奨学金は住宅ローン審査に影響するのか? 返還中の影響や注意点など | ファイナンシャルフィールド

更新日: 2021.12.28 その他

奨学金は住宅ローン審査に影響するのか? 返還中の影響や注意点など

執筆者 : FINANCIAL FIELD編集部 / 監修 : 新井智美

奨学金は住宅ローン審査に影響するのか? 返還中の影響や注意点など
大学に通うために、奨学金制度を利用する方もいらっしゃるでしょう。もし、奨学金を返還している間に住宅ローンを組もうと思ったら、どの程度影響するのでしょうか。
 
この記事では、奨学金は住宅ローン審査に影響するのか、奨学金が住宅ローンに与える影響や注意点などを詳しく解説します。現在、奨学金を返還している方や、これから奨学金制度を利用しようか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてみてください。
FINANCIAL FIELD編集部

日々の生活における、お金にまつわる消費者の疑問や不安に対する解決策や知識、金融業界の最新トレンドを、解りやすく毎日配信しております。お金に関するコンシェルジュを目指し、快適で、より良い生活のアイディアを提供します。

新井智美

監修:新井智美

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員

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奨学金を返済中でも住宅ローンは借りられる?

奨学金制度には、無利子のものや利子が付くタイプなど、さまざまな種類があります。学生が自立して学ぶことを支援するために設けられた制度であり、給付型と貸与型の2種類があります。
 
貸与型の場合、奨学金は決められた方式に基づき返還(返済)しなくてはいけません。そのため、人によっては30代に入ってからも、奨学金を返還し続けている方もいるでしょう。
 
住宅ローンは、奨学金を返還中の方でも借りることができます。
 
審査の際に、奨学金の借り入れがあるかどうかは問題ではありません。重要なのはお金を貸してもしっかりと返してくれるかどうかです。したがって、奨学金も住宅ローンも、問題なく返済できるだけの安定した収入があれば、住宅ローンの契約をすることはできます。
 
ただし、奨学金と住宅ローンの2つの返済となる以上、一般的に考えて審査は厳密に行われると考えたほうがよいでしょう。
 

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奨学金は住宅ローンの審査のときに申告するべきか

奨学金は借金という意識があまりない方が多いかもしれません。しかし、毎月決められた金額を返還している以上、お金を借りているわけであり、住宅ローンの審査時にはきちんと申告しなくてはいけません。
 
また、奨学金を過去に延滞していた場合も同様です。
 
日本学生支援機構は、平成20年に全国銀行個人信用情報センターに加盟しています。住宅ローンを取り扱う金融機関は、融資の可否を審査する際に、必ず全国銀行個人信用情報センターを含む信用情報機関に、申込者の情報を照会します。
 
つまり、申込時に奨学金のことを伏せて申告しても、金融機関側が審査すればすぐにわかるということです。
 
申告し忘れていたり隠していたりしても、あとから調べれば簡単にわかってしまうため、必ず審査のときに申告するようにしましょう。故意に奨学金のことを隠していたと金融機関側に疑われてしまうと、逆に審査に落ちてしまう可能性もあります。
 
奨学金は、一般的にほかのローンやキャッシングなどと比べると、住宅ローン審査の影響は小なく済む可能性が高いといわれています。下手に隠すことで、ご自身で住宅ローン審査に影響を与えるリスクが高くなることを、しっかりと理解しておきましょう。
 
【関連記事】auじぶん銀行の住宅ローン審査は厳しい? 審査に落ちる人の特徴を紹介!
 

奨学金が住宅ローンに与える影響

奨学金は、ほかのローンなどと比べると、審査への影響は一般的に少ないと考えられています。しかし、それでも影響がまったくないわけではありません。
 
この見出しでは、奨学金が住宅ローンに与える影響について、大きく分けて3つのポイントを詳しく解説します。
 

奨学金は返済負担率に含まれる

住宅ローンを借り入れるときに、返済負担率がどれくらいなのかということは、とても重要なポイントだといえます。返済負担率とは、年間返済額が年収のどれくらいを占めているかの割合のことです。
 
住宅金融支援機構のフラット35では、年収400万円は30%以下、年収400万円以上は35%以下が、返済負担率の基準とされています。
 
奨学金は、返済負担率に含まれるため、住宅ローンの借入額は奨学金と合計して金融機関が定める基準以下になるよう設定しなくてはいけません。返済負担率ギリギリで住宅ローンを組もうとすると、基準以上になり、審査に落ちる可能性があることを理解しておきましょう。
 
