は大きくなればなるほど税金の負担が減るから、控除額が減るということは、あ!ぼくの税金の負担が大きくなります!
 
リリ先生:つまり増税ということになるのです。
 
Dさん:がーん!
基礎控除で税金の負担が減っても、青色申告特別控除で税金の負担が増えたら意味がないじゃないですか。

 
リリ先生:いえいえ。実は以下の要件を満たすことで、65万円のまま適用できます。
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イ その年分の事業に係る仕分帳及び総勘定元帳について、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律に定めるところにより電磁的記録の備付け及び保存を行っていること。
 
ロ その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を、その提出期限までに電子情報処理組織(e-Tax)を使用して行うこと。
(参照元:財務省「平成30年度税制改正の大綱」)
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つまり、
イ=所定の「電磁的記録」の形式に合った会計ソフトを使って仕訳帳や総勘定元帳を作成して保存しておくか、
ロ=確定申告を電子申告で行う
のどちらかを行えばよいのです。
 
Dさん:なるほど。それならぼくにもできそうだ。よかったぁ。
ちなみにリリ先生、そんな2018年度税制改正案ですが、実施されるとすれば、いつ頃になるのでしょう?

 
リリ先生:通常の流れでは、現在の改正案は国会審議中で、3月に改正案が成立・交付され4月から施行されます。
 
ただ、改正案の本文には「平成32年分以降の所得税について適用」と記載されていますので、実際に適用されるのは、平成32年分の所得税からです。
 
自営業のDさんならば、平成32年分の税を計算して平成33年に申告する確定申告から適用されることになります(※3)。
 
Dさん:なるほど!適用されるのは少し先なわけですね。今から楽しみです。今回もいろいろ勉強になりました。リリ先生ありがとうございました!
 
※1:基礎控除とはすべての納税者に一律に適用される所得控除のこと。
 
※2:税制改正後の基礎控除額は、すべての種類の所得を合わせた金額で判定します(自営業者なら、事業所得や雑所得のほか、不動産所得などがあればそれも含める)。
 
ちなみに税法上の「所得」は「収入」とは違います。大まかにいうと、収入は文字通り収入のことで、所得は収入から経費を差し引いたものになります。
 
※3:会社員は平成32年年末の年末調整から適用。
 

■今回のまとめ

・2018年度税制改正案では、基礎控除額が合計所得に応じて適用される案が検討されている。
1、合計所得金額が2,400万円以下である個人:48万円
2、合計所得金額が2,400万円を超え2,450万円以下である個人:32万円
3、合計所得金額が2,450万円を超え2,500万円以下である個人:16万円
4、合計所得金額が2,500万円を超える個人には適用されない。
 
・2018年度税制改正案では、自営業者などが確定申告をする青色申告で、正規の簿記の原則で記帳(複式簿記)していれば適用される所得控除「青色申告特別控除」の額は、現在の一律65万円から、55万円に引き下げられる(増税)。
 
・ただし、所定の「電磁的記録」の形式に合った会計ソフトを使って仕訳帳や総勘定元帳を作成して保存しておくか、確定申告を電子申告で行うことで、「青色申告特別控除」の額は65万円のまま適用される。
 
監修:加藤 梨里(かとう りり)
CFP(R)認定者
マネーステップオフィス株式会社代表取締役

加藤 梨里

Text:加藤 梨里(かとう りり)

CFP(R)認定者
マネーステップオフィス株式会社代表取締役

保険会社、信託銀行を経て、ファイナンシャルプランナー会社にてマネーの相談、セミナー講師などを経験。2014年に独立し「マネーステップオフィス」を設立。専門は保険、ライフプラン、節約、資産運用など。テレビ、雑誌取材多数。日経WOMAN ONLINE、東洋経済オンライン、マイナビニュースなどにて執筆多数。趣味は料理。2008年にはNHKきょうの料理クッキングコンテストにて優勝経験も持つ。大学では、食事や運動による健康増進とライフプランの関係について研究中。慶應義塾大学大学院健康マネジメント研究科特任助教。

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