ただ、実際は、それだけで金利が上がるか、下がるかを予測するのは難しく、もう少し直接的な金融政策などを理解しておくと、金利がどう動くかをより判断しやすくなります。
今回は、国の金融政策についてお話しします。
執筆者:重定賢治
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
明治大学法学部法律学科を卒業後、金融機関にて資産運用業務に従事。
ファイナンシャル・プランナー(FP)の上級資格である「CFP®資格」を取得後、2007年に開業。
子育て世帯や退職準備世帯を中心に「暮らしとお金」の相談業務を行う。
また、全国商工会連合会の「エキスパートバンク」にCFP®資格保持者として登録。
法人向け福利厚生制度「ワーク・ライフ・バランス相談室」を提案し、企業にお勤めの役員・従業員が抱えている「暮らしとお金」についてのお悩み相談も行う。
2017年、独立行政法人日本学生支援機構の「スカラシップ・アドバイザー」に認定され、高等学校やPTA向けに奨学金のセミナー・相談会を通じ、国の事業として教育の格差など社会問題の解決にも取り組む。
https://fpofficekaientai.wixsite.com/fp-office-kaientai
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金融政策と金利変動
2008年に発生したリーマンショックは記憶に新しいかもしれません。
アメリカに端を発し、ヨーロッパや日本、その他世界中を巻き込んだ金融恐慌に発展しました。
あのとき、先進国を中心に金融政策をどうするかが議論されました。
つまり、世界的な金融恐慌を食い止め、どのように回復していくかという話し合いです。
このとき用いられた方法が「金融緩和」という政策です。
リーマンショック後、世界中で景気が悪化し、お金の流れがものすごく鈍くなりました。
株式は売られ、お金を借りることも減り、人間の体でいうと、血流が悪くなる状態が続きました。
経済を患者に見立てると貧血状態なわけですから、十分な血液を補充してあげる必要があります。
各国の中央銀行が、輸血として大量のお金を市中に流し込み、人々の手にお金が行き渡るようにしました。
簡単にいうと、これが「金融緩和政策」です。
このとき、日本の中央銀行である日銀(日本銀行)は、市場に出回っている日本国債などの資産を買い取ることで市中にお金をじゃぶじゃぶ流しました。
この過程で金利が下がっていきました。
ここがポイントなんですが、説明の前に、この関係を確認しておきます。
○国債が買われる⇒金利は下がる
○国債が売られる⇒金利が上がる
国債は、国が発行する債券です。
つまり、国が企業や国民その他に対し、お金を借りるときに発行する借用証書のようなものです。
国としてはお金を借りるわけですから、貸してくれた人たちに利息を支払わなければなりません。
このときにつけられるのが利回りと呼ばれる「金利」です。
それでは、国債が買われるようになると、金利が下がるとはどういうことでしょうか。
仮に、国に信用がなく、ほとんどの人がお金を貸してくれない場合、国としては、なるべく多くの人からお金を借りるために、より高い金利をつけます。
そうすると、金利が高いならお金を貸そうと人は考えるようになるため、たくさんの人が国債を買うようになります。
みんなが国債を買ってくれるようになると、今度は逆に、みんなにたくさんの利息を支払うことができなくなります。
この結果、金利(利回り)は徐々に下がっていきます。
簡単な説明ですが、これが金融緩和政策の中身です。
逆に、国が国債を売る場合、金利は上がっていきます。
ここでは、金利が低い国債なんかいらないとみんなが思うようになります。
こうなると、国としてはお金を貸してもらいにくくなるため、より高い金利をつけようとし、国債の利回り(金利)が上がっていきます。
だいぶ、はしょって説明しましたが、これが金融引き締め政策です。
このように、金利が上がるか、下がるかは、直接的には、世界各国のお家事情、つまり、その国の景気の状況にあわせた「金融政策」に左右されます。
そして、景気の悪化局面では「金融緩和政策」がとられ、また、景気拡大局面では「金融引き締め政策」がとられるようになり、結果として、前者では金利が下がり、後者では金利が上がるという仕組みになっています。
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金利は上昇する?
IT革命後になると、金融市場・資産市場と実体経済の間のギャップが広がるようになりました。
金融政策の効果は、どちらかというと資産市場(株式や不動産などの市場)に影響を与えやすくなっている反面、実体経済に対しては、それほど効果が表れていないという指摘もあります。
「株価が上がっても、景気が良くなったという実感がわかない」という声がまさしくこれについていっているわけです。
現在、国は、デフレ脱却に向けて金融緩和政策を実施している最中です。
この過程で、なかなかデフレから脱却できない状況が続いています。
今回の話題は長期プライムレートのもとになる話、つまり、住宅ローンでいえば、固定金利につながる話といえます。
結果として、デフレから脱却するなら、金融緩和が解除されるようになるわけですから、国債が売られ、利回り(金利)は上がっていくことが考えられます。
そうなると、長期プライムレートも上昇し、住宅ローンの固定金利は少し引き上げられるということが想定できます。
しかし、多くの専門家が指摘しているように、デフレ脱却までの道は長いかもしれません。
仮にそうなら、住宅ローンの固定金利もあまり上がらないことが予測されます。
住宅ローンの金利について考える際は、こんなことを考えながら、変動金利にするか、固定金利にするかを判断していくといいんですが、ちょっと難しいですよね。
実際に、住宅ローンを組むときや、借りかえをするときは、なるべく専門家に相談しながら判断するといいでしょう。
Text:重定 賢治(しげさだ けんじ)
ファイナンシャル・プランナー(CFP)
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