繰り上げ返済は、適切に実行すれば住宅ローンの負担を軽減するための効果的な手段になります。しかし一方で、判断を誤ると損をすることもあるため、慎重に検討しなければなりません。
そこでこの記事では、住宅ローンを繰り上げ返済することで得られる基本的な効果や、できるだけ高い効果を得るために覚えておきたいポイントをまとめました。繰り上げ返済をするべきかどうか、実行のタイミングで悩んでいる方は、ぜひ、お悩み解決の糸口にしてください。
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監修:新井智美
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプラン二ング技能士(資産運用)
DC(確定拠出年金)プランナー、住宅ローンアドバイザー、証券外務員
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※ただし、審査の結果金利プランが保証付金利プランとなる場合、ミックスはご利用いただけません。
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住宅ローンの繰り上げ返済のタイプと効果
繰り上げ返済とは、毎月の決められた返済とは別に、まとまった金額を繰り上げて返済する方法です。
繰り上げ返済は大きく、完済を目的とした「全部繰り上げ返済」と、残額の一部を返済する「一部繰り上げ返済」の2つに分けられます。一部繰り上げ返済にはさらに「期間短縮型」「返済額軽減型」という2つのタイプがあります。それぞれ効果が異なるため、目的に合わせていずれかを選択しましょう。
期間短縮型……返済期間の短縮
期間短縮型は、毎月の返済額を変えずに借入期間を短くするタイプの繰り上げ返済方式です。短縮された借入期間に発生する予定だった分の利息が削減されるため、返済総額を軽減できます。
期間短縮型で繰り上げ返済をした場合の効果を具体的に計算すると、以下のようになります。
《条件》
借入額:3000万円
借入期間:35年
借入金利:1.7%(全期間固定金利)
返済方式:元利均等返済
ボーナス返済:なし
繰り上げ返済時期:返済開始から10年後
繰り上げ返済額:300万円
《効果》
・返済期間の短縮期間…3年8ヶ月(25年0ヶ月⇒21年2ヶ月)
・利息軽減額…143万4052円
返済額軽減型……月々の返済額軽減
返済額軽減型は、借入期間は変えずに毎月の返済額を減額する繰り上げ返済方式です。月々の負担が軽くなるほか、利息や返済総額が軽減される効果もあります。
返済額軽減型で繰り上げ返済をした場合の効果を計算すると、以下のようになります。
《条件》
借入額:3000万円
借入期間:35年
借入金利:1.7%(全期間固定金利)
返済方式:元利均等返済
ボーナス返済:なし
繰り上げ返済時期:返済開始から10年後
繰り上げ返済額:300万円
《効果》
・毎月返済の軽減額……1万2315円(9万4822円⇒8万2507円)
・利息軽減額……68万2187円
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※ただし、審査の結果金利プランが保証付金利プランとなる場合、ミックスはご利用いただけません。
※審査の結果によっては保証付金利プランとなる場合があり、この場合には上記の金利とは異なる金利となります。金利プランが保証付金利プランとなる場合は、固定金利特約が3年、5年、10年に限定されます
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住宅ローンを効果的に繰り上げ返済するポイント
住宅ローンを効果的に繰り上げ返済するためには、できるだけ効果の大きい繰り上げ返済方式やタイミングを選択する必要があります。
繰り上げ返済の効果を大きくするために覚えておきたいポイントは、次の2点です。
1. 同時期に同額を繰り上げ返済する場合、支払い利息軽減効果は「期間短縮型」のほうが大きい
2. 早いタイミングで繰り上げ返済するほど効果は大きくなる
以下で、各ポイントについて具体的な数字とともにみていきましょう。
支払い利息軽減効果が大きいのは「期間短縮型」
同じ住宅ローンを、同時期に同額繰り上げ返済する場合、利息軽減効果がより大きいのは「期間短縮型」を選択した場合です。同じ条件下で繰り上げ返済した場合の利息軽減額を、期間短縮型と返済額軽減型で比較してみましょう。
《条件》
借入額:3000万円
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借入金利:1.7%(全期間固定金利)
