更新日: 2019.05.17 その他税金

「ご当地ナンバープレート」と「京都市宿泊税」。一見無関係に思えるこの2つに共通していることは?

執筆者 : 上野慎一

「ご当地ナンバープレート」と「京都市宿泊税」。一見無関係に思えるこの2つに共通していることは?
「たばこの一斉値上げ」「JR貨物の輸送料金引き上げ」「上場株式の売買単位を100株に統一」「納め忘れなどの国民年金保険料を後納できる期間が5年(特例)から2年(本則)へ」…。
 
一見、脈絡のない現象を並べているようですが、いずれも暮らしに関する仕組みや制度、数字(値段そのほか)で、2018年10月1日から変更となったものです。
 
10月は年度(4月から翌年3月)でいえば下半期入りの時期。年度が始まる4月や暦年が始まる1月と並んで、こうした変更や新設が多くなるタイミングなのですね。
 
それらの中で、人が「移動する」ことに絡んでいて、その移動元や移動先に(多少なりとも)経済効果をもたらすことが期待されているもの2点について紹介してみたいと思います。
 
上野慎一

Text:上野慎一(うえのしんいち)

AFP認定者,宅地建物取引士

不動産コンサルティングマスター,再開発プランナー
横浜市出身。1981年早稲田大学政治経済学部卒業後、大手不動産会社に勤務。2015年早期退職。自身の経験をベースにしながら、資産運用・リタイアメント・セカンドライフなどのテーマに取り組んでいます。「人生は片道きっぷの旅のようなもの」をモットーに、折々に出掛けるお城巡りや居酒屋巡りの旅が楽しみです。

まずは「ご当地ナンバープレート」、どんな内容?

まずは、移動しながら経済効果をもたらす「ご当地ナンバープレート(地方版図柄入りナンバープレート)」です。
 
2017年4月3日からラグビーワールドカップ(2019年開催)と、東京オリンピック・パラリンピック(2020年開催)に向けた特別仕様ナンバープレートの交付が開始されています。
 
これを拡大して、地域の風景や観光資源を図柄にしたものが全国41地域で導入されたのです。国土交通省の公表(2018年5月22日ならびに同年9月4日)によれば、要点は次のとおりです。
 
(1)交付開始日
2018(平成30)年10月1日開始。
新車・中古車の購入時はもちろん、現在保有する自動車の車検時などで同じ番号ならいつでも交換が可能(一部、番号変更が必要な場合あり)。
 
(2)料金
地域によって異なるが、中型標板(白黒)で7000円~8000円台(ウェブサイトからの申し込みの場合)。
 
(3)地域の取り組みへの寄付金
料金のほかに寄付金(1000円以上)を支払うとフルカラーの図柄入りナンバープレートが交付され、寄付金は導入地域における交通改善、観光振興などに資する取り組みに活用される。
 
(4)地域の追加
地域の要望を踏まえて、今後、全国17地域を追加(2020年度に交付開始予定)。
 
各地域の図柄は出典のURLで確認できますが、「山形」のさくらんぼ、「鳥取」の大山・砂丘・梨、「鹿児島」の桜島など地域の名産品や名所がイラストであしらわれていて、通常のナンバープレートに比べて格段に高いアピール性を感じます。
 
その地域を訪れた人がみても、そのナンバープレートをつけた車がほかの地域にでかけた場合でも、ナンバープレートが地域の特性や魅力をPRしてくれます。まさに〝走る広告塔〟としての力を発揮する、手軽で親しみやすい地域振興策と考えられます。
 

京都市が初導入ではありませんが、「宿泊税」の現状は……

2つ目は、移動した先で経済効果をもたらす「宿泊税」です。
 
京都市は、一定金額の宿泊料金への課税(特別地方消費税)を、2000年3月31日にいったん廃止しましたが、東京都(2002年10月1日から)と大阪府(2017年1月1日から)がそれぞれ条例を定めて課税をしていることから、京都市もこれに続いたようです。
 
各自治体の課税概要は、次のとおりです。
 

 
京都市では、いろいろと話題を巻き起こした「古都税」(古都保存協力税)以来の新税導入だそうです。
 
一大観光名所として国内外を問わず、多くの観光客が訪れる京都。
 
この宿泊税は、観光スポットの大混雑、公共交通機関や道路の混雑・遅延、宿泊施設の予約困難など「観光公害」とも言われる現象への財源確保策として、外来者に〝利用者負担〟を求めた施策と思われます。
 
金沢市でも2019年4月1日から課税が始まるなど、観光客でにぎわうほかの自治体でも導入の動きが今後も続く模様です。
 

まとめ

図柄入りナンバープレートは、〝走る広告塔〟として地域の住民を巻き込んだいわば「攻め」のポジション。一方、宿泊税は〝利用者負担〟を外来者に求めた、ある種「守り」の施策です。
 
しかし、いずれも比較的少額と思える上乗せ額で、地域の活性化や観光振興を実現させようとしている点では、共通した土壌があるように感じられます。
 
「ふるさと納税」に関して、返礼費用の割合が高かったり、返礼品が地場産品でなかったりする場合に対象外とするような制度の見直しが、ここのところひんぱんに話題にのぼっています。こちらも本来は地域を活性化することが目的の施策ですが、いつの間にか制度の方向性や利活用の実態が変容してしまっている側面を否定できないでしょう。
 
今回紹介した2つの制度も、当初の趣旨や思惑のとおりに運用されていくことを期待したいものです。
 
出典:国土交通省ウェブサイト
ホーム>報道・広報>報道発表資料>つけて走って広げよう、地域の魅力!~地方版図柄入りナンバープレートのデザイン決定~
ホーム>報道・広報>報道発表資料>つけて走って広げよう、地域の魅力!~10月1日より、地方版図柄入りナンバー交付~
京都市公式ウェブサイト トップページ>暮らしの情報>市税>広報資料・お知らせ>宿泊税条例を平成30年10月1日から施行します!
金沢市公式ウェブサイト トップページ > 市税 > 宿泊税
 
Text:上野 慎一(うえのしんいち)
AFP認定者,宅地建物取引士