そこでここでは、住宅ローンの金利タイプについてくわしく知りたい方のために、住宅ローンの変動金利について、適用金利の決め方の仕組みや、返済金額見直しのルールを解説します。
また、変動金利のメリットや変動金利を選択する際に注意するべきポイントも紹介しますので参考にしてください。
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監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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住宅ローンの変動金利の仕組み
変動金利で住宅ローンを借り入れると、借入期間中、定期的(一般的には半年ごと)に借入金利の見直しが行われ、見直し後の金利に合わせて返済額が変動します。
変動金利の利率は一般的に、「短期プライムレート」という利率に1%加算した利率を基準として決められます。
●短期プライムレート:銀行が業績や財務状況が最優良の企業に融資する際の最優遇貸出金利のうち、1年以内の短期貸出に適用される金利のこと。
2020年8月時点で最も多くの数の銀行に採用されている短期プライムレートは1.475%ですので、この場合の基準利率は、1.475%+1%=2.475%となります。この数字をもとに優遇金利などが適用された状態が、実際の借入金利となるわけです。
ただし金融機関によっては、短期プライムレートをもとに利益やコストを勘案して、独自に基準金利を決めている場合もあります。
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変動金利の返済額見直しのルール
多くの銀行で、変動金利における返済額の見直しは「5年ルール」「125%ルール」と呼ばれるルールにのっとって行われています。
5年ルール
半年ごとの金利見直しで金利が変動しても返済額に即座に反映せず、5年ごとに返済額を見直すというルールで、元利均等返済の場合に適用されます。元金均等返済では、金利の変動とともに返済額が変動するのが一般的です。br>
125%ルール
金利が大幅に上昇した場合でも、返済額の上昇幅の上限を25%とするルールです。ただし、超過部分の金利を支払わなくていいわけではありません。月々の返済額に占める利息の割合を上げ、それにより生じた元本の未返済分を最終返済額に上乗せするといった方法で清算することになります。
したがって金利上昇局面でこのルールが適用された場合、元本の返済がなかなか進まないという状況を招く結果となることに注意が必要です。br>
5年ルール、125%ルールは全ての金融機関で採用されているわけではありませんので、借入先を検討する際に確認するようにしましょう。
関連記事「住宅ローン変動金利契約とは?」
変動金利を選択するメリット
変動金利の大きなメリットは、一般的にほかの金利タイプと比べて金利が低く設定されている点です。低い金利で返済を続けることで元金を効率的に返済することができ、結果的に総返済額を抑えることができます。
また、将来的に金利の上昇がなければ継続して低い金利で返済することができ、適用金利が下がれば連動して月々の返済額も下がります。
金利上昇による返済額の変動があっても備えられる家計の余裕がある場合や、借入額が少ない、もしくは返済期間が短いなど金利変動による影響が小さい場合には、変動金利を選択するメリットは大きいといえるでしょう。
変動金利を選択する際の4つの注意点
変動金利を選択する際には、次のようなことを念頭に置いておく必要があります。
●金利上昇にともない返済額が上昇するリスクがある
●借り入れ時点で総返済額を把握できず返済計画が立てづらい
●5年ルール・125%ルールが適用されることで元金の返済が進まなくなる場合がある
●未払利息が発生することがある
以下でくわしくみていきましょう。
①返済額が上昇するリスクがある
上で説明したとおり、変動金利は市場の情勢などにしたがって金利が変動する仕組みです。金利が上昇すれば月々の返済額や総返済額が増え、家計への負担が大きくなります。状況次第では、返済が困難になってしまうケースもあるでしょう。
変動金利を選択する場合には、返済額が上昇したときにもじゅうぶんに対応できるよう、貯蓄などの備えをしておくことが大切です。
②借り入れ時点では総返済額が把握できない
変動金利では金利の変動にともない返済額が増減するため、借り入れをした時点では総返済額がいくらになるかを知ることができません。そのため、詳細な返済計画を立てづらいというデメリットがあります。
金利の動きによっては総返済額が大きく上昇する可能性もあるため、金利変動を視野に入れ、余裕をもたせて返済計画を立てることが必要です。実際に全期間金利が上昇しなかった場合と金利が徐々に上昇した場合を試算すると、総返済額に以下のような差が出ることがわかります。
条件
●借入金額:3000万円
●借入期間:30年
●返済方法:元利均等返済・ボーナス返済なし
●当初金利:年0.45%
(1)金利変動がない場合/3207万6000円
(2)10年ごとに1%上昇した場合/3451万9308円
このように、場合によっては数百万円の差が出る可能性があるため、あらかじめ金利変動を想定したシミュレーションをしておくと安心です。
③元金の返済が進まなくなる場合がある
5年ルールが適用される場合、半年ごとの金利見直しに対して返済額の変動は5年に1回です。そのため、5年のあいだに金利が上昇すると返済額に対する金利の割合が高くなり、元金の返済に充てる部分が減少します。
また、125%ルールが適用されると、金利がどれだけ上昇しても返済額は従前の金額の125%より高くなることはありません。しかし金利上昇の幅には上限がないため、金利が上昇するほど返済額に対する利息の割合が高くなり、その分、月あたりの元金の返済金額は少なくなってしまいます。
また、金利上昇により元金の返済額が落ちたとしても、住宅ローンの返済期間は変わりません。そのため、期間中に支払いきれなかった元金を最終回の返済でまとめて払わなければならない場合もあります。
④未払利息が発生することがある
適用金利の上昇幅が大きい場合、5年ルールによって返済額が変わらないことによって元金の返済が進まないだけではなく、利息の金額が毎月の返済額よりも多くなってしまうことがあります。この返済額を超過した部分の利息を「未払利息」といいます。
未払利息が発生すると、月々の返済額はすべて利息の返済に充てられ、元金の返済金額はゼロになります。さらに未払い部分の利息は未返済分として蓄積されていきます。
適用金利の低下や返済額見直しによる返済額の増加によって未払利息が解消されるケースもありますが、完済までに未払利息が解消されない場合には、完済時に一括で支払うなど、最終的に何らかのかたちで清算しなければなりません。
場合によっては、通常の返済が完了したあとに、未払利息のローンが残ることもあります。変動金利での住宅ローン返済において利息部分の返済が膨らむことを抑えるためには、繰上返済をして元金を早期に減らしておくことが有効です。
変動金利の仕組みを理解してリスクに備えましょう
変動金利は固定金利と比べて適用金利が低くされている一方で、金利の変動にともない返済額が上昇するというリスクもあります。適用金利がどのように決められているかを理解し、金利上昇の可能性に備えて無理なく返済を続けられるように返済計画をたてる必要があります。
また、変動金利の5年ルール・125%ルールも重要なポイントです。これらのルールにより急激な返済金額の増加を免れることができる反面、元金の返済ペース低下や未払利息の発生といった問題が発生する可能性があることを覚えておきましょう。
金利タイプを選択する際には、変動金利の仕組みや注意点を知ったうえで、収入や家計の状況に合っているかどうかをよく検討することが大切です。
※2021/1/29 内容を一部修正させていただきました。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:新井智美
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