更新日: 2021.02.02 iDeCo(確定拠出年金)

専業主婦(主夫)はiDeCoに加入するメリットがないって本当?

執筆者 : 新美昌也

専業主婦(主夫)はiDeCoに加入するメリットがないって本当?
「老後2000万円」問題により、個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」への関心が高まっています。制度改正で専業主婦なども加入できるようになりました。専業主婦は、掛金拠出時の税メリットが少ないので、加入するメリットがないという意見もありますが、はたしてそうでしょうか。
新美昌也

執筆者:新美昌也(にいみ まさや)

ファイナンシャル・プランナー。

ライフプラン・キャッシュフロー分析に基づいた家計相談を得意とする。法人営業をしていた経験から経営者からの相談が多い。教育資金、住宅購入、年金、資産運用、保険、離婚のお金などをテーマとしたセミナーや個別相談も多数実施している。教育資金をテーマにした講演は延べ800校以上の高校で実施。
また、保険や介護のお金に詳しいファイナンシャル・プランナーとしてテレビや新聞、雑誌の取材にも多数協力している。共著に「これで安心!入院・介護のお金」(技術評論社)がある。
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個人型確定拠出年金「iDeCo(イデコ)」のメリット・デメリット

個人型確定拠出年金「iDeCo(以下、イデコ)」は私的年金で、厚生年金などの公的年金を補完するものです。以前は、公務員や専業主婦等は加入できませんでしたが、2017年1月の改正により、企業年金に加入している会社員、自営業、公務員や専業主婦(主夫)の方も利用できるようになりました。
 
イデコのメリットは、掛金の拠出時、運用時、受取時に税の優遇を受けられる点です。
 
毎月の掛金が全額所得控除されるので、所得税・住民税が軽減されます。積立期間中の運用益は非課税なので複利効果が最大限生かせます。年金受取時には退職所得控除(一時金で受け取る場合)や公的年金控除(年金で受け取る場合)が利用できます。このようにイデコには税制面で非常に大きなメリットがあり、加入者が年々増えています。
 
掛金は全額所得控除できますが、無制限に拠出できるわけではありません。掛金は1カ月の上限が決められています。第1号被保険者(自営業者・学生等)は6万8000円、第2号被保険者(会社員・公務員)は1万2000~2万3000円、第3号被保険者(第2号被保険者の配偶者)は2万3000円となっています。
 
専業主婦(主夫)の場合は、掛金の上限は月2万3000円なので、年間27万6000円を運用することが可能です。
 
イデコ加入時には、口座管理手数料などのコストがかかる点はデメリットです。途中で積立を停止できますが、その間も管理手数料は発生します。また、積立金は原則60歳まで引き出すことができないのは、大きなデメリットといえます。ただしこの点は、老後の備えという観点からはメリットと考えることができます。
 

専業主婦(主夫)がイデコを行うメリット・デメリット

専業主婦(主夫)は所得税がかかるケースが少ないため、掛金が所得控除となるメリットを十分受けられないデメリットがあります。また掛金が少ないと、口座管理手数料などの比率が高くなってしまいます。
 
しかし、専業主婦でも積立金の受取時に「退職所得控除額」を使えるのは大きなメリットといえます。
 
イデコの退職所得控除額は、加入期間が20年以内の場合は、「40万円×加入期間」、加入期間が20年以上の場合は「800万円+70万円×(加入期間-20年)で計算します。掛金2万3000円を30歳から60歳までの30年間、運用利率3%で運用した場合、受取額は1340万2948円になります。退職所得控除額は1500万円ですので、このケースでは非課税で受け取ることができます。
 
この計算式からわかるように、加入期間が長ければ長いほど、退職所得控除額が大きくなります。したがって、イデコを早く始めたほうが有利です。
 
会社員で退職金をもらう場合、イデコも一時金で受け取ると、勤続年数とイデコの加入年数で重複している期間の退職所得控除額は、ダブルで利用できるわけではないので、退職金で控除を使ってしまうと、イデコでは控除額を使えず、税金を課せられることがあります。専業主婦(主夫)の場合はこのような心配はありません。
 

まとめ

専業主婦(主夫)がイデコを始める場合、掛金の所得控除のメリットはないかもしれませんが、運用中や受取時の税メリットは受けられます。毎月、一定額で運用商品を購入することにより、ドルコスト平均法のメリットや長期投資によるリスク軽減効果も享受できます。
 
積立金を一括して受け取る場合は、退職所得控除額を利用できますので、1日でも早く始めたほうがお得です。
 
執筆者:新美昌也
ファイナンシャル・プランナー。
 

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