2017.07.04相続

相続税の還付。申告を急ぎ、払い過ぎた際に可能

Text : 黒木 達也

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相続税を支払うことは、長い人生でそう何度もあるわけではありません。そのため、つい申告額を間違え多く払い過ぎてしまうケースがあります。相続税を含め、すべての税金は「申告納税」が建前のため、極端な過少申告の際は、税務調査を受け追徴されるケースもありますが、その逆となる過大申告をしたケースでは、そのまま放置され取り戻せないことになります。

申告期限は以外に早く来る

相続税の申告は、人生でもそう何度もあるわけではありません。そのために、申告を間違えて過大に申告してしまうことが多々あります。その原因はいくつかあります。それを考えてみましょう。
その第1は、納税申告までの期限が以外に早いことです。申告期限は、被相続人の死後10ヵ月以内ですが、この期間は以外に短いのです。葬儀や49日の法要などの後始末に追われていると、3ヵ月程度はすぐに経過します。それが過ぎてから、相続税申告の準備に追われることになります。
その際に、相続人の人数が多い、相続人同士で意見が対立し最終的に合意形成ができない、などの条件が重なると、最終決着までは容易ではありません。財産目録や遺産分割の協議書の作成などには、結構時間がかかります。その間に10ヵ月の申告期限が来てしまうと、詳しく精査もせずに納税申告書が完成します。そのために初歩的な計算ミスを含め、実際より納税額の多い申告書を提出する結果になります。

税理士でも相続税は難しい

その第2は、税理士に一任しているから安心、というわけにもいかないことです。これは以外と思われる人が多いと思います。確かに一般の人と比較すれば、税理士は税務知識が豊富です。しかし、依頼した税理士が相続税に精通していれば別ですが、「相続税が専門」という税理士は以外にも少ないからです。
これまでは相続をした人でも、実際に相続税の申告と納税をする人が少なかったことも影響しています。税理士の中にも、実際の申告業務に立ち会うことが、年に1回程度だったという人が多いことも事実です。相続税制が変わり、最近では相続税を納税する人が増えたことで、こうした傾向は改善されると思われます。
相続制度改正も毎年行われます。基礎控除額の変更、小規模宅地の特例の対象面積の変更といった細かい改正が逐次実施されており、これらの知識を身につけておく必要があります。制度改正に加えて、さらに細かい通達がいくつもあります。こうした変更を見落としてしまうと、実際の納税額の計算を間違えてしまう危険が高くなります。結果として、もし複数の税理士に依頼すると、評価額や納税額が異なるケースも出てきます。

土地を過大に評価する危険

その第3は、相続財産で比重の高い土地の評価を間違えやすいことです。金融資産の場合は、預金であれ株式であれ、評価額を算定することはそれほど難しくありません。税理士に依頼しなくても、相続人だけで金融資産の算定できるかもしれません。
しかし土地は事情が異なります。とくに都市部では、宅地評価の基本は「路線価」という、道路に面している部分が一定以上ある形状が整った土地の価格です。宅地でない場合は別の基準で算定されます。宅地を含め土地の場合は、その形状などにより評価額が下がり、相続税が減額される場合が多々あるからです。
土地については、その形状や高低差、公道との接し方などにより減額対象になりますが、それぞれ事情が異なります。また、すべてに所有権があれば問題は少なくて済みますが、地上権や借地権が設定されていると、評価額の算定がさらに複雑になります。

土地の評価額が下がるケース

土地の評価に関しては、次のような形状である場合は、評価額が確実に下がります。自分の相続する土地を実際に見て確認し、税理士にその内容を伝えておくと、税理士も注意して計算します。 
具体的には、①道路に接している間口が狭い、②三角形や細長い長方形など形状が悪い、③傾斜地や一部が崖になっている、④一部が私道として使用されている、⑤高圧線が上空を通過している、⑥都市計画の対象となっている、⑦鉄道の線路と隣接している。⑧川や水路に面している、⑨工場や墓地に接している、⑩土壌汚染が確認される、などです。
こうした条件の土地は、通常の比べ評価額が低くなります。こうした条件が複数重なっていればさらに低くなります。こうした条件を見落とし、通常の土地と同じ基準で計算すると、結果として過大申告となり、相続税を多く納める結果になります。

相続税の還付には「更生の請求」を

もし相続税を払い過ぎていることがはっきりした場合には、支払った相続税を取り戻すための手続きが必要です。口頭で税務署に伝えただけでは、支払った相続税は返還してもらえません。相続税を取り戻すためには「更生の請求」が必要になります。この手続きを法定の申告期限の日(被相続人の死後10ヵ月後)から計算して、5年以内に行う必要があります。以前はこの期限が1年以内でしたが、しばらく経ってから気づく人も多かったため、この期間は延長されました。
「更生の請求」に関しては、所定の更生請求書に記入し、併せて土地の評価額が低くなるなど、請求理由の基礎となる事実を証明する書類を添付する必要があります。もし過大申告した際に依頼した税理士がいたとしても、この更生の手続きに関しては、土地の評価に詳しい不動産鑑定士か、別の税理士に書類を作成してもらうのが賢明と思われます。

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黒木 達也

Text:黒木 達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト。大手新聞社出版局勤務を経て現職