更新日: 2023.03.14 確定申告

【確定申告】「青色申告」と「白色申告」はどう違うの? 税負担を軽減できるのはどっち?

執筆者 : 辻章嗣

【確定申告】「青色申告」と「白色申告」はどう違うの? 税負担を軽減できるのはどっち?
フリーランスや個人事業主などで前年(1月1日から12月31日)に所得がある方は、2月16日から3月15日までの間に確定申告を行い、所得税を納める必要があります。
 
一般的な会社員などで給与収入のみの方は勤務先が税務処理をしてくれるため、年末調整を行うことで確定申告の必要はありませんが、副業で給与以外の所得が20万円を超える場合などでは確定申告が必要です。
 
個人事業主などが行う確定申告の方法には、青色申告と白色申告の2つがあります。今回は、青色申告と白色申告の制度と税負担の違いについて解説します。
辻章嗣

執筆者:辻章嗣(つじ のりつぐ)

ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

元航空自衛隊の戦闘機パイロット。在職中にCFP(R)、社会保険労務士の資格を取得。退官後は、保険会社で防衛省向けライフプラン・セミナー、社会保険労務士法人で介護離職防止セミナー等の講師を担当。現在は、独立系FP事務所「ウィングFP相談室」を開業し、「あなたの夢を実現し不安を軽減するための資金計画や家計の見直しをお手伝いする家計のホームドクター(R)」をモットーに個別相談やセミナー講師を務めている。
https://www.wing-fp.com/

青色申告と白色申告の制度の違いとは

青色申告を新たに選択する場合は納税地を所轄する税務署に対して、その年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を提出する必要がありますが、白色申告では申請は必要ありません(※1、2)。
 
また、青色申告では貸借対照表と損益計算書の提出が求められており、「複式簿記」などで帳簿を管理する必要がありますが、白色申告では収入金額や必要経費に関する日々の取引状況が記載された「単式簿記」でいいこととされています。
 
帳簿の保存期間は、青色申告が原則として7年間であることに対して、白色申告は原則として5年間となっています。
 
図表1

申告区分 青色申告 白色申告
事前申請 「青色申告承認申請書」を提出 事前申請は不要
帳簿管理 複式簿記など 単式簿記
書類の保存期間 原則7年 原則5年

※国税庁ホームページを基に筆者作成
 

青色申告と白色申告の税負担の違い

 

1. 青色申告のメリット

青色申告を選択すると、次のようなメリットがあります。
 
(1)青色申告特別控除
以下の要件を満たしている方は、55万円の控除を受けることができます(※3)。


・不動産所得または事業所得を得るための事業を営んでいること

・上記の所得に係る取引を複式簿記など、正規の簿記の原則により記帳していること

・上記の記帳に基づいて作成した貸借対照表および損益計算書を確定申告書に添付し、その年の確定申告期限(翌年の3月15日)までに当該申告書を提出すること

また、55万円の特別控除を受ける要件を満たしている方が、次のいずれかに該当する場合は控除額が65万円になります。


・その年分の事業に係る仕訳帳および総勘定元帳について、電子帳簿保存(コンピュータ作成の帳簿書類を紙に出力せず、ハードディスクなどに記録した電子データのままで保存)を行っていること

・その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表および損益計算書などの提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと

 
(2)青色事業専従者給与の特例
青色申告者が経営する事業に従事する配偶者や、その他の親族に支払われる給与は原則として必要経費にはなりませんが、以下の要件を満たす場合は「青色事業専従者給与」として、その全額を必要経費とすることが認められています(※4)。


(ア)次の要件のいずれにも該当する青色事業専従者に支払われた給与であること

・青色申告者と生計を一にする配偶者、その他の親族である
・その年の12月31日現在で年齢が15歳以上である
・その年を通じて6ヶ月を超える期間、その青色申告者の営む事業に専ら従事している
 
(イ)「青色事業専従者給与に関する届出書」を所轄の税務署長に提出していること
(ウ)届出書に記載されている方法によって支払われ、かつ、その記載された金額の範囲内であること
(エ)青色事業専従者給与の額は、労務の対価として相当であると認められる金額であること

 
(3)貸倒引当金の計上
事業所得を得るための事業を営む青色申告者は、その事業の売掛金や貸付金などの貸倒れによる損失の見込額として、年末における貸金の帳簿価格の一定割合の金額を貸倒引当金勘定に繰り入れ、必要経費として処理することができます(※1)。
 
(4)純損失の繰り越しと繰り戻し
事業所得などに損失(赤字)がある場合で、損益通算の規定を適用しても控除しきれない金額(純損失の金額)があるときは、その損失の一定割合の額を翌年以降3年間にわたり繰り越して、各年の所得額から控除することができます。
 
また、前年も青色申告をしている場合、純損失を繰り越すことなく、その損失額を生じた年の前年に繰り戻して、前年の所得税の還付を受けることも可能です(※1)。
 

2. 白色申告の特徴

青色申告と異なるポイントとして、白色申告の場合は以下のような特徴があります。
 
(1)特別控除を受けられない
青色申告者は一定の要件を満たすことで前述のとおり、55万円または65万円の特別控除が認められています。さらに、これらの要件に該当しなくても10万円の青色申告特別控除が受けられますが、白色申告には特別控除がありません。
 
(2)事業専従者控除に限られる
青色申告者が営む事業に従事する配偶者、その他の親族に支払われる給与は、一定要件を満たすと全額を必要経費にできます。
 
白色申告者の場合、事業に従事する配偶者やその他の親族に支払われる給与については、「事業専従者控除」として次の(ア)または(イ)のいずれか低い額を控除することができます(※4)。


(ア)事業専従者が配偶者の場合は86万円、配偶者でなければ専従者1人につき50万円
(イ)この控除を行う前の事業所得などの金額を専従者の数に1を足した数で割った金額

なお、白色事業専従者控除を受けるためには、次の要件のいずれにも該当する事業専従者がいることが必要です。


・白色申告者と生計を一にする配偶者、その他の親族である
・その年の12月31日現在で年齢が15歳以上である
・その年を通じて6ヶ月を超える期間、白色申告者が営む事業に専ら従事している

まとめ

個人事業主などは、確定申告により所得税を納付する必要があります。確定申告の方法には青色申告と白色申告の2種類があり、青色申告の方が白色申告と比べて税負担を大幅に軽減できます。
 
青色申告では、複式簿記など一定の要件を満たす記帳を行う必要がありますが、市販の会計ソフトなどを使用することで比較的容易に処理することが可能です。
 
なお、白色申告から青色申告に変更するためには、その年の3月15日までに税務署へ青色申告承認申請書を提出する必要がありますので、計画的に準備することをお勧めします。
 

出典

(※1)国税庁 No.2070 青色申告制度
(※2)国税庁 No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度
(※3)国税庁 No.2072 青色申告特別控除
(※4)国税庁 No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除
 
執筆者:辻章嗣
ウィングFP相談室 代表
CFP(R)認定者、社会保険労務士

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