更新日: 2021.03.30 その他年金

障害基礎年金と障害厚生年金。給付対象にどのような違いがある?

執筆者 : 柘植輝

障害基礎年金と障害厚生年金。給付対象にどのような違いがある?
障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金があります。両者は異なる制度ではありますが、給付対象はどのように違っているのでしょうか。障害基礎年金と障害厚生年金の給付対象の違いを確認していきます。
柘植輝

執筆者:柘植輝(つげ ひかる)

行政書士
 
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2級ファイナンシャルプランナー
大学在学中から行政書士、2級FP技能士、宅建士の資格を活かして活動を始める。
現在では行政書士・ファイナンシャルプランナーとして活躍する傍ら、フリーライターとして精力的に活動中。広範な知識をもとに市民法務から企業法務まで幅広く手掛ける。

そもそも障害年金とは

障害年金とは、病気やけがによって障害の状態となり、生活や仕事に制限が生じている場合に受け取れる年金です。年金とはいえど制限が生じていれば若者であっても受け取ることができます。
 

障害年金の給付対象は?

障害年金の給付対象となる病気やけがは主に次のように分類されます。
 

(1)外部障害(目、聴覚、手足など)
(2)精神障害(統合失調症、うつ、てんかん、知的障害、発達障害など)
(3)内部障害(呼吸器疾患、心疾患、腎疾患、肝疾患、血液・造血器疾患、糖尿病、がんなど)

 
上記はあくまで大まかな分類と具体例の一部です。実際には上記以外の病気やけがが対象となることも往々にしてあります。
 

障害基礎年金と障害厚生年金の給付対象の違いは?

障害基礎年金と障害厚生年金では給付対象となる障害の程度が異なります。
 
例えば、障害基礎年金においては障害等級1級から2級に該当する状態が対象となるのに対し、障害厚生年金は1級から3級までの状態が対象になります。なお障害年金の等級と、障害手帳などその他障害によって受けられる社会保障制度の等級は必ずしも一致するわけではないことにご留意ください。
 
では、それぞれの範囲について確認していきましょう。
 

障害基礎年金の範囲

障害基礎年金の受給対象となるのは障害等級が1級ないし2級の場合です。どのような状態であれば1級、2級と見なされるのか確認していきます。
 

障害基礎年金の1級とは

障害基礎年金における障害等級1級とは、他人の介助を受けなければ日常生活を送ることがほとんどできない、あるいは身の回りのことがかろうじて行える程度の障害状態のことを指します。分かりやすくいうならば、入院や在宅介護が必要であり、基本的に寝床周辺での活動を余儀なくされているような方が該当します。
 
具体的には次のような症状と規定されています。
 

1. 両目の視力の合計が0.04以下
2. 両耳の聴力レベルが100デシベル以上
3. 両上肢の機能に著しい障害を有する
4. 両上肢の全ての指を欠く
5. 両上肢の全ての指の機能に著しい障害を有する
6. 両下肢の機能に著しい障害を有する
7. 両下肢を足関節以上で欠く
8. 体幹の機能に座っていることができない程度、または立ち上がることができない程度の障害を有する
9. 上記のほか、身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が上記と同程度以上と認められる、かつ日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
10. 精神の障害であって上記と同程度以上と認められる程度のもの
11. 身体の機能の障害もしくは病状、精神の障害が重複する場合であって、その状態が上記と同程度以上と認められる

 

障害基礎年金の2級とは

障害等級2級とは、必ずしも他人の助けが必要というわけではないものの、日常生活を送ることが極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害状態のことを指します。
 
例えば、軽食をつくるといった軽い家事はできても、それ以上の重い活動はできない・制限されている方、入院や在宅で活動の範囲が病院や屋内に限られるような方が該当します。具体的には次のような症状と規定されています。
 

1. 両目の視力の合計が0.05以上0.08以下
2. 両耳の聴力レベルが90デシベル以上
3. 平衡機能に著しい障害を有する
4. そしゃくの機能を欠く
5. 音声または言語機能に著しい障害を有する
6. 両上肢の親指および人さし指または中指を欠く
7. 両上肢の親指および人さし指または中指の機能に著しい障害を有する
8. 一上肢の機能に著しい障害を有する
9. 一上肢の全ての指を欠く
10. 一上肢の全ての指の機能に著しい障害を有する
11. 両下肢の全ての指を欠く
12. 一下肢の機能に著しい障害を有する
13. 一下肢を足関節以上で欠く
14. 体幹の機能に歩くことができない程度の障害を有する
15. 上記のほか、身体の機能の障害または長期にわたる安静を必要とする病状が上記と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受ける、または日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
16. 精神の障害であって上記と同程度以上と認められる程度のもの
17. 身体の機能の障害もしくは病状または精神の障害が重複する場合であって、その状態が上記と同程度以上と認められる程度のもの

 
障害等級2級のイメージとしては、1級の障害が多少軽度になっているような感じです。
 

障害厚生年金の範囲

障害厚生年金は障害基礎年金よりも保障の範囲が広くなります。具体的には障害基礎年金の1級2級に加え、これらよりもさらに程度が軽い方を対象にした3級や一時金である障害手当金もあります。
 
さらに、障害厚生年金は障害基礎年金に上乗せされて支給されます。なお、障害厚生年金を受けるには厚生年金に加入している必要があります。
 

障害厚生年金の1級・2級とは

障害厚生年金における1級と2級については障害基礎年金における1級2級と原則同様になります。
 

障害厚生年金の3級とは

障害厚生年金の3級とは、日常生活に支障はほとんどないが労働については著しい制限がある状態の方が該当します。
具体的には次のような症状と規定されてます。
 

1. 両目の視力が0.1以下
2. 両耳の聴力が40センチメートル以上では通常の話声を解することができない程度に減じた状態
3. そしゃく、または言語の機能に相当程度の障害がある
4. 脊柱(せきちゅう)の機能に著しい障害がある
5. 一上肢の三大関節のうち二関節の用を廃した
6. 一下肢の三大関節のうち二関節の用を廃した
7. 長管状骨に偽関節を残し、運動機能にも著しい障害を残すもの
8. 一上肢の親指および人さし指を失ったもの、または親指もしくは人さし指を併せ一上肢の三指以上を失った
9. 親指および人さし指を併せ一上肢の四指の用を廃した
10. 一下肢をリスフラン関節以上で失った
11. 両下肢の十趾(指)の用を廃した
12. 上記のほか、身体の機能に労働が著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害がある
13. 精神または神経系統に労働が著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする程度の障害がある
14. 傷病が治らないで、身体の機能または精神もしくは神経系統に労働が制限を受ける。または労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するものであって、厚生労働大臣が定めるもの

 

障害手当金

障害年金を受給するに至らないものの、障害と認められる一定の症状がある場合は障害手当金という一時金が支給される制度があります。詳細についてはねんきんダイヤルや年金事務所などへご相談ください。
 

障害基礎年金と障害厚生年金では支給対象の範囲が異なる

障害基礎年金においては障害の程度が重い1級や2級の方を対象としているのに対し、障害厚生年金はそれよりも程度の軽い3級まで対象としています。さらに障害厚生年金では3級に満たない方に対し障害手当金という一時金も支給しており、保障が手厚いものとなっています。
 
病気やけがの症状が障害年金の受給に至る程度にあるのか、その判定は非常にデリケートな問題でもあります。詳細については必ず年金事務所などにご相談ください。
 
出典 日本年金機構 障害年金ガイド令和2年度版
 
執筆者:柘植輝
行政書士
 

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