更新日: 2022.08.09 その他年金

障害年金のウソ? ホント?(24)「何度か請求すれば、認められる?」

執筆者 : 和田隆

障害年金のウソ? ホント?(24)「何度か請求すれば、認められる?」
障害年金の相談を受けていると、ちょっとした思い違いをしている人や、誤ったうわさ話を信じ込んでいる人が少なくないことに気づきます。そうした人たちは、後になって「しまった! 」となりかねません。
 
そんなことにならないために、あらかじめ正しい知識を身に付けておきましょう。第24回は「何度か請求すれば、認められる?」です。
和田隆

執筆者:和田隆(わだ たかし)

ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

新聞社を定年退職後、社会保険労務士事務所「かもめ社労士事務所」を開業しました。障害年金の請求支援を中心に取り組んでいます。NPO法人障害年金支援ネットワーク会員です。

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効率が悪い、診断書代もかかる

「何度か裁定請求をすれば、そのうちに認められるのではないか」と言う人がいました。障害年金の相談に応じていたときのことです。既に3回請求し、いずれも不支給決定を受けたそうです。
 
確かに、障害等級の判定を担当する認定医はたくさんいますので、認定医が変われば、その可能性もなくはありません。しかし、あまりに効率が悪いと思います。毎回の診断書代も無視できません。
 

不支給の理由を把握することが大切

不支給決定を受けたときは、不服申し立てに当たる審査請求をするにせよ、再度の裁定請求をするにせよ、不支給の理由を把握しておくことが大切です。
 
不支給決定の理由は、年金事務所で尋ねても口頭で教えてくれますが、やはり、書類で入手するほうが確実でしょう。その際に有効なのが、個人情報保護制度を利用して、認定医が作成した認定調書の写しを入手することです。
 
認定調書の名称は、障害基礎年金の場合が「障害状態認定調書」、障害厚生年金の場合が「障害状態認定表」です(以下、ともに「認定調書」と表記します)。比較的に簡単な手続きと費用で入手することができます。
 

個人情報保護制度を利用する

その方法です。
 
(1)「保有個人情報開示請求書」を厚生労働省のホームページからダウンロードして印刷し、必要事項を記入します。開示請求手数料(1件につき300円)に該当する収入印紙を請求書に貼付し、本人確認書類(運転免許証など)のコピーと「住民票の写し」の原本を同封して厚生労働省に郵送します。
 
(2)「開示(不開示)決定通知書」と「保有個人情報の開示の実施方法等申出書」が送られてきますので、申出書に必要事項を記入し、郵送料として指定された金額の郵便切手を添えて厚生労働省に郵送します。
 
(3)認定調書のコピーが送られてきます。
 
なお、「保有個人情報開示請求書」は、年金事務所の窓口でもらったり、日本年金機構のホームページからダウンロードすることも可能です。ただし、開示請求手数料の納付方法などが異なりますので、この場合は年金事務所でお尋ねください。
 

「ホンネ」が読み取れる

認定調書の記載内容は、どちらかと言えば少な目ですが、「就業中」とか「処方薬の内容」とか、認定医が最も注目した点が具体的に示されています。
 
日本年金機構の「ホンネ」が読み取れるわけです。したがって、審査請求や再度の裁定請求では、この指摘された点をしっかり意識して対処する必要があります。
 
例えば、就労中だから障害は軽度と判定された場合でも、実際は、職場での手厚い支援や配慮を受けて無理をしない範囲で働いていなかったでしょうか。そのことが診断書や「病歴・就労状況等申立書」などで十分に説明できていましたか。
 
処方薬の内容でも、例えば、もっと強力な薬があっても、本人の体質面などから使用できないために軽い薬が処方されていたことはありませんか。診断書などにそうした事情が書かれていたでしょうか。
 
このように考えてみると、次に打つべき手が見えてきそうです。
 

審査請求を予定している場合は、早めに手続きを

なお、開示請求書を送ってから実際に認定調書を入手するまでには1ヶ月余りを要します。審査請求を予定している場合は、審査請求の期限(裁定結果を知った日の翌日から3ヶ月以内)を考えて、早めに手続きを取る必要があります。
 
「何度か請求すれば、認められる? 」の「ウソ・ホント」は、ほとんど「ウソ」といえそうです。
 

出典

厚生労働省 個人情報保護
日本年金機構 「法人文書の開示」および「個人情報の開示」について
 
執筆者:和田隆
ファイナンシャル・プランナー(AFP)、特定社会保険労務士、社会福祉士

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