最終更新日: 2019.01.11 公開日: 2018.04.24
暮らし

2019年には農産物輸出1兆円を達成したい日本。どんな品目を、どこに輸出しているのか?

執筆者 : 毛利菁子

農林水産省は、2019年には農林水産物と食品の輸出額目標を1兆円としています。
 
国内では少子高齢化が進んで全体の胃袋が小さくなっており、日本の農業を守り発展させるためには、輸出に活路を見いださざるを得ないという事情もあります。
 
目標達成に向けて輸出促進をしている現在、日本はどんな品目を、どこに輸出しているのでしょうか?
 
毛利菁子

Text:

Text:毛利菁子(もうり せいこ)

農業・食育ライター

宮城県の穀倉地帯で生まれ育った。
北海道から九州までの米作・畑作・野菜・果樹農家を訪問して、営農情報誌などに多数執筆。市場や小売り、研究の現場にも足を運び、農業の今を取材。主婦として生協に関わり、生協ごとの農産物の基準や産地にも詳しい。大人の食育、大学生の食育に関する執筆も多数。

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毛利菁子

執筆者:

Text:毛利菁子(もうり せいこ)

農業・食育ライター

宮城県の穀倉地帯で生まれ育った。
北海道から九州までの米作・畑作・野菜・果樹農家を訪問して、営農情報誌などに多数執筆。市場や小売り、研究の現場にも足を運び、農業の今を取材。主婦として生協に関わり、生協ごとの農産物の基準や産地にも詳しい。大人の食育、大学生の食育に関する執筆も多数。

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明治以降の農林水産物輸出の歴史を振り返る

海外との貿易が本格的になった明治初期、当然ですが輸出の花形は第1次産業から生み出された産品でした。
 
上位品目は生糸(米国、フランス向けなど)、蚕種(〈さんしゅ・かいこの卵〉イタリア、フランス向けなど)、茶(米国向けなど)、綿糸(アジア向けなど)、昆布や乾魚などの水産物(中国向けなど)でした。これらは質の良さで、競合する国を凌駕していました。
 
まさに、農林水産業は外貨の稼ぎ頭だったのです。その後、主要輸出産品はどうなったのでしょうか。
 
蚕種は、大もうけに味を占めた悪徳業者が増えた結果、質の悪いものやニセものを輸出するなどで海外からの信頼は地に落ち、1898年に輸出はいったん途絶えてしまうのです。
 
米国へ輸出していた茶は、セイロンやインドの紅茶との競争に負け、生糸はというと世界恐慌のあおりを受けて輸出量が減少してしまいます。その後、日本は長い戦争に突入し、輸出どころではなくなります。
 
戦後は皆さんご存じのとおり、鉄鋼、造船、自動車産業が輸出の中心に躍り出て、逆に小麦や大豆などの、恒常的な食糧輸入大国になってしまうのです。
 

今、農林水産物と食品の輸出には追い風! 急激に伸びている品目は?

このところ、和食のユネスコ文化遺産登録、海外での健康志向の高まりと日本料理店の増加などで、日本の農林水産物と食品の輸出には追い風が吹いています。
 
2017年の貿易統計によると、輸出総額は8073億円と前年比8%増の過去最高を記録しています。米や緑茶、畜産品(肉、牛乳・乳製品)、アルコール飲料(ビールなど)などが好調です。ところが、イチゴを除く青果物全体は苦戦しています。
 
まずは、伸び率の大きい3品目である牛肉、日本酒、緑茶の輸出量を見てみましょう。それぞれの品目ごとの、輸出量の1位から3位の国は以下のとおりです。
 
牛肉(輸出量計2706トン):香港792トン、カンボジア544トン、米国373トン
日本酒(輸出量計2万3482キロリットル):米国5780キロリットル、韓国4798リットル、中国3341キロリットル
緑茶(輸出量計4642トン):米国1407トン、台湾1079トン、シンガポール343トン
 
牛肉はかつてロイン(ヒレ・サーロイン・リブロース)中心でしたが、今はモモやカタなどさまざまな部位の販売も好調です。
 
日本酒では中小の酒蔵の地酒が健闘しており、緑茶は米国で高単価のものが伸びています。
 
和食は、ヘルシーさと出汁の旨みで外国人に受け入れられるようになり、海外の日本食レストランは11万8000店(2017年10月時点 農水省調べ)に急増しています(和食と称して欲しくない料理を提供する店も含まれてはいるのですが)。
 
この和食ブームで、調味料の輸出が増えているのも、昨今の食品輸出の特色です。和食に欠かせない味噌は過去最高ベースで伸びています。以前から米国やアジアは良い市場でしたが、近年は英国やフランスなど欧州への輸出も増えています。
 
しょう油は、長年首位を保っていた米国(日本企業が現地生産もしている)を抑えて、欧州やアジアへの輸出量のほうが多くなりました。
 
横道にそれますが、米国でのしょう油人気の理由の一つは、終戦後にやって来た駐留軍(主に米軍)が天ぷらやすき焼きでしょう油の味を覚えて帰国したからなのです。
 
さて、2017年の貿易統計で興味深いのは、盆栽や植木など花きの輸出額が急成長していることです。外国人観光客に密着する某テレビ番組で、埼玉県さいたま市の盆栽村や盆栽祭りで、盆栽に熱中する人たちが何度か登場しています。
 
この盆栽ブームは本物のようで、花きは前年比53%増になっています。今はアジア圏が好調ですが、この動きは欧米にも広がりそうです。
 

日本農業の基盤維持に輸出は欠かせない。輸出の今後は?

農水省は2019年には輸出額目標を1兆円として、その達成に向けて数々の施策を講じています。少子高齢化が進んでも、長年かかって作ってきた農業基盤を維持し、農村の地域経済を守るためには、輸出の増加が不可欠だからです。
 
ただ、今までのように単なる「おいしい米や青果、緑茶、水産物」などを輸出するやり方だけでは、1兆円の達成は難しいでしょう。では、今後はどのような品目の輸出が考えられているのでしょうか。
 
何と言っても海外市場開拓で期待されるのは、全国津々浦々で生産されている米でしょう。米関連の輸出では、パックご飯が注目を浴びています。
 
これなら炊飯器を持っていない人にも買ってもらえます。たとえ炊飯器を持っていても、海外に多い硬水ではおいしく炊けません。パックご飯なら誰でも、電子レンジで温めるだけで“本場の味”が楽しめます。
 
また、欧州では「ノングルテン」ということで米粉(パン用)の人気が高まっています。さらに、玄米で輸出して現地で精米して、「日本米ならではのおいしさ」を味わってもらおうという試みも、シンガポールで始まっています。
 
お米は「生鮮食品」といわれるほど、精米後から酸化が進みやすく、味が落ちてしまうものです。これも注目したい試みです。
 
ほかにも、日本産の大豆だけを使った味噌やしょう油、有機農産物人気が高い欧州向けに有機栽培の野菜や緑茶を輸出する動きもあります。
 
2030年には22億人になると予想されているイスラム教徒向けに、ハラールの認証を取った畜肉の輸出など、今までにはなかった動きが出始めています。
 
農林水産物と食品の輸出は今後、面白い展開がありそうです。農業関係者以外の視点からも商機が生まれそうな気がします。皆さん、考えてみる価値はありそうです。
 
Text:毛利 菁子(もうり せいこ)
宮城県の穀倉地帯で生まれ育った農業・食育ライター。



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