最終更新日:2019.02.05 公開日:2017.05.16
スペシャルインタビュー

ファイナンシャルプランナーに聞く「暮らしとお金のアドバイス」②

ファイナンシャルプランナーに聞く②柴沼直美さん。「投資はやってみないと分らない。何もやらないことがリスクになる時代です」

Interview Guest : 柴沼直美

Interview Guest

柴沼直美

柴沼直美

柴沼直美(しばぬま なおみ)
キャリプリ&マネー代表。
1級ファイナンシャル・プランニング技能士、CFP(R)認定者、日本証券アナリスト協会検定会員、社会保険労務士、MBA(ファイナンス)、キャリアコンサルタント。大学を卒業後、日本生命保険に入社。保険営業に従事したのち渡米。米国アリゾナ州、Thunderbird School of Global ManagementにてMBAを修得。帰国後外資系証券会社、投資顧問会社にてアナリスト、日本株ファンドマネージャーを経験。出産・母親の介護を機に退職。三人の子育ての中で、仕事と主婦業の両立を図るべく独立。社会保険労務士、キャリアカウンセラー、CFPの資格を活かしつつ、それぞれのライフステージでのお金との付き合い方を、セミナーや個別相談により紹介。子どもの教育費・留学費から介護に至るまで経験を交えた実行可能な幅広いストライクゾーンで対応。

≪キャリプリ&マネーのWebサイト≫
http://www.caripri.com

「ファイナンシャルフィールド」では、資産運用について分かりやすく解説した記事を展開するファイナンシャルプランナー(以下FP)の柴沼直美さん。投資初心者や未経験者でも理解しやすい内容や、ご自身のユニークな提案を盛り込んだ具体的なアドバイスなどが好評です。
 
アナリストやファンドマネージャーの経験もある柴沼さんに、資産運用の必要性などを中心にお聞きしました。
 

外資系金融機関でキャリアを積み、データの大切さを思い知る

——柴沼さんは、アメリカに留学されてMBA(経営学修士)を取得され、その後はアナリストやファンドマネージャーをご経験されたとのこと。当時のことを教えてください。
 
大学卒業後、生命保険会社に就職したのですが、当時はキャリアアップの道が限られていて、次の転職を考えたときに武器になるものが必要だと感じてMBAを取得しました。
 
帰国後、外資系証券会社のアナリストの職を得て、ようやくスタートラインに立ちました。アナリスト時代は、エコノミストのレポートの翻訳、データベース作成、プレゼンテーションの資料作成などを担当しました。アナリストの仕事は、ファンドマネージャーに売買の結論を導く資料を提供すること。
 
しかし、どんなに時間をかけて丁寧にレポートを作成しても、ファンドマネージャーは思ったように売買してくれるものではなく、徐々に自分自身で運用してみたいという気持ちが強くなってきて、投資顧問会社に転職し、日本株のファンドマネージャーになりました。
 
新しく設定されたファンドのポートフォリオを一からつくって、日本株なら2000近くあるなかから必要な銘柄を選んで、ウエイトを決めて発注していくのが主な仕事です。ファンドによって、安定的に運用したいとか、リスクを取ってリターンを追求したいとか、目的が異なるので、それに合わせて銘柄とウエイトをいかに調整するかが腕の見せどころです。
 
アナリストやファンドマネージャーの経験を通して、データ重要さを思い知りました。それも局所的なデータではなく、全体の流れが上向きなのか下向きなのかを見極めることがとても大切であり、とても難しいということも。また、人に分かりやすく説明するのが、すごく大切なスキルだということも感じましたね。
 
——その後、ご出産をきっかけにFPに転身されたのですよね?
 
外資系の会社に勤めていて、四半期に一度はパフォーマンスや今後の予測などの報告のために、ロンドンの本社に行く必要があり、子育てしながら続けていくことは不可能でした。出産・育児の期間に、社会保険労務士、FP、キャリアコンサルタントの資格を取って、今後は自分の都合で働く時間を決められるように、個人のお客さまに向けてサービスを提供しようと考え、FPとして独立したんです。運用の経験も活かせますしね。
 
——柴沼さんにとってFPの仕事とはどのようなものですか?
 
