更新日: 2021.01.12 控除

会社員でも必要経費が認められるって本当?

執筆者 : 堀江佳久

会社員でも必要経費が認められるって本当?
会社で必要な経費は支払ってくれるのだから、会社員は必要経費(収入を得るために必要な経費)が認められないというように考えている人はいませんか?
 
実は、会社員でも必要経費は認められるのです。具体的には、仕事をするために購入した書籍やスーツ、そして資格取得するための研修費用などは経費として計上できます。
 
この制度を、「特定支出控除」といいます。
 
平成24年度、平成28年度に改正され、控除の範囲や条件などが緩和され、より使いやすいものになっています。
 
ただし、経費として認められる項目が決まっていたり、会社の承認が必要になったりするなどの留意事項があります。また、確定申告が必要になりますので、その手続き方法を知っておかなければなりません。
 
今回は、この「特定支出制度」について詳しく見ていきましょう。
堀江佳久

執筆者:堀江佳久(ほりえ よしひさ)

ファイナンシャル・プランナー

中小企業診断士
早稲田大学理工学部卒業。副業OKの会社に勤務する現役の理科系サラリーマン部長。趣味が貯金であり、株・FX・仮想通貨を運用し、毎年利益を上げている。サラリーマンの立場でお金に関することをアドバイスすることをライフワークにしている。

特定支出控除とは

給与所得者が下記1〜7の特定支出をした場合、その年の特定支出の額の合計額が、その年中の給与所得控除額(表1参照)の2分の1を超えるときは、確定申告により、給与所得控除をした後の所得金額から超えた金額を差し引くことができます。
 
ただし、下記7つの特定支出は、いずれも給与支払者が証明したものに限ります。
 

7つの特定支出
  • 1 一般の通勤者として通常必要であると認められる通勤のための支出(通勤費)
  • 2 勤務する場所を離れて職務を遂行するための、直接必要な旅行のために通常必要な支出(職務上の旅費)
  • 3 転勤に伴う転居のために通常必要であると認められる支出(転居費)
  • 4 職務に直接必要な技術や知識を得ることを目的として、研修を受けるための支出(研修費)
  • 5 弁護士、公認会計士、税理士など職務に直接必要な資格を取得するための支出(資格取得費)
  • 6 単身赴任などの場合で、その者の勤務地または居所と自宅の間の旅行のために通常必要な支出(帰宅旅費)
  • 7 次の(1)〜(3)の支出(その支出の額の合計額が65万円を超える場合には、65万円までの支出に限る)で、その支出がその者の職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者より証明がされたもの(勤務必要経費)
(1)書籍、定期刊行物その他の図書で職務に関連するものを購入するための費用(図書費)
(2)制服、事務服、作業服その他の勤務場所において着用することが必要とされる衣服を購入するための費用(衣服費)
(3)交際費、接待費その他の費用で、給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者に対する接待、供応、贈答その他これらに類する行為のための支出(交際費等)

 
(国税庁「確定申告書等作成コーナー よくある質問/給与所得者の方で特定支出控除を適用される方へ」から抜粋(※1))


 

控除を受けるための手続き

特定支出控除の適用を受けるためには、確定申告が必要です。
 
具体的には、確定申告書等にその適用を受ける旨、および特定支出の額の合計額を記載するとともに、特定支出に関する明細書及び給与等の支払者の証明書を添付して税務署に申告する必要があります。
 
また、確定申告書等の提出にあたっては、特定支出に係るその支出の事実およびその金額を証する書類(領収証等)を添付するか、またはその提出の際に提示しなければならないこととされています。したがって、領収証等については確定申告の際に必要であることから、保存しておく必要があります。
 
なお、明細書等の様式は、国税庁ホームページ(※2)からダウンロードできますし、税務署に用意してあるものを使っても構いません。ご質問・ご不明な点がありましたら、最寄りの税務署に行くか、税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。
 

(※1)国税庁「確定申告書等作成コーナー よくある質問/給与所得者の方で特定支出控除を適用される方へ」

(※2)国税庁ホームページ

(出典)
国税庁「No.1415 給与所得者の特定支出控除」
国税庁「No.1410 給与所得控除」
国税庁「〜給与所得者の特定支出控除について〜 (平成25年分の所得税から適用)」
 

執筆者:堀江佳久
ファイナンシャル・プランナー