最終更新日:2019.01.10 公開日:2018.01.26
資産運用

マイナンバー制度で金融資産が捕捉される可能性は?

マイナンバー制度が実施されてから、約2年が経過しようとしています。マイナンバー制度は、国民1人1人に12桁の個人番号を割り振り、行政の効率化に利用するとともに、税金、社会保険、生活保護給付、金融口座などと結びつけようとするものです。
制度が動き出してから実際どこまで進み、今後どうなるかを検討してみましょう。

正式カードの交付はまだ約1割

正式なマイナンバーカードは、顔写真付きでICチップが組み込まれたカードで、これをすでに受け取っている人は1100万人ほどで、国民の約11%に当たります。このカードを保有していれば、行政サービスを受ける際などに身分証明となり、手続きがスムーズにできます。
 
しかし現状では、これを持っていることのメリットは少ないといえます。実際に9割近い人が、最初に送られてきた通知カードをそのまま保管している状態で、マイナンバーカードへの切り替え手続きをしていません。
 
マイナンバーカードを使った行政サービスも、徐々に増えつつあります。手持ちのクレジットカードのポイントを、行政サービスのポイントに移行できる、通販サイトの買い物に使える、保育施設利用、児童手当受給などの子育て支援に利用できる、といったサービスを受けることができます。
 
行政サイドでは普及に熱心ですが、肝心のメリットを感じている人が少ないのが現実です。持っていた場合に受けられるメリットが、まだそれほど多くないため、普及はこれからの問題といえます。
 

預貯金口座の解説に番号提供が求められる

多くの人たちの関心の1つが、自分の持つ金融口座がマイナンバーによりすべて管理され、税務当局などに保有資産の実態を把握されてしまうかどうか、という問題です。特に預貯金については、ほとんどの国民が関係しているため、不安を感じている人や、提供を拒みたいと考えている人は多いと思われます。
 
2018年以降、新たに預貯金口座の開設や住所変更をする際には、銀行など金融機関の側からマイナンバーの提供が求められるようになります。行政当局が金融機関に提出を求めるためです。ただし当面は預金者がこれに応じるかは任意のため、応じなくても口座開設などは可能です。3年間ほど実際の状況を見て、2021年以降に義務化が検討されています。
 
行政当局が義務化に関心を寄せる理由は、次の観点からです。
 
最大の狙いは納税調査の効率化です。納税者の申告に誤りがないかを見るために、金融機関からマイナンバーの提供を受けることができれば、預貯金に関する情報が明らかになり、正しく納税がされているかどうかをより正確に捕捉できます。遠隔地にある口座も簡単に捕捉することが可能です。また生活保護を申請した人が、規定以上の預貯金残高があると、これを行政当局が正確に把握することで生活保護の申請を拒否できます。
 
もう1つのポイントは、ペイオフ対策です。ペイオフは銀行などが破綻した際に、1人当たり元本1000万円とその利息が保護される制度で、支払いを行う預金保険機構が、その金融機関に複数の口座を持っている人を容易にチェックでき、名寄せを簡単にできることです。支払い時間の短縮と二重に支払うことが防止できます。この点に関しては異議を唱える意見は少ないと思われます。
 

銀行や保険会社への提出はまだ任意

預貯金については、調査と名寄せ以外の目的でマイナンバーを利用することは禁止されています。ただ現状の仕組みでも時間はかかりますが、調査や名寄せは不可能ではなく、マイナンバーの提供を預金者に義務づけることへの抵抗感は強く、窓口でのトラブルも増えてくるかもしれません。
 
銀行などの金融機関が、一方的にマイナンバーの提供を求めた場合、預金者からの反発を買う可能性もあります。特にマイナンバー自体に否定的な人もおり、今後課題となります。
 
同様のことが保険会社についてもいえます。生命保険の満期返戻金や死亡保険を受け取ろうとする際に、保険会社はマイナンバーの提供を求めてきます。しかし現段階でマイナンバーの提供は義務化されてはいません。マイナンバーを提供しなかったからといって、保険金を受け取れないわけではありません。
 
ただ2018年から、保険会社から税務当局への提出資料にマイナンバーの記載が必要となったため、保険金の請求者に対して「お願い」という形にせよ、提供を強く求める姿勢になり、トラブルの要因にもなりかねません。
 

証券口座は番号提出の義務化が進む

預貯金や保険と違って、証券会社の口座ではマイナンバーの義務化が着々と進んでいます。現在でも新たに証券口座を開設しようとする人については、マイナンバーの提供が必要で、提供しない場合は口座の開設ができません。すでに証券会社に口座を開いている人についても、2018年末までにマイナンバーの登録が必要になります。
 
また売却益や配当に課税されないNISA口座については、2017年末までにマイナンバーの提供がなされていない場合は、NISA自体が利用できなくなっています。NISA利用者のほとんどが、マイナンバーの提供を済ませていることになります。
 
証券口座の場合は、2018年末をめどにマイナンバーの提供がほぼ完了する予定です。こうして見てくると、証券口座については銀行などの預貯金に比べ、マイナンバーの導入が進んでいることになります。
 
銀行などの預金口座数に比べ、口座数が少ないこともありますが、証券口座を開設している人の多くが、非課税恩典のあるNISA利用者でもあるため、マイナンバーの提供促進に寄与したことも十分に考えられます。
 
一方で、株式や投資信託などを大量に保有している人や、遠隔地や海外に預金を持っている人にとっては、多くの資産が行政当局から捕捉されることになります。これまではいくつか抜け道を利用し、脱税などで税金の支払いを少なくしてきた人にとっては、困った事態かもしれません。
 
しかし多くの人にとっては、正しい納税の実現に近づくため、好意を持って迎えられる要素があります。
 
Text:黒木 達也(くろき たつや)
経済ジャーナリスト。大手新聞社出版局勤務を経て現職

黒木達也

執筆者:黒木達也(くろき たつや)

経済ジャーナリスト

大手新聞社出版局勤務を経て現職。

FINANCIAL FIELD編集部

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