更新日: 2021.11.01 年収

主婦の働き方改革 日本と韓国の年収で比較する配偶者控除の違いとは

執筆者 : 黄泰成

主婦の働き方改革 日本と韓国の年収で比較する配偶者控除の違いとは
日本では、2018年から配偶者控除が受けられる年収が「103万円以下」から「150万円以下」に引き上げられます。これにより、主婦がパートやアルバイトで働く時間が増えるかもしれません。もし、そうなれば家計の可処分所得が増えることで、景気浮揚策になると期待されます。

しかし、そもそも日本の配偶者控除や社会保険は他国と比べてどうなのでしょうか。日本とお隣の国、韓国の事情を見てみると主婦が家計の一翼を担う重要性は近いものがあります。そこで、配偶者控除の制度につき、韓国がどのようになっているかを紹介したいと思います。(なお、説明の便宜上、韓国ウォンの金額は、1円=10ウォンと仮定して円換算額とします)
黄泰成

執筆者:黄泰成(こう たいせい)

公認会計士(日本)

スターシア・グループ代表
慶応義塾大学経済学部卒業後、大手監査法人へ入社し、アトランタや韓国での駐在を経験。
2007年、日本に韓国ビジネス専門のコンサルティング会社(株式会社スターシア)を、
韓国に株式会社スターシア・コンサルティング(現)を韓国初の日本資本の会計事務所として設立。2017年にグループ会社として、韓国に税務法人スターシアを設立。
「日本の会計士として日系企業の期待を充分に汲取り、その期待を超え続けるサービスを提供する」という考えのもと、日系企業による韓国ビジネスの成功をサポートしている。

配偶者控除の金額

日本では、夫の年収によって配偶者控除の金額は異なります。夫の年収(給与収入)が1,120万円以下かつ妻の年収が150万円以下であれば、38万円の配偶者控除を受けることができます。夫の年収が1,220万円を超えると、妻の年収がいくらであれ配偶者控除を受けることができません。
 
一方、韓国では夫の年収の如何に関わらず、15万円の配偶者控除を受けることができます。
 
この控除を受けるためには、妻の所得金額合計が10万円以下という条件を満たす必要があります。これは給与所得控除後の金額のため、日本の「103万円の壁」的にいうと、年収「50万円の壁」とでも言えると思います。韓国の物価水準はほぼ日本と同じなので、年収50万円というのはとても低い水準に思われます。
 
したがって、妻がパートで働いていたら、配偶者控除は対象外と割り切って考える必要がありそうです。ただし、ここでいう「所得金額合計」には、分離課税される所得は含まれません。分離課税される所得のうち「日雇勤労所得」というものがあります。働いた時間に応じて勤労対価が計算される所得のことをいいます。
 
であれば、パートやアルバイトはこの「日雇勤労所得」に該当し、配偶者控除の要件とは関係ないと考えられそうです。しかし、「日雇勤労」とは勤労契約によって3ヶ月以内の雇用という定義付けがされていますので、単発のアルバイトなら当てはまりますが、スーパーや飲食店での普通のパートは該当しません。
 
結局、韓国では妻が働けば配偶者控除は受けることができない、ということになります。
 

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社会保険も見逃せない

103万円の壁が150万円に拡大したといっても、所得税だけでなく社会保険も考慮して考えなければなりません。
 
日本で社会保険加入の義務対象となるのは、事業者によって変わりますが概ね年収110万円前後程度からです。したがって、103万円の壁がなくなったからといって働き時間を増やすと、社会保険加入によりかえって手取り金額が少なくなってしまう可能性が発生します。
 
一方、韓国では、1ヶ月の勤務時間が60時間以上となれば社会保険に加入しなければなりません。時給900円として、1ヶ月5万4000円の給料水準で社会保険の加入が義務付けられるので、日本と比べると厳しい印象を受けます。
 

働き方に対する影響

このように、韓国では妻が少しでも働けば、配偶者控除を受けることができず、また、妻自身が社会保険に加入しなければなりません。逆に言えば、一旦働きに出れば日本のように収入をコントロールして税務メリット等を享受するという誘因がないことにもなります。
 
政府統計によると、2016年の共働世帯数率は、日本が約63%、韓国が約45%となっています。
 
妻の就業に関する制度が優しくない影響なのか、統計の取り方が異なるためか、理由は正確には分かりませんが、日本の共働世帯比率が韓国をはるかに上回っているのは予想外です。
 
「働き方改革」という言葉が最近流行っていますが、主婦のパートのあり方もそれに含まれていると思います。配偶者控除の枠があることは専業主婦がアルバイトをすることを促すかもしれませんが、すでに働いている人にとっては働く時間を必要以上に制御する誘因になっているとも考えられます。夫が働き、妻が家を守る的な発想の配偶者控除制度は、時代に合わなくなっているかもしれません。
 
Text:黄 泰成
公認会計士(日本)、スターシア・グループ代表