更新日: 2023.02.27 控除

「医療費控除」ってそんなに意味ある?「年収別」に節税額を解説

執筆者 : 佐々木咲

「医療費控除」ってそんなに意味ある?「年収別」に節税額を解説
医療費控除は税金を抑えることができるお得な制度ですが、なかには「確定申告が面倒だから」と申請を見送ってしまう人もいるかもしれません。
 
本記事では、医療費控除によって節税できる金額を年収別に解説し、医療費控除にどれだけメリットがあるのかを解説していきます。
佐々木咲

執筆者:佐々木咲(ささき さき)

2級FP技能士

医療費控除とは

まずは医療費控除について簡単に解説します。
 
医療費控除とは、所得税を計算する際の所得控除の1つで、所得税の対象になる課税所得を減らす効果があります。
 
例えば、課税所得300万円の人が医療費控除20万円を受けるとすると、課税所得は300万円-20万円=280万円となり、30万円に対する所得税を節税することができるのです。
 

医療費控除の金額

医療費控除の金額は、支払った医療費が全額そのまま対象となるわけではありません。実際には、以下の計算式で算出した金額となります。
 
医療費控除の金額=(1月1日から12月31日までに支払った医療費の合計-保険金などで補てんされた金額)-10万円
 
算式の最後で10万円が差し引かれていることから見て取れるとおり、医療費控除が受けられるのは医療費の合計が10万円を超えた年に限られます。ただし、その年の総所得金額等が200万円未満の場合は、この10万円が「総所得金額等×5%」の金額にかわります。転職や退職した年などによって収入が一時的に減少する年には、医療費の合計が10万円未満でも控除を受けられる可能性があるため注意が必要です。
 

節税できる所得税は「医療費控除の金額×所得税率」

医療費控除による節税額は、「医療費控除の金額×所得税率」となります。つまり、医療費の合計と所得税率が分かれば、簡単に節税額が計算できるのです。所得税率は累進税率となっており、少しややこしいですが図表1のとおり、課税所得に応じて税率が決まっています。
 
図表1

国税庁 No.2260 所得税の税率
 
課税所得とは給与などの所得から所得控除を差し引いた残額のことで、会社員の場合は年末調整後の源泉徴収票で簡単に確認することができます。
 
図表2のマルの「1」からマルの「2」を差し引いた金額が課税所得です。例えば、「1」が400万円、「2」が200万円だった場合の課税所得は200万円であることから、図表1にあてはめると所得税率は10%ということになります。
 
図表2

国税庁 [手続名]給与所得の源泉徴収票(同合計表)
 

【目安】年収別の節税額

年収別における所得税率の目安は、以下の通りです(課税所得は、同じ年収であっても所得控除の金額によって左右されることから、年収だけで所得税率を断定することはできないので、あくまでも目安であるという点に注意してください)。

●年収400万円以下:5%
●年収500~600万円以下:10%
●年収700~1000万円以下:20%

例えば、医療費の合計が30万円だった年の医療費控除の金額は、30万円-10万円=20万円となり、年収別の節税額は以下のとおりとなります(実際の金額は状況等によって異なります)。

●年収400万円以下:20万円×5%=1万円
●年収500~600万円以下:20万円×10%=2万円
●年収700~1000万円以下:20万円×20%=4万円

 

まとめ

今回は医療費控除の基本と節税額の計算方法について解説しました。医療費控除によって節税できる金額は、「医療費控除の金額×所得税率」で計算することができます。ただ、所得税は累進税率となっているため、自身の税率を把握する必要がある点に注意しましょう。
 
もし手続きが面倒で申請を迷っている場合には、ここで解説したポイントを踏まえてご自身が医療費控除によってどれくらい節税できるかを概算し、控除のメリットを今一度確かめてみてはいかがでしょうか。
 

出典

国税庁 No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)
国税庁 No.2260 所得税の税率
国税庁 [手続名]給与所得の源泉徴収票(同合計表)
 
執筆者:佐々木咲
2級FP技能士