更新日: 2021.02.05 控除

妊娠・出産でかかったお金は、どこまで医療費控除の対象となるの?

執筆者 : 大竹麻佐子

妊娠・出産でかかったお金は、どこまで医療費控除の対象となるの?
家族が増えたことで幸せを感じる一方、経済的負担や責任を重く感じている方も多いことでしょう。妊娠・出産に関する費用は、何かと大きな出費となります。1年間に支払った医療費は所得控除として確定申告をすることで、税負担を下げることが可能です。
 
今回は、控除の対象となる費用かどうか悩みがちな妊娠・出産に関わる「医療費控除」についてお伝えします。
大竹麻佐子

執筆者:大竹麻佐子(おおたけまさこ)

CFP🄬認定者・相続診断士

 
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表
証券会社、銀行、保険会社など金融機関での業務を経て現在に至る。家計管理に役立つのでは、との思いからAFP取得(2000年)、日本FP協会東京支部主催地域イベントへの参加をきっかけにFP活動開始(2011年)、日本FP協会 「くらしとお金のFP相談室」相談員(2016年)。
 
「目の前にいるその人が、より豊かに、よりよくなるために、今できること」を考え、サポートし続ける。
 
従業員向け「50代からのライフデザイン」セミナーや個人相談、生活するの観点から学ぶ「お金の基礎知識」講座など開催。
 
2人の男子(高3と小6)の母。品川区在住
ゆめプランニング笑顔相続・FP事務所 代表 https://fp-yumeplan.com/

何かと出費がかさむ妊娠・出産

妊娠・出産は病気ではないことから、公的医療制度である健康保険の対象外となり、診療や検査は基本的に自己負担となります。
 
ただし、お財布事情によって受けるべき検診や検査を受けられない状況を回避するため、最近では、自治体による助成や健康保険からの一時金・手当などが充実してきました。
無料チケットでの受診や後で戻ってくる仕組みは、何かと出費がかさむ妊娠・出産世帯には助かる制度でしょう。
 

医療費控除~確定申告で税金が戻ってくる

1月1日から12月31日までの1年間で支払った医療費が一定額を超えた場合には、その負担を軽減するために「医療費控除」を受けることができます。これは所得控除の1つであり、収入から差し引くことで、税額計算の基となる課税所得金額が下がり、結果として所得税の負担や翌年の住民税の負担が低くなります。
 
医療費控除を受ける場合には、医療費を支払った翌年の2月16日から3月15日の間に確定申告をする必要があります。自営業の方や確定申告をする予定の方は、期間内に申告を済ませましょう。(※令和2年度分は新型コロナの影響で期間が2月16日から4月15日までに変更)
 
会社員や公務員の方も、年末調整では医療費控除ができないため、確定申告することで税金が戻ってきます。確定申告のうち税金の還付のみの申告(還付申告)は、医療費を支払った年の翌年1月1日から申告ができます。申告し忘れてしまった場合でも、5年間さかのぼることが可能です。必要書類や申告方法は、確定申告と同じです。
 
医療費控除は、あくまでも税負担の軽減であるため、申告した金額が戻ってくるわけではありませんので、誤解しないようにしましょう。
 

医療費控除の対象となる費用とならない費用

一概に医療費といっても、控除の対象となる費用とならない費用があり、「面倒くさい」と申告を諦めてしまうケースも見受けられます。判断の基準として「医師等の診療等を受けるため直接必要なもので、かつ、通常必要なものであること」と考えると、判断しやすいかもしれません。
 
具体的な例として、図表1を参考にしてみてください。
【図表1】


 
入院中の食事代などは、入院費用の一部として病院に支払われるため「医療費控除」の対象です。月あたりの医療費負担が上限額を超えた場合に、超えた額が支給される公的医療保険の「高額療養費制度」とは対象が異なります。
 

医療費控除の対象となる金額

医療費控除額の計算は、図表2のとおりです。
 
【図表2】


 
保険金などで補てんされる金額は、その給付の目的となった医療費の金額を限度として差し引きますので、該当の医療費を超える保険金が生じた場合であっても他の医療費からは差し引くことができません。
 
1年間で支払った医療費とは、納税者自身だけでなく、同じ世帯(生計を一にする配偶者やその他親族を含む)のために支払った医療費を合算することができます。
 
診療を受けた方の氏名、病院(薬局)名、金額など必要事項を記載した明細書を提出することで、領収書の提出は不要となりますが、領収書は5年間保存する必要があります。
 
また、通院費用については領収書のないものが多いのですが、家計簿などに記録するなどして、実際にかかった費用について明確に説明できるようにしておきましょう。
 

まとめ

妊娠・出産に際しても何かと出費がかさみ、今後もお金の心配は尽きないものですが、公的制度や税制優遇をうまく活用することで、お金をコントロールしていきたいですね。収入が思うように増えない時代のなかで、支出を確保するためには、賢く税負担を抑えることも選択肢かもしれません。
 
[出典]
国税庁「No.1124 医療費控除の対象となる出産費用の具体例」
国税庁「申告所得税、贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付期限を令和3年4月15日(木)まで延長します」
 
執筆者:大竹麻佐子
CFP🄬認定者・相続診断士
 

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