更新日: 2024.10.10 働き方
32歳独身「年収650万円」です。経済的に余裕はありますが、残業「月60時間」です。自分の時間を持つため、多少年収が下がっても「転職」すべきでしょうか?
本記事では「32歳で650万円」という年収が、他の人と比べて高いのかどうか、また残業時間「月60時間」はどれほど長いのかを解説します。ぜひ参考にしてみてください。
執筆者:小林裕(こばやし ゆう)
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート
日本の平均年収と比較
国税庁が実施している「令和4年分 民間給与実態統計調査」によると、1年を通して勤務を継続した労働者の平均給与額は458万円のようです。同調査の結果をもとにすると、年収650万円であれば、全世代の平均年収よりも1.5倍近い収入を得られていることが分かります。
続いて、図表1の給与階級別分布の分布図を確認しましょう。
図表1
国税庁 令和4年分 民間給与実態統計調査より筆者作成
同調査の結果である図表1からは、年収600万円超700万円以下の人は上位20%以上に入ることが分かりました。つまり、「年650万円超の人はおよそ5人に1人しかいない」といえます。そのため、日本の平均年収と比較して「高収入」といえるでしょう。
「月60時間」という残業時間は長いのか
労働基準法を参考に、「月60時間」という残業時間がどれほど長いのかを確認しましょう。労働基準法では、休日の時間外労働(休日労働は含まない)の上限は、原則として「月45時間・年360時間」と定められています。
つまり、「月60時間」という残業時間は、月単位でみても、年単位でみても、上限を超えていることになるため、残業時間が非常に長くなってしまっていることが分かります。
なお「月60時間」の残業ができるのは、特別な事情があったとしても年間に上限6回までです。年間を通して続けてしまうと、罰則(6か月以下の懲役または30万円以下の罰金)が科される恐れがあります。
転職時の注意点
残業時間を減らすことを目的に、残業がない・残業が少ない企業に転職する場合には、年収がダウンしてしまう可能性がある点に注意が必要です。今まで支給されていた残業代が、転職後につかなくなってしまうからです。
もちろん転職活動を通して、交渉次第では年収を高めることも可能です。よい条件でのオファーが見つかるまでじっくりと転職活動を行うとよいでしょう。
また、「転職回数を多くし過ぎないこと」にも注意が必要です。転職回数が多すぎる人は、面接官から「この人は採用してもすぐに辞めるのではないないか」と思われる可能性があります。実際に「何回以上転職している人は面接しない」という独自基準を設けている会社も存在するようです。
転職活動は時間をかけて
転職は労働環境の悪い職場から自分自身を守るための有力な手段です。現状、転職を考えていなくても普段から情報収集を行い、いつでも行動できるように準備をしていてもよいかもしれません。
特に現在、年収水準が高い状況の場合には、安易に転職先を選んで失敗しないように、「今よりもよい条件の会社からオファーが来たら転職しよう」という気持ちで、じっくりと転職という選択肢について検討しましょう。
出典
国税庁 令和4年分 民間給与実態統計調査―調査結果報告―
厚生労働省 時間外労働の上限規制
執筆者:小林裕
FP1級技能士、宅地建物取引士、プライマリー・プライベートバンカー、事業承継・M&Aエキスパート