更新日: 2019.01.10 厚生年金

年金受給開始を遅らせるのはメリットがあるの? その前に確認が必要です

年金受給開始を遅らせるのはメリットがあるの? その前に確認が必要です
本来なら65歳からもらえる老齢年金を60歳からと支給開始時期を前倒し(繰上)すると、減額した金額が一生続き、逆に余裕があるから70歳からにとすると、一生涯増えた金額がもらえることはよく聞く話です。の方に「ちょっと待った!」です。
柴沼直美

Text:柴沼直美(しばぬま なおみ)

CFP(R)認定者

大学を卒業後、保険営業に従事したのち渡米。MBAを修得後、外資系金融機関にて企業分析・運用に従事。出産・介護を機に現職。3人の子育てから教育費の捻出・方法・留学まで助言経験豊富。老後問題では、成年後見人・介護施設選び・相続発生時の手続きについてもアドバイス経験多数。現在は、FP業務と教育機関での講師業を行う。2017年6月より2018年5月まで日本FP協会広報スタッフ
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単純に1.42倍になって嬉しいだけではない

 
それぞれ一月あたり0.5%のマイナス、0.7%のプラスになりますから、60歳から受け取ると0.5%×12カ月×60=30%、70歳から受け取ると0.7%×12カ月×60(5年)=42%が上乗せ分です。
ならば、今仕事をしているし、70歳まで引き延ばして1.42倍にして受け取るとお考えになるのは当然でしょう。
 
しかし、せっかくもらえるものならしっかりいただきましょう、ということで1.42と引き換えに放棄してしまう権利が発生する可能性をお見逃しなく、それが加給年金です。
 

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繰下(受給開始を先延ばし)をすると「加給年金」がもらえなくなる

 
サラリーマンだった期間が20年以上あって、妻(850万円の年収制限あり)、高校卒業までの子どもがいる場合、妻が65歳になって自分の年金をもらえるまで、子どもが高校を卒業するまで期間限定で上乗せされる家族手当的なものです。どれだけ上乗せされるかというと配偶者の場合22万4,300円、子ども2人目まで1人につき22万4,300円、3人目からは7万4,800円(いずれも平成29年度現在)です。
 
さらに配偶者の場合、特別加算が生年月日に応じてつきます。例えば昭和18年4月2日生まれの場合は38万9,800円(平成29年度)。子または配偶者の要件として、将来にわたり年収850万円以上の収入がえられないと認められることというのがあります。たくさん給料をもらっている妻がいる場合は不要、という意味です。
 
この魅力的な家族手当である加給年金額は、老齢厚生年金とのセットでもらえるようになってから、妻が自分の年金をもらう原則65歳までの間になりますが、繰り下げたからといって、増額されるのは厚生年金だけです。
 
しかも妻が65歳までの期間限定なので、安易に繰り下げすると結局もらい損ねてしまう可能性があります。日本年金機構にも「加給年金額(配偶者加給年金、子の加給年金)は、繰下げしても増額されません。また、繰下げ待機期間中は、加給年金部分のみを受けることはできません。」と明示されています。繰り下げ申請は損得を計算してからでも遅くありません。

Text:柴沼 直美(しばぬま なおみ)
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者
日本証券アナリスト協会検定会員、MBA(ファイナンス)、
キャリアコンサルタント、キャリプリ&マネー代表

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