更新日: 2020.07.14 その他税金

所得の課税方式について その3 分離課税

執筆者 : 浦上登

所得の課税方式について その3 分離課税
次に分離課税について説明したいと思います。
 
分離課税は他の所得と合算しないで、それぞれの所得にそれぞれの税率を掛けて税額を計算する方式です。
 
10種類の所得ごとに大きく考えると、総合課税か、分離課税かに分かれますが、その両方を併せ持つ所得もあります。
 
この記事では、それらについて一つひとつ説明していきます。
浦上登

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。

現在、サマーアロー・コンサルティングの代表。

ファイナンシャル・プランナーの上位資格であるCFP(日本FP協会認定)を最速で取得。証券外務員第一種(日本証券業協会認定)。

FPとしてのアドバイスの範囲は、住宅購入、子供の教育費などのライフプラン全般、定年後の働き方や年金・資産運用・相続などの老後対策等、幅広い分野をカバーし、これから人生の礎を築いていく若い人とともに、同年代の高齢者層から絶大な信頼を集めている。

2023年7月PHP研究所より「70歳の現役FPが教える60歳からの「働き方」と「お金」の正解」を出版し、好評販売中。

現在、出版を記念して、サマーアロー・コンサルティングHPで無料FP相談を受け付け中。

早稲田大学卒業後、大手重工業メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超え、海外の話題にも明るい。

サマーアロー・コンサルティングHPアドレス:https://briansummer.wixsite.com/summerarrow

分離課税の対象となる所得

分離課税の対象となる所得は次の5つです。
 
総合課税の対象となる所得としては「その1」で8つの所得を挙げたので、3種類の所得には総合課税と分離課税の2つの方式が共存していることになります。
 
利子所得、配当所得および譲渡所得では、その所得の内容次第で、総合課税方式もしくは分離課税方式に分類されたり、または納税者の選択によりどちらかを選ぶことが可能です。
 
それに対し、山林所得と退職所得は、分離課税方式のみで総合課税方式はありません。
 

(1)利子所得

預貯金および公社債の利子に加え、合同運用信託、公社債投資信託および公募公社債等運用投資信託の収益の分配に係る所得をいいます(その1で総合課税となるものとして挙げた「国外で支払われる預金等の利子で、源泉徴収されないもの」は、利子所得としてはむしろ例外です)。
 

(2)配当所得

源泉徴収方式のもの、または申告分離方式のものが分離課税の対象となる所得になります(配当所得の課税方式は、それらに総合課税方式も加えた3とおりの中から選択することができます)。
 

(3)譲渡所得

土地・建物等および株式等の譲渡による譲渡所得が分離課税の対象となります(譲渡所得では、土地・建物等および株式等以外の譲渡所得が総合課税の対象です)。
 

(4)山林所得

(5)退職所得

 

利子所得の算出と税額の計算

利子所得の課税方式には、分離課税の例外である源泉分離課税方式が採用されています。
 
利子等の収入金額(源泉徴収される前の金額)が、そのまま利子所得の金額となり、利子等の収入金額に所得税・復興特別所得税15.315%および住民税5%の税率を乗じて算出した税額が源泉徴収されます。
 
これにより納税が完結し、確定申告をすることはできません。
 

配当所得の算出と税額の計算

収入金額(源泉徴収税額を差し引く前の金額)-株式などを取得するための借入金の利子=配当所得の金額
 

1. 源泉徴収を選択した場合

証券会社で源泉徴収ありの特定口座を選択します。そうすると配当金支払時に、所得税15.315%(他に地方税5%)の税率により所得税および復興特別所得税が源泉徴収されます。
 

2. 申告分離課税方式を選択した場合

他の株式の売却益・売却損およびそれらの配当益を損益通算することで、最終的な税額が確定し、配当から源泉徴収された金額の一部または全部が還付されます。
 

譲渡所得の算出と税額の計算

1. 土地・建物等の譲渡による譲渡所得

収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額
 
収用等により土地建物を譲渡したり、マイホームを譲渡した場合には、特別控除額を差し引くことができます。土地・建物の所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得となり、税率が低くなります。
 
(1)長期譲渡所得
課税長期譲渡所得金額×15%
 
(2)短期譲渡所得
課税短期譲渡所得金額×30%
 

2. 株式等の譲渡による譲渡所得

総収入金額(譲渡価額)-必要経費(取得費+委託手数料等)=上場株式等・一般株式等に係る譲渡所得等の金額
 
税率は次のとおりです。
 
上場株式等・一般株式等に係る譲渡所得等(譲渡益)
20.315%(所得税+復興特別所得税15.315%、住民税5%)
 

山林所得の算出と税額の計算

総収入金額-必要経費-特別控除額(最高50万円)=山林所得の金額

山林所得の税額の計算方法は他の所得と異なり、5分5乗方式といわれる方式が採用されています。
 
これは、所得税の超過累進課税方式を緩和させるためのもので、次のように計算します。
 
山林所得の所得税=[課税山林所得金額× 1/5 ×所得税率]×5
 

退職所得の算出と税額の計算

{収入金額(源泉徴収される前の金額)-退職所得控除額}× 1/2 =退職所得の金額
 
退職所得控除額は、次のように計算します。

勤続年数(=A) 退職所得控除額
20年以下 40万円×A(80万円に満たない場合には、80万円)
20年超 800万円+70万円×(A-20年)

※国税庁 「退職金と税」を基に筆者作成
 
退職所得控除は勤務年数が長くなるほど大きくなり、かなり大きな税務的なメリットを受けることができます。
 
退職所得の税額の計算には、所得税の超過累進税率が適用されます。
 
退職所得の金額×所得税率=所得税額
 

まとめ

分離課税の対象となる所得と、所得の算出の仕方、およびそれらの税率について述べてきました。
 
分離課税の場合はそれぞれの所得の特性に応じて税の計算の仕方が異なるので、納税者としてはその大雑把な特徴を捉えておく必要があります。
 
3回の記事をとおして、分離課税のみならず、総合課税や損益通算も含めた税の仕組みが理解いただけたかと思います。
 
税務リテラシーを上げることが、節税にもつながることになるので、税金に関して学んでいくことをお勧めします。
 
参考
国税庁 「退職金と税」
 
執筆者:浦上登
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
 


 

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