また、返済負担率の基準については、金融機関によって異なります。30%もしくは35%以下であっても、金融機関によっては審査に通らない可能性があることも知っておきましょう。
 

奨学金の延滞履歴は信用情報に登録される

信用情報とは、個人のローンやクレジットの契約内容や返済状況などの情報です。ローンやクレジットの利用に関する情報は、各金融機関などから信用情報機関と呼ばれる第三者機関に通知され、登録、管理されています。
 
日本学生支援機構は、信用情報機関のひとつである全国銀行個人信用情報センターに加盟しています。つまり、奨学金の延滞があると、履歴が全国銀行個人信用情報センターに記録されるわけです。
 
日本学生支援機構では、延滞がある際の信用情報について、登録の基準を次のように定めています。
 

・すでに奨学金を返還中の人:延滞が3ヶ月以上の場合に登録
・新たに返還を開始する人:返還を開始してから6ヶ月の時点で延滞が3ヶ月以上の場合に登録

 
登録の判定は、返還開始から6ヶ月経過したのちは毎月行われます。延滞記録が残るのは、奨学金を返還し終わったあと5年間です。過去の延滞だとしても、記録が残っていれば住宅ローン審査に影響が出る恐れがあります。
 
しかし、奨学金制度には「返還期限猶予」というものがあり、疾病や災害、経済困難などが理由で返還ができないときは、猶予を願い出ることが可能です。
 
猶予を受けるためには、申請・審査が必要ですが、承認されれば一定期間返還期限が延びるので、返還が厳しかったらまず相談してみましょう。
 

奨学金の滞納が続くとブラックリスト入りしてしまう

奨学金を一定期間滞納すると、全国銀行個人信用情報センターに延滞者として記録されてしまいます。一度登録されてしまうと、奨学金の返還が終わったあとも5年間は情報が記録されてしまうところが、ブラックリストの怖いところ。
 
住宅ローン審査では、一般的にブラックリスト入りしている情報があることがわかると、「安定した返済能力がない」と判断されます。審査に落ちる可能性も高くなるため、「奨学金だから大丈夫だろう」などとは思わないようにしましょう。
 
また、ブラックリスト入りすると、住宅ローン審査以外でも、クレジットカードやほかのローンも組めなくなる恐れがあります。奨学金の延滞は、これから先の人生においてデメリットのほうが大きいため、しっかりと毎月返還しましょう。
 
ご自身の信用情報は「本人開示」の手続きをすると閲覧可能です。銀行個人信用情報センターでは、郵送で本人開示の請求を受け付けています。過去に延滞があるなど奨学金の返済状況に不安がある方は、信用情報の状態を確認してみるとよいでしょう。
 

配偶者の奨学金は住宅ローン審査に影響する?

住宅ローンの審査で問題となるのは、契約者本人の借り入れや返済の状況です。そのため、配偶者が奨学金の返済中であっても、基本的には審査に影響することはありません。
 
ただし、次の場合は借入額などに影響する可能性があります。
 

・夫婦で収入合算する(配偶者が連帯保証人や連帯債務者になる)場合
・ペアローンを利用する場合

 
配偶者が奨学金を延滞している場合も、収入合算やペアローンを利用するのでなければ、住宅ローンの審査には影響しないと考えてよいでしょう。しかし、収入合算やペアローンの場合は配偶者の信用情報も審査の対象となるため、利用は難しくなります。
 

奨学金を住宅ローンに影響させないためには?

奨学金制度を利用している人でも、ご自身の工夫次第では住宅ローンに影響させないことも可能です。この見出しでは、奨学金を住宅ローンに影響させないためのポイントを2つ紹介します。
 
住宅ローン審査に少しでも通る可能性を高めるためにも、ぜひチェックしておきましょう。
 

奨学金を返還する

奨学金をすべて返還している状態であれば、住宅ローンの申し込みをしても奨学金が影響することはありません。そのため、少しでも住宅ローン審査の不安材料を取り除いておきたい方は、早く返還するための計画を立てることをおすすめします。
 
奨学金の残高は、利用開始直後に返済計画表がもらえるので、事前に確認できるはず。就職後に資金的な余裕が出てきたら、全額返還することも検討してみてください。
 
ただし、奨学金をすべて返還したとしても、返還途中に滞納しており、ブラックリスト入りしていると話は変わってきます。一度ブラックリスト入りすると、奨学金をすべて返したとしても、5年間は延滞の記録が残ります。
 
