更新日: 2021.12.07 老後

65歳より64歳で退職したほうが、失業保険が得になると聞きました。どういうことでしょうか?

執筆者 : 伊藤秀雄

65歳より64歳で退職したほうが、失業保険が得になると聞きました。どういうことでしょうか?
平均寿命の延びと年金受給開始年齢の引き上げは、これまでの老後イメージを覆しました。今や老後の資金対策の基本は「できるだけ長く働く」ことにあるといっても過言ではありません。
 
求職期間中の支えになる失業保険をいかに賢く適切に活用するか、確認していきます。
 
伊藤秀雄

執筆者:伊藤秀雄(いとう ひでお)

CFP(R)認定者、ファイナンシャルプランナー技能士1級、第1種証券外務員、終活アドバイザー協会会員、相続アドバイザー。

大手電機メーカーで人事労務の仕事に長く従事。社員のキャリアの節目やライフイベントに数多く立ち合う中で、お金の問題に向き合わなくては解決につながらないと痛感。FP資格取得後は仕事に生かすとともに、地元でのセミナー登壇や日本FP協会主催の個別相談会、ワークショップなどに参画し活動を広げている。

失業保険の基本を理解する

現在仕事をしている60歳以上のうち、約8割は65歳以降も働きたいと考えており、約4割が「働けるうちはいつまでも」働きたいと希望している……平成26年の内閣府「高齢者の日常生活に関する意識調査」結果です(※1.)。
 
ボランティアではなく、収入を伴う仕事をしたい(せざるをえない)割合がこれほど多いのですから、65歳以降に向けた再就職活動は切実な問題です。
 
雇用保険には、その求職活動を支援するための給付として「求職者給付」があります。最も代表的なのは、次の表にあるように「基本手当」(いわゆる失業手当)と「高年齢求職者給付金」の2種類です。
 
なお、求職者給付を受給するには、離職日以前に一定以上の雇用保険被保険者期間が必要です。
 
表1.


 
基本手当日額は、賃金日額(離職前6ヶ月の賃金合計を180日で除した金額)から算出します。
 
なお、失業給付を受ける条件として、「就職したいという意思がある」「いつでも就職できる能力がある」「現在失業中である」「積極的に求職活動をしている」といった状態であることが求められます。
 
定年退職後、しばらく休養してから……と計画している人は、その休養期間は失業給付の対象外になるので注意しましょう。
 

制度の相違を理解する

2種類の失業給付を次の表に整理しました。
 
表2.


 
さて、65歳の誕生日前に退職すると失業保険が得になるとは、どういうことでしょうか?
 
退職日が65歳未満であれば、受給時に65歳でも「基本手当」のほうを受け取れるのです(65歳未満とは、65歳の誕生日前々日までを指します)。65歳以降に、基本手当と老齢年金両方の支給を受けるには、64歳のうちに退職し65歳から基本手当を受け取る手続きをすればよいわけです。
 
それでは、64歳時点の毎月の賃金額が20万円の人を例に、給付額を比較してみましょう。いずれも最も支給日数が多い条件とします。
 
表3.

 
差額は46万円近くになります。また、基本手当では早期就職した場合に「再就職手当」が支給されます。
 
もし、所定日数の3分の2以上(100日で計算)を残して再就職した場合、約28万円が追加支給され、さらに直前の会社の報酬より低い場合には「就業促進定着手当」が支給され……と、基本手当は幾重にも手厚い仕組みになっています。
 
それなら「64歳のうちに辞めて十分な就活期間と給付額を確保しよう!」と考える方もいらっしゃるでしょう。
 

損得を決めるものは?

ただ、気を付けたいのは、表面的な給付額の差だけで損得を判断してしまうことです。基本手当を選ぶため64歳で退職する時に考えられる懸念点は以下のとおりです。


・定年または嘱託等の期間満了を待たず65歳未満で辞める場合は、自己都合退職になります。定年退職と異なり、規約で退職金の支給乗率を下げていて満額支給にならないケースがあります。
・退職日を誕生日ではなく四半期や半年にまとめて設定している会社の場合、65歳到達以降の会社給与や賞与分を手放すことになります。
・定年退職日より1日でも早く辞めると、その期間の賞与算定期間が短くなったり、退職月の給料の減額が考えられます。

この他にも、会社の制度をよく調べないと、影響の大きさによっては先ほど試算した70万~100万円近い差額が、あっという間に消えてしまうことになります。
 

まとめ

失業手当の受給は本来、早期に再就職して安定的に賃金を得ることが目的です。
 
単に給付額の総額だけを見て基本手当のほうがお得、と流されてしまうのは危険ですし、できるだけ長く再就職「しない」と決めたのと同じことになります。なんか変ですね。
 
採用する側も、前職からブランクなく積極的に再就職活動する人に好印象を抱くのは、相手の老若を問いません。
 
会社制度を含めさまざまな点を冷静に調べたうえ、「自分に合う仕事をじっくり探すためにあえて65歳前の退職を選ぶ」など、その後を見据え計画を練ってから実行するようにしましょう。
 
出典
※1.内閣府「平成26年 高齢者の日常生活に関する意識調査結果」
※2.厚生労働省「離職されたみなさまへ」
 
執筆者:伊藤秀雄
CFP(R)認定者、ファイナンシャルプランナー技能士1級、第1種証券外務員、終活アドバイザー協会会員、相続アドバイザー。

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