2019.01.09 年金

「給与生活者であること」と「年金生活者であること」、どちらが得?

執筆者 : 浦上登

最近、定年延長が叫ばれています。皆さんも「この先、定年になったら、年金生活者になろうか、給与は下がっても、できることなら、会社に残ろうか、でも、会社に残ったら年金はもらえなくなるのではないか……」などと、考えていらっしゃるかと思います。
 
「給与生活者であること」と「年金生活者であること」、どちらが得でしょうか?社会保険にフォーカスして、この問題を考えてみましょう
 

 給与所得者と年金生活者を比べれば?

結論からいうと、給与生活者であることは一定のメリットがあります。それについて、1つ1つみていきましょう。
 

1 健康保険

(1)給与生活者の場合、大企業の方は組合健保に、中小企業の方は協会けんぽに所属し、健康保険に加入します。これに対し、年金生活者になると各市町村が所轄する国民健康保険に加入することになります。国民健康保険は、加入者が退職者を中心とした高齢者が多く、1人当たり医療費が高いため、健康保険に比べ保険料負担が重くなっています。
 
また、市町村ごとに運営しているので、保険料の市町村ごとの格差が大きく、平成28年度ベースでは市町村レベルで最大8.3倍、都道府県レベルで最大1.8倍の差があるといわれています。
つまり、国民健康保険は健康保険料に比べて高く、かつ、市町村によっても大きく違うということです。
 
参考:厚生労働省「平成28年度 市町村国民健康保険における保険料の地域差分析」による
 
イメージしやすいように、具体的な金額で計算してみましょう。
 
給与年収500万円、合計所得金額346万円、夫妻2人暮らし、夫65歳、妻60歳専業主婦をモデルケースとして、健康保険料と国民健康保険料を比較した場合、以下の通りとなり、国民健康保険料は健康保険料の1.7倍から2.4倍と、かなりの高額になります。
 
健康保険組合年間保険料: 20万5000円(妻介護保険料含む)(100)
(事業主負担率:健康保険料60%;介護保険50%)
 
国民健康保険年間保険料(妻分介護保険料含む)(政令指定都市から、最低、平均、最高の3都市を選定)
相模原市: 34万8000円(170)
川崎市: 40万円(195)
神戸市: 49万円(239)
 
(2)国民健康保険では受けられない健康保険のメリット
傷病手当金の支給は、国民健康保険にはありません。
 
傷病手当金は、病気やケガで3日以上継続して仕事を休んだ場合、休んだ日の4日目から賃金の3分の2程度が最長1年6ヶ月にわたって支給されます。高齢になるほど病気やケガのリスクが高まりますから、給与生活者を続けることで、このメリットを受ける意味は大きいといえます。傷病手当金については、病気の種類は問われませんし、休日に負ったケガでも対象になります。
 
また、加入している健康保険組合によっては、「傷病手当付加給付金」として賃金の3分の2に追加して、いくらかの追加手当および傷病手当金期間満了後も労務に服することができない場合、「延長傷病手当付加金」が給付されることもあります。
 

2 介護保険

64歳までなら、第2号被保険者なので、健康保険加入者であれば、健康保険の一部として介護保険料を負担しています。
 
65歳以上になると、給与生活者であれ、年金生活者であれ、第1号被保険者として市町村所轄の介護保険に加入することになるので、介護保険料(第1号被保険者)については、給与生活者であるメリットはありません。
 
ただし、介護保険料(第1号被保険者)も、国民健康保険料と同様、所轄する市町村により大きな差があり、最安と最高で比較すると、3倍以上の差があります。
 
参考:厚生労働省「第7期計画期間における介護保険の第1号保険料について」による
 
ここでは、全国平均に近い川崎市のモデルケースでの保険料を表示します。介護保険料も決して安くありません。
 
給与年収500万円、合計所得金額346万円、
夫妻2人暮らし、夫65歳、妻60歳専業主婦
 
介護保険料(第1号被保険者)年額:11万1840円
 

3 老齢厚生年金保険

(1)給与生活者には保険料増額のメリットあり。
 
給与生活者であれば、70歳までは老齢厚生年金保険に加入することができます。
 
保険料は以前と同様、雇用主=企業が半額負担します。そして、70歳で退職したあとは増額した年金がもらえることになります。これに対し、年金生活者は、保険料を負担しなくてよい代わりに、年金増額もありません。
 
(2)在職老齢厚生年金の一部カットは、年金月額と標準報酬月額の合計が46万円を超えなければありません。
厚生労働省作成の平成26年財政検証のモデル世帯では、夫の老齢厚生年金は月9万円なので、このモデルで計算すると、月37万円×12ヶ月=年444万円以上稼がなければ、在職老齢厚生年金の一部カットはありません。また、基礎年金および加給年金は、限度額を超えてもカットされないので、現在両方もらっている人は、給与収入の有無にかかわらず、もらい続けることができます。
 

4 そのほか、注意する点

 
会社の福利厚生に関する事項として、「企業年金に加入し続けることができるのか」、「60歳以降も退職金の支払いを受けることが可能か」については、会社ごとに扱いが異なるので、確認を要します。
 

まとめ

これまでみてきたように、給与生活者は社会保険に関して優遇されており、給与生活であることは、かなりのメリットがあることが分かりました。
ですから、この点に関していえば、年金生活者になるより、給与収入が減っても、給与生活者であり続けることを検討した方がよいということがお分かりいただけたと思います。
 
出典:厚生労働省ウェブサイト 
平成28年度市町村国民健康保険における保険料の地域差分析
第7期計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について
 
Text:浦上 登(うらかみ のぼる)
サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー
 
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浦上登

執筆者:浦上登(うらかみ のぼる)

サマーアロー・コンサルティング代表 CFP ファイナンシャルプランナー

東京の築地生まれ。魚市場や築地本願寺のある下町で育つ。
 
早稲田大学卒業後、大手メーカーに勤務、海外向けプラント輸出ビジネスに携わる。今までに訪れた国は35か国を超える。その後、保険代理店に勤め、ファイナンシャル・プランナーの資格を取得。
 
現在、サマーアロー・コンサルティングの代表、駒沢女子大学特別招聘講師。CFP資格認定者。証券外務員第一種。FPとして種々の相談業務を行うとともに、いくつかのセミナー、講演を行う。
 
趣味は、映画鑑賞、サッカー、旅行。映画鑑賞のジャンルは何でもありで、最近はアクションもの、推理ものに熱中している。

https://briansummer.wixsite.com/summerarrow