住宅ローン審査に影響させないためにも、延滞がある場合は完済後5年たってから申し込みをしましょう。
 

返済負担率を抑える

奨学金の全額返還が現実的に難しい方は、返済負担率を抑える方法がおすすめです。返済負担率は、住宅ローン以外にも、奨学金や車のローン、キャッシングなど借り入れしているお金すべて計算したうえで算出します。
 
返済負担率の割合が高くなれば、金融機関側も審査を慎重に行うため、安定した返済ができる割合まで下げることがポイント。
 
返済負担率は、年収によって上限が異なりますが、一般的には30~35%以下となっています。可能な限り、25%以内に抑えるように住宅ローンの借入額を調整すれば、審査にも通りやすくなるでしょう。
 
返済負担率を下げるための方法はいくつかあります。
 

●奨学金の残高を減らす
●低金利の住宅ローンを利用する
●頭金を多く入れる
●住宅購入額を下げて住宅ローンの借入額を減らす

 
奨学金の全額返還は難しくても、お金に余裕があるときに少しでも残高を減らしておくことで、返済負担率を下げることが可能です。また、頭金を多めに用意する、住宅ローンの借入額を減らすなどの工夫も、返済負担率を下げるためのポイントになります。
 
生活に無理のない範囲で、少しでも返済負担率を下げる工夫をしてみてください。
 

住宅ローン借り入れ前に奨学金を繰り上げ返還しないほうがよいケースとは?

奨学金を繰り上げ返済をすると、返済負担率を抑えられることに加えて、将来支払う利息も軽減できます。奨学金の残高が多い場合には、繰り上げ返済をしてできるだけ残高を減らすとよいでしょう。
 
しかし、次のようなケースでは、奨学金の繰り上げ返済をしないほうがよい場合もあります。
 

・奨学金の金利が住宅ローンよりも低い
・奨学金の残高が少ない

 
奨学金の金利が住宅ローンの金利水準より低く残高も少ない場合、資金を繰り上げ返済ではなく住宅ローンの頭金に充てることを検討しましょう。奨学金は通常どおり返済を続け、頭金を多く入れて住宅ローンの借入額を減らしたほうが、トータルの利息負担を抑えられる可能性があります。
 
家計の状況なども含め、どちらのほうが負担が軽くなるのか、シミュレーションしてみるのがおすすめです。
 

奨学金と住宅ローンを並行して返済する際の注意点

住宅ローンと奨学金を並行して返済する場合は、両方の返済を滞りなく継続できるようにしっかりと資金計画を立てることが重要です。
 
日本学生支援機構の奨学金には、低収入など経済的に困難な状況の人の返済を猶予する制度があります。ただし、収入・所得には基準が設けられており、給与所得者の場合は年間収入金額が税込300万円を超えると猶予を受けられません。
 
収入・所得の基準を超える場合も、医療費など一定の支出は「特別な支出」として控除できます。しかし、住宅ローンの支出は特別な支出とは見なされません。
 
住宅ローンも相談すれば返済猶予などの措置を取ってもらえるものの、期間などに限りがあります。つまり、住宅ローンと奨学金の返済を並行していて返済が困難になった場合、共倒れとなる可能性は高いのです。
 
「奨学金も住宅ローンもどちらも返済できない」という困った事態に陥らないよう、資金計画には十分な余裕を持たせることが大切です。
 

奨学金はしっかりと返済することが大切!

奨学金制度は、あまり借金しているというイメージがわきにくいものですが、貸与型の場合は借金と同じ扱いになります。住宅ローンの申し込みをするときに、奨学金を含めたうえで返済負担率を計算しないと、審査に落ちる可能性があるため注意が必要です。
 
また、奨学金の返還状況も、日本学生支援機構が全国銀行個人信用情報センターに加盟しているため、延滞などを起こすとその情報が記録されてしまいます。
 
数ヶ月にわたる奨学金の延滞履歴が過去にある方は、ブラックリスト入りしてしまいます。そうなると、住宅ローン審査のときに、不利に働く可能性があることを知っておきましょう。
 
ぜひ、今回の記事を参考にして、奨学金を住宅ローン審査に影響させないための工夫をしてみてください。
 
出典
※独立行政法人日本学生支援機構「個人情報の取扱い」
※独立行政法人日本学生支援機構「個人信用情報機関への個人情報・個人信用情報の登録」
 
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
 
監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
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