返済方式:元利均等返済
ボーナス返済:なし
繰り上げ返済時期:7年目
繰り上げ返済額:300万円
《利息軽減額》
・期間短縮型……165万8021円
・返済額軽減型……77万47円
《条件》
借入額:2000万円
借入期間:20年
借入金利:2.0%(全期間固定金利)
返済方式:元利均等返済
ボーナス返済:なし
繰り上げ返済時期:10年目
繰り上げ返済額:150万円
《利息軽減額》
・期間短縮型……30万3241円
・返済額軽減型……15万4929円
どちらのケースでも、期間短縮型のほうの利息軽減額が2倍前後大きいという結果です。月々の返済額が現状維持で支障ない場合は、期間短縮型を優先して選択するとよいでしょう。
繰り上げ返済のタイミングが早いほど効果が大きい
繰り上げ返済の時期が早ければ早いほど、利息軽減効果は大きくなります。これは、期間短縮型でも返済額軽減型でも同様です。
例として、10年目、20年目、30年目に繰り上げ返済をする場合について、具体的な数字を比べてみましょう。
借入額:3000万円
借入期間:35年
借入金利:1.7%(全期間固定金利)
返済方式:元利均等返済
ボーナス返済:なし
繰り上げ返済額:300万円
●期間短縮型
10年目……143万4052円
20年目……76万356円
30年目……18万6595円
●返済額軽減型
10年目……68万2187円
20年目……39万8554円
30年目……12万9252円
繰り上げ返済の時期が10年遅くなるごとに、期間短縮型および返済額軽減型どちらを選んでも利息軽減額が減少することが一目瞭然です。資金を繰り上げ返済に回せる余裕があるときは、できるだけ早く手続きするのが賢い方法だといえます。
繰り上げ返済の効果を損なわないための注意点
繰り上げ返済の方式やタイミングを考慮して繰り上げ返済したとしても、そのほかのことが原因で効果が損なわれる場合があります。住宅ローンの繰り上げ返済の効果に影響する可能性のある主な要因は、次の2つです。
●住宅ローン控除
●繰り上げ返済手数料や最低金額
それぞれ、どのような点が問題になりやすいのか、以下で詳しく解説します。
住宅ローン控除との兼ね合いを考慮する
住宅ローンの年数が10年以上あることが、住宅ローン控除を受ける条件のひとつです。繰り上げ返済などで住宅ローンの返済期間が短縮された場合は、短縮後の年数を元に控除の可否が判断されます。
住宅ローン控除の対象期間中に期間短縮型で繰り上げ返済をする場合は、ローンの残り期間が10年を切ると住宅ローン控除が受けられなくなる点を頭に置いておきましょう。
また、住宅ローン控除の控除額は、住宅ローンの年末残高を基準に決まります。つまり、繰り上げ返済で住宅ローンの残高が減れば、控除額が減るのです。
住宅ローン控除の対象期間に繰り上げ返済を検討するときは「両者を並行して利用した場合」と「住宅ローン控除の期間終了を待って繰り上げ返済をした場合」を比較して、より効果が大きい方法を選択しましょう。
金融機関によって繰り上げ返済手数料や最低額が異なる
住宅ローンの繰り上げ返済をするときには、繰り上げ返済手数料がかかることがあります。手数料の金額は、金融機関によって異なります。
無料から数万円まで金額に開きがあるため、繰り上げ返済の予定がある場合は、繰り上げ返済時に手数料の負担が少ない金融機関を選んで住宅ローンを借り入れるとよいでしょう。
また、同じ金融機関でも、繰り上げ返済の手続き手段によって繰り上げ返済手数料の金額が違う場合もあります。手続き前によく確認して、よりコストのかからない方法で繰り上げ返済するのがおすすめです。
さらに、繰り上げ返済できる最低金額も、金融機関ごとに異なります。1円から可能な場合もあれば100万円など金額が大きい場合もありますが、最低金額が小さいほうが前倒しで繰り上げ返済しやすく、トータルの効果が大きくなりやすいでしょう。
ポイントを押さえて効果的に繰り上げ返済しましょう
住宅ローンの繰り上げ返済の効果は、繰り上げ返済の方式や実行するタイミングなど、さまざまな条件に左右されます。繰り上げ返済でできるだけ大きなメリットを得るためには、繰り上げ返済の効果に影響するポイントを理解して、最適な方法を検討することが大切です。
数字を試算してみたり、金融機関の窓口で相談をしてみるなどして具体的にイメージしながら、効果的に繰り上げ返済する方法や時期を見極めましょう。
執筆者:FINANCIAL FIELD編集部
監修:新井智美
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