更新日: 2019.03.12 その他暮らし

85.3%の会社が副業を推進していない現状 副業が当たり前になる日はくるのか

執筆者 : 北山茂治

85.3%の会社が副業を推進していない現状 副業が当たり前になる日はくるのか
将来独立して開業をしたいと考えている方も多いと思います。

けれども、急に会社をやめて、すぐに開業するのはだいぶリスクを伴うものです。

会社に勤めている間に、次にやりたい仕事の経験を積むことができれば、リスクもだいぶ軽減されることでしよう。
北山茂治

Text:北山茂治(きたやま しげはる)

高度年金・将来設計コンサルタント

1級ファイナンシャルプランニング技能士、特定社会保険労務士、健康マスターエキスパート
大学卒業後、大手生命保険会社に入社し、全国各地を転々としてきました。2000年に1級ファイナンシャルプランニング技能士資格取得後は、FP知識を活用した営業手法を教育指導してきました。そして勤続40年を区切りに、「北山FP社会保険労務士事務所」を開業しました。

人生100年時代に、「気力・体力・財力3拍子揃った、元気シニアをたくさん輩出する」
そのお手伝いをすることが私のライフワークです。
ライフプランセミナーをはじめ年金・医療・介護そして相続に関するセミナー講師をしてきました。
そして元気シニア輩出のためにはその基盤となる企業が元気であることが何より大切だと考え、従業員がはつらつと働ける会社を作っていくために、労働関係の相談、就業規則や賃金退職金制度の構築、助成金の申請など、企業がますます繁栄するお手伝いをさせていただいています。

HP: https://www.kitayamafpsr.com

副業の現状

副業を希望する方は年々増加傾向にあります。その理由は、「副業が自分のやりたい仕事である」「スキルアップしたい」「収入を増やしたい」などです。
 
副業の形態もまた、正社員、パート、アルバイト、会社役員、起業による自営業などさまざまです。
 
ただ、中小企業庁の「平成26年度兼業・副業に係わる取組実態調査事業」によると、現在のところ85. 3%の企業では副業を認めていませんし、それ以外の企業も容認はしていますが、推進しているわけではありません。
 

判例

副業に関する裁判例として有名なのが、十和田運輸事件(東京地裁平成13年6月5日)です。運送企業の運転手が年に1、2回の貨物運送のアルバイトをしたことを理由とする解雇に関して、職務専念義務の違反や信頼関係を破壊したとまでいうことはできないため、解雇無効とした事案です。
 
判例では、「労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であり、企業がそれを制限することは基本的には許されない」となっています。企業側に許されるのは、労務提供上の支障となる場合、企業秘密を漏洩する場合、企業の名誉信用を破壊する行為がある場合、競合により企業の利益を害する場合です。
 

企業側のメリット・留意点

従業員が副業を行うことは、企業側にもメリットがあります。
 
まず、労働者が社内では得られない知識・スキルを獲得できることです。そして、第2に労働者の自立性・自主性を促すことができること。第3は、優秀な人材の獲得・流出の防止ができ、競争力が向上すること。第4として、労働者が社外から新たな知識・情報や人脈を入れることで、事業機会の拡大につながることです。
 
企業側が留意しなければならない点は、必要な労働時間の把握と管理が必要なことです。(過度の労働とならないように配慮が必要です)次に、従業員の健康管理への対応。(健康障害が生じないように配慮が必要です)3つ目としては、秘密保持義務・競合避止義務をどう守らせるか、対策が必要になります。
 

労働者のメリット・留意点

労働者側のメリットとしては、離職せずにスキルや経験を積めて、キャリア形成できることです。そして、所得が増加すること。小さなリスクで将来の起業・転職に向けた準備や試行ができることです。
 
労働者側の留意点としては、まず第1に就業時間が長くなるので、自身による就業時間の管理や健康の管理が必要になります。
 
第2に、秘密保持義務・競合避止義務を意識する必要があること。
 
第3に、1週間の所定労働時間が短い業務を複数行う場合は、雇用保険の適用がない場合があるので注意しなければなりません。(ある労働者がA事業所で週15時間、B事業所で10時間の計25時間働いても、いずれの事業場でも20時間未満であるため雇用保険の適用がありません)
 
第4として、厚生年金保険と健康保険の適用要件は事業所ごとに判断するため、複数の事業所で勤務する場合、いずれの事業でも適用要件を満たさない場合は適用されないということ。最後に、第5として、労災保険の給付で副業をしている企業で労災事故があった場合、副業先の収入のみを算定基礎としますので補償が少なくなる場合があることです。
 

結び

上記の労働者の留意点第3から第5をみると、副業については法整備が必要なところがまだまだあります。
 
しかし、厚生労働省のモデル就業規則も、平成30年1月に副業を認める内容に変更しています。そのような変化を考えると、企業としても今後は、原則副業を認める方向で就業規則を変更する必要があるのではないでしょうか。
 
定年も60歳から65歳に移行しようとしていますし、企業としても70歳まで働く環境を整えつつある現在、1つの企業で50年近く働くということは少々無理があるのではないかと思います。
 
ある企業から、異種の才能のある人材が旅立ち、そして他の企業からその企業に必要な才能のある人材が入ってくる。または企業から独立して、フリーランスとして活躍する。逆に、フリーランスでの才能が買われて企業に入社する。そんな時代がすぐそこまで来ています。
 
出典:
中小企業庁「平成26年度兼業・副業に係わる取組実態調査事業」
厚生労働省「副業・兼業の促進に関するガイドライン」
 
Text:北山茂治(きたやま しげはる)
高度年金・将来設計コンサルタント

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