いろいろな困り事に対して、相続なら税理士、年金なら社労士など、それぞれの分野に専門家がいますが、それを総合的に見てつなげるのがFPだと思います。困り事はつながっているので、個別の分野だけでは解決しないことも多いんです。
 
10年以上FPをやってきて感じるのは、いろいろなことを経験すればするほど、それを活かせる仕事だということ。結婚や出産、子育て、介護、親の死、相続、不動産売却など、無駄になる経験はありません。キャリアコンサルタントや社労士の資格も役立っていて、家計相談をしていたら、ご主人の収入アップが必要なんじゃないかということで、キャリアについてアドバイスをしていることもあります。今までの経験を通したいろいろな引き出しから、総合的に相談に乗れることが自分の強みかなと思っています。
 
——3人のお子さまの育児に加え、お母さまの介護もご経験されたそうですね。
 
だからこそお客さまに寄り添って、真実味のあるご相談ができると感じています。仕事と子育ての両立に悩む若いご夫婦の人生設計や住宅購入のご相談、介護施設や自宅介護に関するご相談なども多いですね。とくに介護については、受けられる行政サービスをご存知ない方などもいて、情報が行き渡っていないのを感じます。
 

「米国雇用統計」をチェックして世界経済のトレンドをつかむ

 
——やはり資産運用のご相談も多いのですか?
 
得意分野の一つで、専門的にやっていきたいと思っているので、ご相談してくださる方も多いですね。でも時期によって相談数や内容は変化します。安倍総理が就任したときは、株式相場が上昇傾向だったので、圧倒的に資産運用のご相談が多かったです。しばらくしたら、まもなく老後だけど年金が少なくて困っているという方のご相談が多くなりました。
 
資産運用では40代の男性のご相談が多いですね。ご結婚されていても共働きで財布は夫婦別々だから、自分の資産は自分で運用したいというタイプの方がポートフォリオの確認という感じでいらっしゃいます。あとはシニアの方も多いですね。貯蓄をできるだけ長く持たせるために運用をご希望されて相談にいらっしゃいます。
 
——資産運用をするときに大事なことって何でしょうか?
 
日々の値動きとトレンドを混同しないことです。日々の値動きは需要と供給で決まります。需要と供給というのはたとえばヘッジファンドの人たちが、売買を仕掛けることなどです。そういったことで相場は一時的に大きくアップダウンします。現在もトランプ大統領の発言や動きなどで、相場が上下していますよね。それは一時的な日々の値動きで、大事なのはトレンドなのです。
 
トレンドとは、今後3〜5年くらいのスパンで世界経済を見たときの動きが、上向きか下向きかの大きな方向のこと。このトレンドを決めるのは経済データです。そこを見極めて肝に銘じておくこと。日々の値動きはメディアやニュースで騒がれ、目立ちますが、そこに躍らされてしまうと良い結果にはなりません。
 
——データを読み取ることや分析できることはすごく大事なんですね。
 
とはいえ、全部を追いかけるのは絶対に無理。景気が良くなるか悪くなるかの判断材料は、失業率や雇用率のデータに尽きます。GDPの6〜7割は消費で構成されているので、雇用が活発になれば消費も活発になり、消費が動けばものが売れ、ものが売れれば設備投資が増えるという良い循環が生まれてくるんです。
 
少し極端かもしれませんが、毎月第一金曜日に発表される「米国雇用統計」さえ、きちんと追いかけていれば、ある程度の流れは読めると思います。月に一度のことなので、それほど大変ではないんですよ。「先月より良くなっている」とか「3カ月も良い月が続いている」とか、ざっくりと分かっているだけでも、随分違うと思います。
 

日本の個人投資家の海外への苦手意識を解きほぐしていきたい

——日々の暮らしのなかで、節約や貯蓄のために良い方法はありますか?
 
ATMでお金を下ろすのは月に一度にして、最初から用途ごとに封筒に分けるという方法が一番簡単で有効だと思います。それ以降は下ろさないと決めてしまえば、毎月決まったお金しか使わなくなります。冷蔵庫の開け閉めの回数を制限するなど、細かい節約をやろうとすると長続きしないし、ストレスになってしまいます。
 
そして、余った分を貯金するのが基本です。使う分も貯める分も毎月枠を決めて続けること。貯める分も専用の口座をつくって、そのキャッシュカードは持ち歩かないようにするといいですね。そして貯金はいろいろな金融商品に分散して積立てるようにします。1〜2万円ずつの少額で、投資信託などに振り分けるのがいいと思います。定期預金や国債もいいのですが、今はあまりにも金利が低く動かないので、投資に目を向けられる方が多いです。
 
——元本保証のない投資信託や株には抵抗がある人も多いのではないですか?
 
少し前までは「元本保証が何より大事」という人が多かったのですが、ここ数年で意識が明らかに変わってきています。とくにシニアの方が顕著で、「何かしなければ」とすごく投資に積極的になってきています。やはりあまりにも動かないということにフラストレーションがあるのだと思います。
 
——どんな商品が人気ですか?
 
インデックスファンドですね。比較的リスクが少なく、少額で始められます。株、債権、不動産などの比率を見ながら自分で選ぶ人もいれば、面倒なのでパッケージになった商品だけを買うという人もいます。
 
ロボットに機械的に運用を任せる商品なども話題になっていますね。あとは海外株式などに興味がある人も多いです。海外ものは為替リスクがあるので敬遠される方もいますし、カタカナが入ってくるだけで難しいと感じて拒否反応を示されることもあります。でも、海外のほうが人口も増えていますし、企業の業績の伸び率が高いので、将来予測としては期待できますよね。私はアメリカやイギリスの企業で働き、海外の投資家が日本の市場をどう見ているかということに触れてきました。
 
日本の市場も海外の投資家の動きに左右され、ボーダレスになっている時代ですから、個人のお客さまにも徐々に受け入れていただくような自然な形で、海外への投資について情報提供していきたいと思っています。日本の個人投資家の海外への苦手意識を解きほぐしていきたいですね。
 
——今後、投資にチャレンジしたいけれど リスクが怖いという人にアドバイスをお願いします。
 
これだけ低金利が続いていますし、今後もおそらく続くでしょう。人口が増加に向かわない限り、金利を大きく上げることは難しいと思います。そんな環境のなかで何もやらないことは100%リスクです。とにかく始めてみないことには、自分の資産だけが動かず、取り残されてしまうという時代。始めてみて少し失敗しても、どうして失敗したかが分かると、次につながっていきます。自転車に乗る時に乗ってみて転んで、ペダルのこぎ方が分かるように、投資も経験してみないと分からないんですよね。
 
土地や家などの不動産もありがたい資産ですが、いざ現金化しようと思うと、簡単にはいかないことが多いものです。両親の死後、登記簿を変えていなかった祖父の家を相続することになって調べてみたら、利害関係者が30人ほどいたということも珍しくありません。
 
また、家族や親戚、ご近所などとのつながりも段々なくなってきて、身体が不自由になったときに、周囲に頼れない環境にもなってきていますから、有料のサービスを使う機会が今後はどんどん増えていくと思います。日本の将来を予想すれば、資産は自分で増やしていくことが必要になってくるのではないでしょうか。
 

ファイナンシャルプランナーに聞く「暮らしとお金のアドバイス」②

  • 1:ファイナンシャルプランナーに聞く②柴沼直美さん。「投資はやってみないと分らない。何もやらないことがリスクになる時代です」
村田保子

執筆者:村田保子(むらた やすこ)

Financial Field エディター

 

 

岩田えり

Photo:岩田えり(いわた えり)

フリーランス・フォトグラファー

日本舞台写真家協会・会員。タレント・舞台俳優など人物写真を得意とする。

 

 

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